第492話 お母さん頑張る! その2

「シンさん、よろしくお願いします!」


「アルテミスさんに喜んで貰えるように頑張りましょう。」



ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!


おぅふ(汗)


アストレア様がアルテミスさんに作る料理は『おじや』に決定したので、今は具として入れる長ネギをアストレア様は切っているんだけど、、、


ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!


どう考えても長ネギを切っているようには思えない音が厨房に響いている。


アストレア様らしいと言えばそうなんだけど、振りかぶった包丁を躊躇無く長ネギに振り下ろして切って行くんだもんなぁ


ただ、人生で初めて料理をするにしては、包丁の扱いは上手だと思う。


ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!


すこーーーーーしだけ包丁の勢いが強いけど、料理に挑戦して自分の手首を切っちゃったミリーさんよりは安心して見ていられるよ。



「ふぅー、料理って案外疲れるのね(汗)」



あれだけ勢いよく包丁を使っていれば、そりゃあ疲れもするだろう。



「具材はネギだけでも充分ですけど、キノコくらいは入れますか?」


「シンさんのお母さんは何を入れてたの?」


「基本的には残り物を入れて作ってたんで、豆腐が入ってたり、大根、ちくわ、サツマイモ等々。日によってバラバラでしたね。」


「へぇー、そんなに自由で大丈夫なの?」


「お店じゃないんで、美味しければ問題無いです♪」


「じゃあサツマイモを入れてみようかしら」



おおっ?!


初めて料理をするのに『おじや』の具にサツマイモを選ぶとは、アストレア様はやりおるぞ!


アストレア様は王宮晩餐会にも定期的に出席してるらしいから、美味しい料理を沢山食べて自然と料理のセンスも磨かれたのかもしれない。


具材も決まったから後は味噌汁の入った鍋に、ご飯、ネギ、サツマイモ入れて煮込んでから、溶き卵を入れて余熱でふんわり仕上げるだけだ。


カレースープにチーズを入れてリゾット風おじやにする案もあったけど、朝食用に作られた味噌汁が寸胴鍋に入っていたから、ちょっと拝借して楽をしてみた(笑)


それに


初めての手料理はシンプル・イズ・ベストに限る!


昔1度だけ女性にオムライスを作って貰って食べた事がある。その時のオムライスが白米じゃなくて雑穀米だったんだけど


オムライスは雑穀米じゃなくて白米にケチャップなんだよぉ(悲)


テンションが急降下するわ、この先ずっと雑穀米を食べなきゃいけないのか?とか色々と不安になって、オムライスの味なんて何もしなかったもの


まぁ俺の遠い昔の思い出なんてどうでもいいや



「おじやは問題無いと思うんですけど、アルテミスさんに『お母さん』と呼んで貰うには手料理だけだと難しいんじゃないでしょうか」


「やっぱりそう思う?でも他に出来る事って何かあるかしら」


「愛称で呼んでみるとか?」


「テミスちゃん、とか?、、、あの子のイメージじゃない気がするわね」



うーん


確かにアルテミスさんって『ちゃん』付けで呼ぶイメージじゃないよなぁ。



『ぐぅ~~』


むむっ?!


何処からか腹の音が聞こえるのだが、、、


わぁお!


いつの間にかスミレが厨房にやって来ていて、おじやが入っている鍋の方を見て鼻をクンクンさせいる。


おじやの匂いを嗅ぎ付けたか、この食いしん坊め♪



「スミレおいで~」


「うん♪」


「よっこいせっと、おじやを作ってんねんけど、スミレどう?」


パカッと


『ぐうぅ~~~~』



腹の音は正直だねぇ(笑)


スミレを抱っこしてから鍋の蓋を取って、おじやの匂いをスミレに嗅がせてみると、スミレのお腹の音が豪快に鳴っている。



「ふふっ、スミレちゃんに合格を貰えたみたいだし、おじやは大丈夫ね。問題はあの子が『お母さん』と呼んでくれるかどうかなんだけど」


ガチャッ


「スミレここに居たんだ。ダンナと一緒に何してるの?、、、あっ!また何か美味しいお菓子を2人だけで食べる気なんだろ!」



スミレを探しに来たのか厨房にケイトがやって来たんだけど



「ちょっと待てーい!いつ俺がスミレと2人だけでお菓子を食べたんだよ!」


「えっと、それは、、、内緒で食べてたらアタシには分かんないじゃん」



それはようするに、勘で言ってるだけのやつやん!



「あらあら、新しい娘達は食いしん坊さんばかりなのね♪」


「あ゛っ?!、、、こここここんにちは、アストレア様(汗)」


「はい、こんにちは。でも今日からはお母さんって呼んで欲しいわ」


「えっと、アタシのお母さんはお藤お母さんなんだけど、、、ちょっとダンナ、これはどうしたら良いの?」


「アルテミスさんと結婚したらアストレア様と俺は義理の母子になるから、俺にとってアストレア様はお義母さんって事になる。

ケイトも俺の奥さんな訳だから、アストレア様はケイトにとってもお義母さんになる、、、のか?」



一夫多妻とか一妻多夫の義父母との関係性がどうなるかなんて全然分からん!



「へぇー、そうなんだ。お母さん改めてこんにちは」


「はい、こんにちは。ケイトちゃんって呼んでも良いかしら?」


「うん、お母さんなら良いよぉ♪」



待て待て待て


さっきアストレア様の顔を見て焦ってたのに、馴染むの早過ぎやろ!



「スミレも今日からアストレア様の事は、お母さんって呼ばないとな」


「おかあさん?んー、ねぇおかあさん」


「あらあらあらあらあらあら♪何かしらスミレちゃん」


「おじや食べちゃ駄目?」


「勿論良いわよぉ、沢山食べてちょうだい」


「ねぇお母さん、アタシも食べたい!」


「うふふ、急に娘が増えると大変ねぇ♪」



大変と言いつつ、お義母さんはめちゃめちゃ嬉しそうやな。


『お義母さん』とか『お母さん』とか、呼び方をバラバラにしたままだとややこしくなるから


今日からアストレア様はみんなの『おかあさん』に決定!






つづく。

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