第491話 お母さん頑張る!

「あの、お義母さん」


「はーい、何かしら♪」



ほっ


アストレア様の機嫌も良くなったし、世界の崩壊も1億年後くらいに延期されただろう。



「お義母さんは帰らないんですか?」


「アルテミスの結婚式用のドレスのデザインを一緒に決めたいし、下着も選んであげたいの♪下着はシンさんが選ぶ方が良いかしら?」


「いえ、私だとアルテミスさんが何を着ても『最高に似合う!』以外の言葉が出て来なさそうなので、お義母さんに選んで貰った方が助かります。」


「うふふ、やっぱり良いわね『お義母さん』って呼ばれるの♪こうなるとアルテミスにも『お母さん』って呼んで欲しいんだけど、、、」


「その反応だと『お母さん』と呼んでくれなさそうですか?」


「あの子は変に頑固な所があるから、後は単純に照れて呼んでくれない可能性も高いわね」


「慣れない呼び方に照れるのは普通だと思いますけど、急に呼び方を変えるのは難しいんじゃないですか?」


「かもしれないわねぇ。私はアルテミスに母親らしい事をあまりしてあげられなかったから、今更だけど母親として何かしてあげたいの。そして『お母さん』って呼んで欲しいのよ」


「焦らなくても時間が解決してくれると思いますけど」


「いいえ、時間に任せるなんて絶対駄目!私も早くお藤さんみたいに子供に甘えて貰いたいんだもん!」



お義母さんの為なら何とかしてあけたいけど、本当の母娘の関係に俺が割り込む余地は無いよ(悲)



「えっと、、、お義母さんファイト!」


「うん、頑張る!という事で、お母さんは考えました。その結果、手料理を作るのが良いと思うんだけど、どうかしら?」


「子供の頃に作ってあげた懐かしの手料理を作るんですね?良いと思います!」


「・・・」



あれ?


何故かお義母さんがプイッと横を向いているんだけど、これってもしかして、、、



「あのう、お義母さん」


「なっ、何かしら?」


「お義母さんの得意料理を教えて欲しいなぁ」


「、、、干し肉の炙りは得意よ」


「火で炙る事で香ばしくなって美味しいですよね♪他には?」


「、、、こっ、紅茶のレモン添え」



はい!


理解でーす。


アルテミスさんから聞いたけど、アストレア様はライブラ公爵家の長女らしいから、公爵令嬢なら1度も料理をした事が無くても不思議じゃない。


だからあえて詳しく聞くような事はしないけれど、それでよく手料理を作ろうと思ったなと関心するよ。



「オムレツ、丼物、煮込み料理、この辺りが比較的簡単な料理で、お菓子ならホットケーキ、クレープ、プリン等がお勧めです。

他に何か作りたい料理があるなら、お藤さんかヨウコさんに教えて貰えますから心配無用です。」


「う゛っ、うぅ~、ひっぐ(泣)」


「えっ?!ちょっ、アストレア様大丈夫ですか?」


「ズズーッ、、大丈夫よ、シンさんが凄く優しくて嬉しいだけだから♪」



この程度で優しいと言われるって事は、貴族ってどんだけギスギスしとんねん!



「とにかく、先ずは作る料理を決めましょう。」


「うーん、、、ちなみにシンさんのお母さんが作ってくれた好きな料理は何かしら?」


「色々ありますけど、熱が出て寝込んだ時に作ってくれた『おじや』が凄く美味しかった記憶がありますね。

お弁当に入ってるエビフライも好きでしたし、焼き飯も好きでしたね。」


「えっと、シンさんのお母さんは料理人だったの?」


「いえ、普通の主婦ですよ。料理の腕前は凄く上手という訳では無いけれど、基本は押さえてる感じで、作ってくれる料理に不満を感じた事は無いです。」


「シンさんが料理上手なのも、求めるクオリティがハイレベルなのも納得しました。」



あまり納得しているようには見えないんだけど、、、


余計な事を言うのは止めておこう。



「私の思い出の料理は参考になりましたか?」


「なんとなくだけど『おじや』が良いような気がするわ」


「『おじや』なら出汁でご飯を煮て卵でとじれば出来るんで、お手軽料理ではあります。お好みで他の具材を加える事も出来ますけど、メイン料理では無いですよ?」


「人というのは無理や無茶を時にはしなくてはいけないのかもしれないわ、でも今の私は身の丈に合った事をするべきだと思うの!」


「そっ、そうですね。さっそく厨房に行って入れる具材を選びましょう。」


「はーい♪」






つづく。

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