第459話 ホットライン

「さてと、人払いもしたしこの部屋なら盗聴も出来ないから安心して何でも話してちょうだい。シンさんとニィナさんはまだ新婚さんだけど、夫婦生活の悩みは早めに解決しないと駄目よ」



おーい、ソレイユ様ぁー!


勝手に夫婦生活に悩みがあると決めつけないで欲しい。


今のところそっち方面の悩みは無い!




ソレイユ様に案内されてやって来たのは、ソレイユ様の私室の棚の裏に作られた隠し部屋だった。


4畳ほどの小さな部屋は全面が石で出来ていて、床にも1人がギリギリ通れそうなサイズの扉がある


たぶん賊等に襲撃されて邸に火を付けられても、この部屋に逃げ込んで脱出する機会を待つんだろうな。


貴族なら隠し部屋の1つや2つ作ってるだろうとは思っていたけど、まさか本気の隠し部屋に案内されるとは(汗)



「あのソレイユ様、魔法で盗聴する事は可能という事ですか?」


「かなり高度な魔法で使い手も限られるけれど、どんな手段を使ってでもシンさんから情報を得たいと考えている人は多いでしょうね。この部屋は魔法が使えないようになってるから安心してちょうだい」


「そっ、そうですか」



はぁ


良からぬ事を考えている貴族や反社会的組織が、俺の事を監視したり盗聴したりってのは予想出来る事だから驚きは少ない


驚きが少ないだけで不快ではあるけどな!


まぁキャラバンシティには神獣が3人も居るから盗聴等の心配は無いだろうし、お馬鹿さん達が何かしようとしても俺の知らない所で排除されるんだろうなとは思う


だがしかし!


だからこそ、メリル、カスミ、スミレが心配になるじゃないか!


今もヨウコさん達神獣が居るからこの世界の誰よりも安全だと思うけれど、出来る事があるのにやらないなんて事は有り得ない!


やはりここはメリル、カスミ、スミレに勇者の試練をクリアさせて神獣の加護、全12個をコンプリートさせるべきなのでは?


うーむ


我が家に帰ったらヨウコさんに相談だな!



「それで、私はシンさんとニィナさんに夜の雰囲気の作り方を教えれば良いのかしら?」


「ソレイユ様、ストーップ!そういうのが必要な時は1人でこっそり聞きに来ますから!」


「あらそう?お互い好みもあるだろうから、相談しながらの方が良いと思うんだけど」


「本当に大丈夫ですから!」



ニィナも顔を真っ赤にして横を向きながらも俺に向かって、『雰囲気作りの方法を聞いて下さい』って空気を出すんじゃありません!



「うふふ、雑談はこの辺りにして本題を聞かせて貰えるかしら?」


「あっ、はい、今回の訪問はミリーさんに頼んで、通信の魔道具を使って事前に知らせた訳ですけど、毎回ミリーさんに頼むというのも効率が悪いですよね。


私は中立派のピスケス伯爵家の御用商会の会長です。派閥の違う保守派のサダルスウド侯爵家と私的なやり取りで、通信の魔道具を使うのはよろしくないと思うのですが」



「嫌がらせをしたいだけのお馬鹿さん達は無視すれば良いけど、つけこまれる隙は無い方が良いでしょうね。シンさんがわざわざその事を言うって事は、解決策はあるんでしょ?」


「勿論です♪実は私も通信の道具を持ってまして、ピスケス伯爵、アリエス辺境伯、サダルスウド侯爵、以上の三家と私の間で専用の通信の道具を使ったホットラインを繋ぐというのはどうでしょうか?」


「あらあらまぁまぁ♪やはりシンさんは素晴らしいわ!是非設置してちょうだい。アストレアさんがシンさんを大好きなのも納得ね♪」



ほっ


色々とツッコミたい事はあるけれど、とにかく通信の道具(無線機)の設置に賛成してくれて良かった。


貴族の面倒くさいなんやかんやで反対されたらどうしようかと、少しだけドキドキしてたんだよな(笑)



「動作確認をしたいのでここに通信の道具を出しても宜しいですか?」


「構わないけどここでは出せないわよ」


「ちょっと仰る意味が分かりませんが、とりあえずよいしょっと」


「え゛っ?!」



むむっ?


収納から無線機を取り出したらソレイユ様がすっごい驚いてるけど、今さら黒い箱にしか見えない無線機を見たところで驚くポイントは無いと思うんだけどな



「えっと、ここは魔法が使えないように特別な処置を施した部屋なんだけど、、、」



あぁ~、なるほどね


スキルの収納を使うのも魔法だから、それを普通に使えた事に驚いたのか


まぁ俺の魔法やスキルって創造神様の特別製っぽいから、干渉出来るとしたら最低でも神獣クラスのパワーが必要なんじゃないかな?



「これは創造神様に感謝ですね♪」


「そうね、あとでしっかり感謝のお祈りをしておかなくっちゃ!ちなみに創造神様ってキャラバンシティ以外に興味は無いのかしら?」


「えーっと、自分で作った世界に興味が無いという事は有り得ないと思いますけど」


「じゃあサウスビーチの教会にも創造神様は御降臨されるかしら?」


「私では分かりかねますが、通信の道具の試運転も兼ねて知ってそうな人に聞いてみましょうか?」


「シンさん以外にそんな人が居るの?」



どうやらソレイユ様はヨウコさんが神獣だとは知らないみたいだ。


ゲオルグ様にはヨウコさんが神獣という事は教えてあるから、ソレイユ様や娘さん達に教えるかは任せたんだけど


ソレイユ様には俺から直接教えないと御機嫌が斜めになるという判断で教えて無いのかな?


その予想は凄く当たってそうだよ(汗)


いざ


れっつ通信!






つづく。

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