第463話 しっとりチャーハン

「、、、様、、起きて、、、、主様、、、起きて下さい。」


「んっ、んん~~、あと5分寝かせてくれぇ~」


「主様、起きて下さい!」


「はっ?!ニィナ!、、、えーっと、夜明けにはまだ早いけど」



隣で寝ていたニィナに起こされたので、ベッドから顔だけを動かして木戸が閉じられた窓のある方を見ると、、、


部屋が真っ暗過ぎて窓が見えん!


という事は夜明けはまだまだ先って事になる。


昨夜はサダルスウド侯爵御一家に、ニックが見付けた黒糖を使ったホットケーキをデザートとして出して感想を聞いたんだ。


『黒糖ホットケーキ』なんて初めて作ったけど、バターとの相性も良かったし無限の可能性を感じられたよ


そのせいなのか


皆さんメモを取りながら真剣に味見をして、その後質問攻めにされたせいで寝るのが遅かったんだよな


だからニィナがこんなに早く俺を起こすって事は、トラブル以外思い付か無いんだが(汗)



「主様、どうやら訪問者のようです。」


「訪問者?こんな時間にゲオルグ様って事はないんやろうけど」


「足音からメイドと、、、料理人の誰かかと思います。」



俺も耳を澄ますけど何も聞こえん。そもそも部屋の外の廊下には絨毯が敷いてあって、足音なんてほとんどしないんですけど



『コンコンコン』



うおっ?!


マジで誰か来てドアをノックしてる



「えっと、出て大丈夫なん?」


「はい、問題無いかと」



ちょい怖いけど、ここは愛しの奥さんの言葉を信用する以外の選択肢など無い!



『ガチャッ』



「「ナガクラ様、ニィナ様、このような時間に申し訳ありません。」」



ドアを開けてそこに居たのは深々と頭を下げる、筆頭メイドのダリアさんと、料理長のディエゴさんだった。



「2人が一緒に訪ねて来たって事は、、、もしかして朝食に関する事ですか?」


「ナガクラ様は察しが良くて助かります。実は昨夜ナガクラ様がデザートに出された黒い色のホットケーキ、あれを食べて奥様は色々と刺激されたのでしょうね。


我々に『新しい料理のアイデアがあれば遠慮無く言ってね♪』と、それはもう恋する乙女のように無邪気な笑顔でございました。」



ダリアさんとディエゴさんはソレイユ様の笑顔を思い出したのか、とても満足そうな表情をしている、、、と思ったら、今は顔色が悪くなってしまっている。


ようするに2人が俺の所に来た理由は、ソレイユ様の期待がプレッシャーとなって耐えきれなくなり、助けを求めての事だと思う。


まぁ原因を作ったのは俺だから、いくらでも協力はするけどね。



「改めて確認しますけど、俺は朝食のアドバイスをすれば良いんですよね?」


「可能であれば、昼食や夕食にも使える技術の伝授をお願い致します!」



頭を下げられても俺に伝授出来るような技術は無いんだけどなぁ(汗)



「とっ、とにかく厨房で食材を見てから考えます。」


「なんとっ!急なお願いにも関わらず、その場で料理を考えられるとは、それだけで勉強になります!」



ディエゴさんの熱い視線に耐えながら厨房にやって来た。


厨房にあった調味料は


砂糖、塩、胡椒、醤油、味噌、魚醤


醤油と味噌はピスケス領産でサウスビーチでも最近売られ出したらしい。


ここまで調味料が揃えば大抵の料理は大丈夫だろう。


肉、魚、貝、野菜もスーパーでよく見かけるのはだいたい揃ってるようだし、、、


うーむ


作れる料理の幅が広がったお陰で何を作るか迷う。



「ディエゴさん、他に味付けに使える物は無いですか?」


「スープ用にカニ出汁とエビ出汁ならありますが」



ディエゴさんが持って来た鍋に入っているカニ出汁とエビ出汁をペロッと、、、うん、凄い濃厚でめっちゃ旨い!


この2つの出汁で味付けした、『カニチャーハン』と『エビチャーハン』を作って、味噌汁を付ければ朝食には充分だよ♪



「そしたらディエゴさんにはカニチャーハンを作って貰って、俺はエビチャーハンを作りますね」


「えっ?いや、チャーハンなる料理は初めて聞くのですが(汗)」


「簡単なんで大丈夫ですよ、俺が最初にエビチャーハンを作って見本を見せますから」



いざ


レッツクッキング!



先ずはフライパンに少量の油を入れて、よく熱してからエビを軽く炒めて取り出し別にしておく


改めて油をひいてフライパンを熱したら、卵とご飯を投入


炒めながら塩胡椒で軽めに味付けして、味の決め手のエビ出汁を加えて味見をひと口、あーんっ、、、完璧や♪


最後に別にしておいたエビを投入、軽く混ぜてから皿に盛り付けて仕上げに刻みネギを散らせば


エビチャーハンの完成!


エビ出汁で味付けしてしっとり食感に仕上がってるから、朝からでも食べやすいと思う。


残るはデザートだけど、ここはシンプルにマンゴープリンで良いか


マンゴーペーストと牛乳とゼラチンを混ぜて冷やし固めるだけだから、今から作っても朝食には充分に間に合うだろう。


問題があるとすれば、厨房に集まった料理人とメイドさん達全員に、味見が出来る量を俺が作れるかどうかだけど、、、


今こそ授かったチート能力でなんとかして


なっ、なんとかなるよな?






つづく。

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