第511話 ぬいぐるみセラピー?
「念の為に申しますが、国境防衛に関する人員の数や配置は国家機密ですので、絶対に漏らさぬようにお願い致します。」
「了解です。」
食糧を運搬するにあたり、ケーニッヒさんに国境防衛計画書と地図を見せて貰っている。
隣国と接する国境の距離は約30km。
国境防衛を担う人員の総数は約1000人いて、3個ある駐屯地にそれぞれ配属されている。
配属された人員はグループを作って交代で麓の集落で休暇を取っているから、駐屯地に常駐しているのは300~400人。
国境防衛とは言っても基本的には攻めて来た部隊をいち早く発見して、領主のステフ様に報告した後は近くの町まで撤退して援軍が来るまで籠城するらしい。
俺が運ぶ食糧は1000人が30日過ごせる量。
成人男性1人が1日に必要な食糧を、超ざっくり1.5kg(飲料水は含まない)で計算すると30日で45kg
それが1000人分で45t
10tトラックが5台必要と考えると、荷馬車で運ぶのは大変だろうなとは思うけど、申し訳無いが全く実感が無い。
こっちの世界だと保存食も限られているから、想像していたよりも頻繁に食糧を運ぶ必要があるから、行商人の数が減っている現在はかなり危機的状況のようだ。
とは言え
俺のチート能力を使えば1日で終わる簡単なお仕事です♪
食糧運搬計画も無事に完成したし、ちょいとお花を摘みに行って来ますかね
ガチャッ
「うぉいっ?!ステフ様何してるんです?」
リビングから廊下に出るとドアの横でステフ様が三角座りをして、めっちゃ落ち込んでいる。
何があったか知らんけど、アリエス辺境伯家の当主がこんな所で落ち込まんでもええやん。
「仕事が一段落したから来たんだけど、皆凄く盛り上がってて楽しそうだなぁって(悲)」
あちゃ~
俺だってそういう経験はありますよ。
仲の良い友達数人でファミレスに行って、自分1人だけトイレに行って戻って来たら、残ってたメンバーでめっちゃ会話が盛り上がってて疎外感を感じた事がある。
あれはマジで辛いよな
自然な流れで会話に合流出来れば良いけど、たいていは無理だよな(悲)
強引に割り込んで変な空気になるのも嫌だから、会話が落ち着くまで水を飲んでるしか出来ないし
だから今のステフ様の気持ちはよく分かる!分かるけどさぁ、こういう時だけ空気を読んで落ち込まんでもよろしいやん
だがしかし
大切な友が落ち込んでいるというのなら、俺がなんとかしてみせーる!
ブルッ
おっと、トイレに行く所だったのを忘れていた。
大切な友よりトイレ!
待ってて下さいステフ様、すっきりした後でなんとかしますから。
「俺はちょいとお花を摘みに行って来ますから、ステフ様は『イヌーピー君』と待ってて下さい。」
「これがイヌーピー君?」
大阪にあるテーマパークの大人気マスコットキャラ『イヌーピー君』のぬいぐるみを渡すと、ステフ様は不思議そうに見ている。
「可愛いですよねイヌーピー君♪イヌーピー君はいつも皆の心の中に居ますから、色々と相談するのも良いと思います。じゃっ!」
ふぅー
すっきりしたぁ~♪
落ち込んだステフ様には、唐揚げをツマミにレモンサワーでも飲ませれば回復するだろう。
「えへへ~♪」
むむっ!
落ち込んでいたはずのステフ様が、イヌーピー君に向かって笑顔で何かを話しかけている。
確かに俺がイヌーピー君に相談するのも良いって言ったけども、廊下でそれをされるのはちょっと、、、
「ステフ様お待たせしました。」
「ナガクラ君お帰り~。イヌーピー君がね、これからもよろしくって言うんだけど、一緒にキャラバンシティに帰っちゃうよね?」
うーむ
ステフ様がイヌーピー君を抱きしめながら寂しそうなのは、、、まぁ落ち込んでるよりは全然良い
アニマルセラピーならぬ、『ぬいぐるみセラピー』の効果でもあったのか?
そういえば我が家のみんなにイヌーピー君を渡した時も、みんな口を揃えて『イヌーピー君が私と一緒に居たいんだって♪』と言っていた。
イヌーピー君はスキルの「店」で買ったぬいぐるみで創造神様の創った物になる
だからイヌーピー君が持ち主を写す鏡的な
自分自身と対話が出来る分身的な
そういうアイテムである可能性も充分にある、、、かも?
「えっと、ステフ様のイヌーピー君が望んでいるなら大切にしてあげて下さい。」
「やったぁー♪」
よしっ!
イヌーピー君の真相は謎だけど、ステフ様の無邪気な笑顔が見れたから
問題無し♪
つづく。
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