第476話 『おでん屋』それはみんなの心のオアシス

「がぅがぅ」


「ん?急かさんでも分かってるって。リリーは厚揚げに温泉卵を乗せてから、たっぷりの出汁と一味唐辛子をふた振りだろ?」


「わんっ♪くぅんくんくん」


「はいはい、カラシをたっぷり乗せた大根も忘れて無いよ。はい、どうぞ」


「わふぅ~♪」



ふふっ


相変わらずフェンリルのリリーは、おでんの時だけ食べ方にこだわるじゃないか



「皆さん最初はピスケ酒でよろしいですか?」


「「「「「「「「はーい」」」」」」」」


「じゃあ出し割り酒にする人は?」


「「「「「はーい」」」」」


「5人っと、、、はい、どうぞ。では皆さん本日もお疲れ様でした。かんぱい」


「「「「「「「「かんぱーい♪」」」」」」」」



今夜は我が家の中庭で俺が趣味でやってるおでんの屋台を出している。


お客は


アストレア様


アルテミスさん


オリビエさん


女将さん


ヨウコさん


ミリーさん


ミーナ


スージィー


リリー


以上8人と1匹で今日の看板娘はヨウコさん。


濃い紫色の着物の上から白い割烹着を着て皆さんにおでんを取り分けているヨウコさんは、看板娘じゃなくておでん屋の女将にしか見えんけどな(笑)


そして


皆さんが飲んでいる『ピスケ酒』は、ピスケス領で作られた米から造った澄んだ酒、いわゆる日本酒の事だ。


念の為に言っておくけど『ピスケ酒』という名前は、ウケ狙いでも無ければふざけている訳でも無く、ピスケス領の議会で30日ほど議論されて名付けられたガチのネーミングだ。


以前から造っていた米の酒との差別化をする必要があったのと、ピスケス領で造られた酒だとひと目で分かる事を重視した結果らしい。



ちなみにここに居ない我が家のみんなは、中庭でアンさんとか元娼婦の人達が出してる、『おでん・焼き鳥・もつ煮』の屋台を楽しんでいるはずだ。


ガゼル親方とジャックおじいちゃんもそっちに行ってるけど、女性ばかりで少し居心地が悪そうだった。


まぁ池田屋商会の従業員は酒好きが多いから、一緒にピスケ酒を飲めば直ぐに仲良くなるだろう。



「あの、シンさんお待たせしました。つくねが焼き上がりました。」


「おっ!ありがとうねクレアさん」



おでん屋の裏口から大皿に『つくね』を山盛り乗せてやって来たのは、美味しい『つくね』が作れるクレアという名の少女で、俺がサウスビーチでスカウトした従業員だ。


クレアさんはまだ成人してないから、普段はこども園で読み書きと計算の勉強をして、暇な時間に教会の前で出してる屋台の手伝いをして貰っている。


なので今日は特別報酬を出して『つくね』を焼いて貰っていたんだ。



「あらあら♪その子がシンさん自らスカウトしたっていう、美味しい料理を作れるクレアさんね?」


「そうですけど、クレアさんはウチの期待の新人なので成人するまでは、たとえアストレア様でも貴族には関わるような事はさせませんから。」


「え?!あの、シンさん、私なら全然平気です!頑張ります!」


「クレアさんの気持ちは嬉しいけど、下手に貴族に関わると面倒しかないから。今日はもう大丈夫だから、中庭で焼いてる『たい焼き』でも食べて行きなよ。」


「じゃっ、じゃあ失礼します。」


「はーい、お疲れさま~♪」



「ふふふっ、シンさんは家族以外でも小さい子には甘いのねぇ♪」


「甘いと言いますか、従業員を守るのは会長としての責務ですから」



キャラバンシティの領主代行をしているアストレア様とクレアさんが仲良くなっても、クレアさんにメリットはほぼ無いだろうな。


むしろアストレア様に目をかけられている事で、クレアさんを買収してアストレア様の弱味を聞き出そうと、お馬鹿さん達が群がってくる未来が見えるよ。



「アストレア様もシンさんも、クレアさんは成人するまでは勉学に励むという事で良いでしょ?

私は『つくね』がとっても気になります!」



相変わらずオリビエさんはブレ無いねぇ、つくねには何の酒が合うかと色んな酒の酒瓶とつくねを交互に見比べてとても忙しそうだ(笑)


今回つくねの味付けは『塩』と『タレ』の2種類を用意した。


元々味付けは塩のみだったけど、俺は塩よりタレ派だ!という事で料理本を見てつくね用に甘辛いタレを頑張って作ったよ。



「オリビエさん、つくねにはとりあえずピスケ酒で良いと思いますよ。いただきまーす。あーんっ、アチチッ、はふはふ、はふはふ、、旨いっ!」



サウスビーチで食べた時より確実に旨くなってるやん♪


つくねを作る為の道具や材料も良い物を用意したし、備長炭を使って焼いたのも良かったんだろうな


これはいくらでも酒が飲めるやつぅー!


楽しい夜はまだまだこれからだぜ♪






つづく。

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