第510話 あぁ~

「「「「「美味しぃ~♪」」」」」



しば漬けを使った料理の試食も終わり、現在は食後のデザートとコーヒーで、まったりと休憩中。


交代でデザートを食べに来たメイドさん達が、テンションマックスになって仕事に戻って行くのはご愛嬌♪



そんな本日のデザートはタルトとパイを使った『レアチーズケーキ』


我が家はとにかく何でも大量に作るから、タルト生地もパイ生地も端の切り落とし部分とか、割れてしまった物が大量に出る。


そういった歪な形のタルトとパイを容器の底に敷き詰めて、『クリームチーズ・ヨーグルト・砂糖・レモン果汁・ゼラチン』を混ぜた物を流し入れ、冷やし固めて作ったレアチーズケーキだ。


タルトとパイの2種類の違った食感を楽しめるのがとても良い♪


だがしかし


何か忘れているような気が、、、



「あっ!台風の被害を確認に来たのにデザートを食べてまったりしてる場合とちゃうやん!」


「そうでしたな。デザートとコーヒーの相性が良くてすっかり忘れていましたよ、あっはっはっ」



コーヒーカップを片手に優雅に笑ってる場合とちゃいまっせケーニッヒさん!



「焦る必要はありやせんぜナガクラ様。こっちに影響が出るのはまだ先ですし、必要なのは食糧を運ぶ人手なんですから。

あっしらがやらなきゃなんねぇのは、人を集めるのと食糧運搬の計画を立てる事です。

それに焦ろうが悲観しようが現状は何も変わらないんですから、デザートを楽しく食べるくらいは構わねぇでしょう。」



ぐはぁっ!


これでもかってくらいに正論のオンパレード!


だがしかし


世の中セルジオのとっつぁんみたいに割り切った考え方が出来る人ばかりでは無い。


元世界でも悩んでる人に『考え方を変えれば良いんだよ』みたいな事をドヤ顔で言ってくる人が居るけど


お前に言われたくらいで考え方が変わるなら最初から悩まんわ!


結局こういうのって誰に言われるかで受け止め方が全然違うんだよな。


少なくとも会社の上司や先輩が、部下や後輩にドヤ顔で言っても、「はぁ?」ってなって相手にストレスを与える確率が高いから止めておいた方が良いだろう。


俺の場合はメリルかニィナに『考え方を変えれば良い』って言われたら、180度真逆の考えであっても喜んで変えるけどな!


さてと


先ずはケーニッヒさんに現状を聞こう。



「ケーニッヒさん、先ずは現状を教えて下さい。」


「かしこまりました。

食糧の備蓄は充分ですから、やはり運ぶ人手が問題です。

運の悪い事に行商人の大半が台風が来る前にアリエス辺境伯領を出てしまっていて、領内から人を集めるにしても御者を出来る者が何人居るかは不明です。」


「ナガクラ様から貰った自転車を改造して荷馬車代わりにする案もあるんですがね、運べる量がちぃーっとばかし頼りないのがなぁ」



セルジオのとっつぁんの言う通り、いかにトゥクトゥク自転車のスピードが速いと言っても、数台あった所で国境を守っている人達の食糧を運ぶには全く足りない。



「食糧不足になりそうなのは国境を守っている人達だけですか?」


「仰る通りです。他はどうとでもなりますが、国境の殆どが山の中にあり、安全上の観点から近くの集落までは国境から徒歩2日ほどかかります。

今までは行商人達にローテーションを組ませて、交代で定期的に食糧を運んで貰っていたのですが、今回は不運が重なりました。」



なるほど


俺は島国の日本で生まれ育ったからイマイチ理解して無かったけど、他国から侵略されないように陸地の国境を守るってマジで大変過ぎる。



「あっしらも無い知恵絞って考えた結果、人海戦術で食糧を担いで国境まで運ぶってのが、現在の最有力案でさぁ。

でだ、ナガクラ様なら既に良い案が浮かんでるんじゃねぇかとあっしは見てるんですが、どうなんです?」


「案って言える程じゃないけど、結局俺が1人で全部運ぶのが1番確実で早いんだよなぁ」


「「「「「あぁ~」」」」」



アハハ


皆さんの呆れたような表情がほんの少しだけ辛いです(泣)


ちゃんと説明した事は無いけれど隠してる訳でもないから、皆さん俺の規格外の能力はある程度知ってるからな


優秀なケーニッヒさんでさえ、最初から俺に対価を用意して頼めば楽だったのに、って少し疲れた表情をしているんだもの


心中お察しはするが、仕方の無い事でもある。


俺はステフ様と友達だし、セルジオのとっつぁんとも師弟関係のようになってるけど、アリエス辺境伯領の領民ですら無い平民の部外者だから


辺境伯家が頼る人物リストには絶対に載らない相手だろう。


さてさて


これでケーニッヒさんに俺のチート能力を使った食糧運搬計画を立てて貰えば、サクッとまるっと解決だぜ♪






つづく。

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