第461話 ブリの照り焼き定食

「ナガクラ殿、カツオはフライパンで焼いては駄目という事でしょうか?」


「駄目では無いですけど出来るだけ高温短時間で表面だけを焼くには、ワラ焼きか魔法の火が最適ですね。」


「なるほど、『焼く』にも色々とあるのですね。ちなみに先程から奥方様が作っているのは何でしょうか?我々の知らない新作料理とお見受けしますが」


「『照り焼き』という手法を使った料理ですね。様々な食材に使えますし、簡単なので試してみて下さい。」


「照り焼き、忘れずにメモをしなければ!」



俺とニィナは今、サダルスウド侯爵家の厨房を借りて『カツオのたたき』と『ブリの照り焼き』を作っている。


理由としては


ソレイユ様がサウスビーチにも創造神様に降臨して欲しいと泣き付いて来たので、創造神様とちーちゃんさんに喜んで貰えそうな魚料理を、料理人さん達に教えながら作っている。



ヨウコさんが言うには、創造神様達が降臨するには千人の想いが必要と言ってたけど


美味しい料理さえお供えすれば、テンションの上がったちーちゃんさんが勝手に降臨しちゃう可能性は凄く高いと思う。


この世界の料理の発展は創造神様も望んでる事だから、サウスビーチの皆様には俺の知らない海鮮料理を頑張って作って欲しい。



さてさて


料理も完成したので、サダルスウド御一家の夕食に『カツオのたたき』と『ブリの照り焼き』を出して感想を聞かないとな。


カツオは2センチくらいの厚さで横長にカットして、ステーキのような見た目にしてみた。


ナイフとフォークで食べるし、『魚のレアステーキ』として普及させるつもりだから、ステーキに見えた方が良いだろう。


とは言え、『ブリの照り焼き』に合わせて白米と味噌汁と漬け物も出してるから、完全に和食だけどな(笑)



「では皆様、いただきます。」


「「「「「「いただきます♪」」」」」」



皆さん『カツオのたたき』から食べているけど、口に合うだろうか?



「ふむふむ、魚のレアステーキとは考えたなシン殿♪魚の生食は未だに我が家と懇意にしている貴族くらいしか積極的に食べる者が居ないのが現状だ。レアステーキなら抵抗感も少ないだろう。」



ほっ


どうやら『カツオのたたき』は、生食に抵抗がある人にも受け入れ易いみたいだ。



「私は『ブリの照り焼き』の方が

好きです♪甘辛い味付けが米に凄く合います!」



ほぉほぉ


次女のエレーナ様は『ブリの照り焼き』が気に入ったか。長女のマリーナ様と三女のミレイユ様も『ブリの照り焼き』の方が気に入ったっぽい


まぁ俺も子供の頃はカツオってそれほど好きじゃ無かったもんな




おっと!


なんやかんやで『カツオのたたき』もあっという間に皆様完食しちゃったよ。


貴族がそんなにガツガツ食べて良いのかと思うけど、夕食は俺が作ったから今回は貴族のマナーでは無く、俺に合わせてくれたって事なのかな?



「皆様食事も食べ終わったみたいですし、デザートの前にちょっと良いですか?」


「わざわざデザートの前っていうのが気になるのだけど」


「さきほどソレイユ様が仰っていたでしょう?サウスビーチにも創造神様に降臨して欲しいと。その為のアドバイスのようなものですよ♪邸の中に礼拝室があるんですよね?」


「えっ?ええ、小さいけれど女神、、、創造神様の像もあるからお祈りは出来るけど、、、シンさんまさか?!」


「実際に見た方が早いですからさっそく行きましょう♪」




皆でゾロゾロ歩きながら礼拝室に入る。


10畳くらいの部屋に、少し小さいけど立派な創造神様の像もある。


キャラバンシティの教会に設置されている創造神様像と比べると、落ち着いた雰囲気のある像だ。


こういう像って作った職人の好きな女性に似たりするのかな?


そんな事はどうでもよくて、先ずは祭壇を作らなければ!


いつものように適当な台を取り出して白い布をかける。今回のお供えは『カツオのたたき』『ブリの照り焼き』『黒糖焼酎』『かりんとう』にしてみた。


白米と味噌汁と漬け物もあるから、これはもう『ブリの照り焼き定食』だけどな。



そしてせっかく黒糖を見つけたから、『黒糖焼酎』と『かりんとう』はオマケで付けてみた。


創造神様もちーちゃんさんもお酒を飲むイメージはあまり無いけど、旨味成分が充分にあれば、お酒は勿論『納豆』や『くさや』や『シュールストレミング』さえも


とても美味しく食べられるんじゃないかな?



「あー、あー、創造神様、ちーちゃんさん、お供えをお持ちしました。今日は『ブリの照り焼き定食』です。」


「あこがれの定食やん、やったぁー♪」


「ちょっとちーちゃん!毎回私より先に出て来ないでよね!」



わぁお!


凄くナチュラルに光輝く創造神様とちーちゃんさんが降臨しちゃったよ



「あこがれの『定食』がお供えされたんやから、許してーや」


「定食?定食って何よ?!」


「ホンマの意味は、あらかじめ決められた料理のセットの事を言うねんけど、今は米と汁物とメインのおかずがセットになってるのを『定食』って言うのが一般的なんやで♪」


「またドヤ顔をしているけれど、どうせ定食も知識だけで見るのは初めてなんでしょ?」


「しゃーないやん、お供えに定食は無理やねんもん(悲)」


「そこをどうにかするのが神としての腕の見せどころでしょうに、ちーちゃんの世界の事だから良いけど。


今回もお供えありがとうございます。お酒もクセのある料理も、きちんと作られた物であれば美味しく食べられますから、新しい料理も遠慮せずお供えしてくれて構いませんよ♪私はあなたの子孫の事もちゃんと見てますから心配しないでね。それでは、さようなら~」


「次は『B定食』食べたいからよろしく~、ばいばーい」


「ちーちゃん!B定食って何よ!B定食って、、、」



プツン・・・



おーい、ちーちゃんさーん、B定食の中身はお店によって全然違うんですけどー(汗)


とっ、とりあえず、次は俺が好きだったB定食『チャーハンセット』をお供えしておこう。


餃子、焼売、春巻等々の単品メニューが日替わりでチャーハンとセットになってて、日替わり定食っぽさがあって毎回楽しみだったなぁ♪


さてと


サウスビーチにも創造神様が降臨出来る事は証明されたし


任務完了!






つづく。

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