第482話 料理対決・前哨戦

アストレア様とステフ様と一緒に厨房に行くと、背が高く恰幅の良い女性が居た。



「貴殿が池田屋商会会長のナガクラ殿だね?私はピスケス伯爵家で料理長をしているグロリアだ。よろしくね!」


「あっ、はい、私がシン・ナガクラです。よろしくお願いします。」


「私は平民だし丁寧な話し方はしないでいいよ。それにしてもナガクラ殿は案外普通な感じだね」


「世間でどういう風に言われているのかは知らないですけど、普通の商人ですからね」


「ふーん、まっ、噂ってのはそんなもんだろうね」



「料理長ってグロリア姉さんだったんだ。何年振りかなぁ?昔はルナと一緒に遊んで貰ってたから懐かしいよ♪」


「何が遊んで貰っただよステフ!厨房につまみ食いに来た悪ガキを私が追いかけ回してただけじゃないか、今はもうつまみ食いはしてないだろうね?」


「すっ、するわけないじゃん(汗)私ももう大人なんだから」


「本当かねぇ?」



ステフ様はつまみ食いこそしないものの、新作の料理や菓子を作ると、試食をさせろとブーブー文句は言ってるけどな。


それにしてもグロリアさんは、タイとかマレーシアの夜市で働いてそうな雰囲気のある豪快な女性だな。



「さてと、せっかく来たんだ、ナガクラ殿と親交を深める為に、『クムクムのゼリー寄せ』と『プメプマの姿焼き』を作ったから是非食べてくれ♪」


「げっ?!」「うぇっ」



グロリアさんが出した料理を見たステフ様とアルテミスさんが、同時に顔をしかめているけれど、いったいどんな料理なのかとても気になる。



先ずは『クムクムのゼリー寄せ』から


紫色のスープに何かのぶつ切りが入っていて、見た目は物凄く悪い!


とりあえずスープから、ズズッと、、、苦っ!


薬膳のような味で健康にはなりそうだけど美味しくはない。


続きまして、クムクムと思われるぶつ切りの身をパクッと、、、うーむ


ヌメヌメしてドゥルンとした食感は最悪だな。


でも味はまぁまぁか?


ちゃんと下処理をすれば美味しくなりそうな気がしないでもない。これは是非お藤お母さんにも食べて貰って要検証だ!



続きまして『プメプマの姿焼き』


見た目は、、、蜂の子?


2センチくらいの長さの白っぽい楕円形の何かが香ばしく焼かれているけれど、俺はこれが何かは絶対に詳しく聞かない!


そう、絶対にだ!


元世界でもイナゴの佃煮は駄目だったけど、蜂の子は普通に食べれていたんだ。


だから俺は、蜂の子みたいなプメプマの正体は絶対に聞かない!



という事で、プメプマをパクっと、、、無味!


焼いてるから芳ばしくはあるけど無味!良質なタンパク質を摂取する目的としては有り!



「あのシンさん、無理はしなくて大丈夫ですからね。気分が悪くなったら私が責任を持って看病しますから」


「大丈夫ですよアルテミスさん。どちらの料理も、もっと美味しくなりそうだなと考えていただけですから」


「さっきからナガクラ君はプメプマをパクパク食べてるけど大丈夫なの?」


「じっくり観察するとさすがに駄目ですけど、あまり見ないでいれば食べられますね」



相変わらずアルテミスさんとステフ様がプメプマを見て嫌そうな顔をしているのは分かるけど、アストレア様も嫌そうなんだよなぁ


無表情だから分かり難いけど俺にはわかる!


ただアストレア様くらいは喜んで食べて欲しかったと思わなくもない。



「ほぉほぉ、クムクムとプメプマを表情を変えずに食べるとは、ナガクラ殿はなかなかやるじゃないか♪」


「あのグロリアさん、調理する前のクムクムはありますか?」


「ん?予備で多めにもって来てはいるけど」


「是非見せて下さい。」


「独自の料理を作ってレシピ登録でもするのかい?まぁ良いけどね、今持って来るから少し待ってな」



俺の予想が当たっているならクムクムは日本人が大好きなアレだと思うんだよな。





つづく。

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