第512話 薬師のヤン先生となんやかんや
食糧運搬計画も完成して皆さんそれぞれの仕事に戻り暇になったので、ニィナとヨウコさんと一緒に薬師のヤン先生の所に行く事にした。
ヤン先生は東南アジア系のエキゾチックな見た目で、ステフ様より少し年齢が上の白衣が似合う綺麗なお姉さんだ。
しかもヤン先生は自分で領内を旅して『豆板醤・梅干し・ピクルス』を作っている3つの集落を発見した逸材でもある。
俺の中でチャンスがあれば池田屋商会にスカウトしたい人物No.1だ!
ヤン先生が使っている製薬部屋の前に到着したのでドアをノックする。
コンコンコン
「はーい、どうぞ~」
ガチャッ
「失礼しまーす。ヤン先生こんにちは♪」
「ん?ナガクラ君じゃないか!」
ガシッ!
いっ、痛い(汗)
おかしい
ヤン先生と感動の、、、とまでは行かなくても久しぶりの再開で喜び合うのを想定していたのに、ヤン先生にガッチリ腕を掴まれてしまった。
「あの、ヤン先生腕が痛いです。」
「それは我慢して欲しい。ニィナさん結婚おめでとう♪メリルさんにもよろしくね」
「はい。ご丁寧にありがとうございます。」
「隣に居る女性は前回は居なかったよね?私は薬師のヤンですよろしく」
「私はナガクラ様の所でお世話になっているヨウコと申します。以後お見知りおきを」
「挨拶も済んだし行こうかナガクラ君!」
「そっ、その前に説明を!俺は、説明を、要求するぅーーーーーーーーーーーー(泣)」
ズルズルズルズルズルズル
現在俺はヤン先生にズルズル引きずられて移動している。
誰かに引きずられて移動するのも馴れたもんで、途中ですれ違ったメイドさんに挨拶する余裕もある♪
ただなぁ、ヤン先生ってスラッとしてて全く鍛えて無さそうなのに、顔色ひとつ変えずに俺を引きずるってのはどうなのよ
こっちの世界の人は筋肉の密度が凄くて、モデル体形の人でもウェイトリフティングの選手並の筋肉があるって事なのか?
「着いたよナガクラ君、ニィナさんとヨウコさんも中に入って適当に座ってて」
ヤン先生に引きずられて連れて来られたのは薬草の保管室だった。
豆板醤や梅干しのように、また何か新しい食材を見付けたのかな?
「ここが前回来た時に旦那様が梅干しを見付けた部屋ですか。何やら怪しげな草と甕ばかりの中でよく見付けましたね」
「まぁ薬草の中にはそのまま使うと毒になる物もあるだろうから、怪しげな感じになるのもしょうがない。
それにあの時はスミレが美味しい匂いを嗅ぎ付けただけだから」
「皆さんお待たせ。それでだよナガクラ君!」
小ぶりな甕を1つ抱えて戻って来たヤン先生が何故かちょっと怒ってるんですけど(汗)
「何でしょうか?」
「前回君に貰ったお土産で大変だったんだよ!
私も君に貰った段階で騒ぎになるだろうなと覚悟はしてたよ、覚悟はしてたけど、そりゃもう予想を越えて大変だったんだから(泣)」
あぁ~
ヤン先生にはカレーとか麻婆ソースとか、ピリ辛のレトルト食品を段ボール箱に詰め込んでお土産として渡したんだ。
「騒ぎの原因になったのなら申し訳ないです。でもアリエス辺境伯爵家に仕えてる皆さんには、あの程度の食べ物でそこまで騒ぎになりますか?」
「あの変な包みに入った食べ物も美味しくて騒ぎにはなったけどそっちじゃなくて、君に貰ったお土産の箱を載せて運んだ荷車の方だから」
「そっち?!レトルト食品じゃなくてコロコロカートの方かよ!」
「名前が何かは知らないけど、金属製なのに凄く軽くてコンパクトに折り畳める便利な荷車だから、どの部署が使うかで取り合いだよ。
今は争奪戦に勝利したメイドさんが使ってるけどね。あっ!もしかして返した方が良いのかな?」
まさか段ボール箱を載せて運ぶ為のコロコロカートで騒ぎになるとはなぁ
「コロコロカートで良ければ追加で差し上げますよ。」
「本当に?!じゃあ5台ほどちょうだい」
「5台でも10台でも好きなだけどうぞ。しかし木製で同じようなの作れませんか?」
「一応試作はしてみたけど、木製の車輪だとスムーズに回らなくて全然進まないから」
あぁ~
車輪をスムーズに回転させるにはベアリングが必要だったか
ベアリングぐらい精密になると、ガゼル親方やジャックおじいちゃんでも流石に手作業では作れないだろうなぁ
だがしかし
コロコロカートに需要がある事は分かったから、池田屋商会で販売して儲けるとしよう。
たんまり儲けられたメリルにも褒めて貰えるし
やる気出て来たぁー!
ふわぁっはっはっはっはっ♪
つづく。
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