第500話 tough girl
「クゥン、クゥン」
「ん?、、リリーが謝る事じゃ無いから気にしなくていいよ。さっきのアルテミスさんとペトルーシュカ様の間に割って入れるのは、お藤お母さんくらいだろうから。
それよりも、シェラさんのあの姿はどうなのよ?」
「わふぅ?」
ここで首をかしげられても困るんだが。
ペトルーシュカ様とアルテミスさんと一緒に我が家の玄関に入ると、元の大きさに戻ったフェンリルのリリーがさっそく謝罪して来たけど、下手に助けに来られても被害が拡大するだけだから気にしないで欲しい。
それよりも気にしなければならないのは、玄関を上がった所に寝かされているシェラさんだ。
枕代わりなのか頭の下にスリッパを入れて、目を閉じて微動だにしていない。
ここはシェラさんの非常食として用意しておいた、ドライフルーツとナッツをピーナッツバターで固めた、高カロリーエナジーバー(1本50グラム、400kcal)
これをシェラさんの口に持って行ってと
、、、スン、、、スンスン、、パクッ
あっ、食べた♪
モグ、、モグモグ、、、モグ、、、
「はっ?!口の中が美味しくなってる!」
「シェラさんおはようございます。もう1本どうぞ」
「シン殿ありがとうございます!モグモグモグモグ、、旨ぁ~い♪何ですかこの、、、もちょもちょ食感の元気が出る食べ物は」
もちょもちょ食感て、独特な表現をするなぁ(笑)
ピーナッツバターで固めてあるから、キャラメルとかヌガーみたいにヌチッとしてはいるけど、もちょもちょしてるかは謎だな。
「気に入って貰えたなら良かったです。これで夕食まで持ちますか?」
「贅沢を言えばお腹に溜まるように大量に食べたいところですけど、これ1本で凄く元気になるので繋ぎとしては充分です。」
シェラさんが大食いになった原因の英雄症候群は、単純に膨大なエネルギーを消費するって事なのかな?
エナジーバーでどうにかなるなら安いもんだよ。
「ちょっとシンさん、シェラだけ愛称で呼ばないで私もペトラって呼びなさ、、、いえ、どうしたらペトラって呼んでくれるの?」
「ペトラ様と呼べばいいんですね。さっそくシェラさんとペトラ様が泊まる部屋に案内しますね。個室にしますか?それとも2人部屋ですか?」
「ちょちょちょ、ちょっと待ちなさいよ!どうしてここであっさりペトラって呼ぶのよ?」
「普通にお願いされたら、よほどの事じゃない限り断る理由なんてありませんよね?」
「えぇ?!それだけの事で、、、」
「ペトルーシュカ様、それだけの事ですがそれがいかに大事か理解出来ましたか?
我々貴族の常識は市井の方々にとって非常識以外の何物でも無いんです。」
「・・・」
またまたアルテミスさんの正論が炸裂して、ペトラ様が落ち込んでしまった。
ペトラ様も悪い子じゃないんだけど、なんやかんやで公爵令嬢だから、両親以外からおしっこ漏らしそうになるくらいの本気で怒られた事なんて無いんだろう。
だからペトラ様が色々と勘違いしたとしても、致し方無い部分は多分にあると思う。
俺の勝手な貴族のイメージからしたら、ペトラ様は充分まともに育っていると思うし、思春期の頃なんて皆何かしら拗らせて人生の黒歴史になるなんてのは普通だよ。
20歳過ぎてから拗らせると全く笑え無いし、取り返しのつかない事態になる恐れがあるから、ペトラ様も反省して今後に活かしてくれれば問題無い。
「さあさあシン殿、夕食会場に案内して下さい!」
エナジーバーを食べて復活したシェラさんは相変わらず全くブレ無いねぇ
「シェラさん、夕食にはまだかなり早いです。もうすぐおやつの時間なんで、先にシェラさんとペトラ様が使う部屋に案内しますよ。そしたらおやつのクッキーも焼き上がってるでしょうから厨房に行きましょう。」
「やったぁー♪おやつ、おやつ、おっやっつ~♪」
「ペトラ様もこれから少しずつ覚えて行けば良いですから、一緒におやつ食べましょうね」
「うん」
あらら
タフガールのペトラ様もさすがに今回は本気で落ち込んでいるみたいだ。
こういう反応は年相応で可愛いんだけど、ペトラ様には全く似合って無い。
我が家で落ち込むなどあってはならん
チート能力を使ってでも、俺が笑顔にしてみせーる!
つづく。
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