第496話 マフラータオルと焼き肉のタレ作戦
スコーピオン公爵家の馬車がキャラバンシティの街中を走り回って住民に迷惑をかけているという事なので、なんとかするべくアルテミスさんと一緒に外に出て来た。
貴族の対応は同じ貴族のアルテミスさんに任せる、他人任せ戦法だ!
「アルテミスさんに質問なんですけど、貴族の馬車って平民の俺が止めても大丈夫なんですかね?」
「えーーーーーっと、そういう経験が無いので、、、申し訳ありません。」
「まぁ普通はそんな事しませんからね(笑)スコーピオン公爵家の馬車って事なら、乗ってるのはペトルーシュカ様でしょうから問題は無いでしょう。
ちなみにペトルーシュカ様と面識はありますか?」
「ペトルーシュカ様の成人の儀の時と、王宮晩餐会で挨拶をしただけですね。」
「そうですか、おそらくペトルーシュカ様は俺の妾になる為に来たと思うのですが、未だに納得出来ていないんですよ。
貴族の娘さんが平民の妾になるって、俺の感覚だと駄目というか、有り得ないというか」
「貴族も3男や3女以降だと、本人が望めば平民と結婚する事は珍しくありません。最初から妾を望む女性は珍しいですけど、相手が池田屋商会の会長なら『浮気相手』でも良いという方は多いですよ」
「浮気相手って、たまに会うだけの割り切った関係の事ですよね?そんなのを希望する貴族の娘さんが多いんですか?」
「3割くらいの女性は無条件で『浮気相手』を望むでしょう。兄や姉より結婚相手の格を落とさなければいけませんから、3女以降だと下手に貴族と結婚するよりも、裕福な商人の浮気相手になる方が生活が安定しますので」
へぇ~
知れば知るほど貴族って面倒な制度がいっぱいなんだなぁ
おっと!
アルテミスさんと暇潰しの雑談をしていたら、街を1周して来たのかスコーピオン公爵家の馬車が戻って来た。
馬車の御者をしている人に見覚えが無いから、俺の顔を知ってるかどうかは微妙だ。
こんな時にはスキルの「店」に何か、、、
これだ!
「アルテミスさん、コレを持って胸の前で広げて下さい。」
「え?、、あっ、はい。」
俺がスキルの「店」で購入してアルテミスさんに渡したのは、蠍座とサソリの絵が描かれた『マフラータオル』だ。
たぶん星座グッズとして売られている物だと思うけど、それをアルテミスさんと一緒に広げて持っていれば嫌でも目に入るだろう。
不安要素としては、スコーピオン公爵家の熱心なファンと勘違いされる可能性がある事か、、、
「どっ、どうも~、こんにちは(汗)」
パカラッ パカラッ パカラッ パカラッ
「えっと、行ってしまいましたね。私の力及ばず申し訳ありません。」
「いえいえ、そもそもの作戦に問題があっただけですから」
俺の考えた
『マフラータオルで目立って馬車に止まって貰おう大作戦!』は見事に不発に終わってしまった。
蠍座とサソリの絵が描かれたマフラータオルは予想通り目立ちはしたけれど、馬に乗った護衛に睨まれただけで見事に素通りされて途方に暮れている。
馬に乗った護衛も前回来た人達とは違っていたから、俺の顔は知らないんだろう。
初対面の貴族と会う時にはお馴染みになっている『海上自衛隊第3種夏制服』を着ておけば、少しは違った対応をしてくれたのかなぁ?
「シンさん、これからどうしましょうか?門扉にピスケス伯爵家の紋を掲げておけば、止まって頂ける可能性は高くなるかと」
「さすがにそれは目立ち過ぎるんで最終手段にしておきましょう。
アルテミスさん、ちょっと鉄板持って魔法で熱しておいて貰えます?」
「構いませんけど、鉄板を熱したところで馬車を止められるとは思えません」
「まぁまぁ、駄目ならその時は別の方法を考えれば良いだけですよ。熱した鉄板に焼き肉のタレをサーーッと」
ジュゥーーーーーーー!
すぅーはぁー、すぅーはぁー
焼き肉のタレが焦げる匂いで食欲がそそられるぅー♪
この焼き肉のタレの匂いを馬車が走って行った方向に風魔法で送ってと、これで後は待つだけだ。
ペトルーシュカ様の護衛にシェラさんが居れば、絶対にこの匂いに気付くはず。
『シェヘラザード・バレンタイン』
通称シェラさんは大食いだから、今の時間は凄くお腹を減らしていると思うんだよなぁ
っていうか、さっき通り過ぎたスコーピオン公爵家の馬車がUターンして戻って来るのだが、、、
ぐぅーーーーーーーーー!
えっ?
この豪快な音は腹の音か?
隣のアルテミスさんを見ると
「わっ、私じゃありませんから!」
アルテミスさんが否定したという事は、どうやら俺の作戦は成功したらしい♪
つづく。
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