第457話 お節介をしたい年頃なんです。 その3

「おーい、アニキー!」


「シンさーん、ニィナさーん」



ニィナと一緒に急いで待ち合わせ場所の商業ギルド行くと、既にニックとレイチェルさんが待っていてこちらに手を振っているのが見える。


ニィナとタコヤーさんと一緒に釣ったブリを、活け締めにしてから血抜きをしていたら遅くなってしまった。



「ニックにレイチェルさん遅くなってごめん」


「いえ、それほど待った訳では無いのでお気になさらず。シンさんが探していた魚は居ましたか?」


「ええ、大漁です♪キャラバンシティに帰ったらご馳走しま、、、いや、さすがに娼婦の皆さん全員には無理が(汗)」


「ふふっ、私とババアの2人分で大丈夫ですよ。」



おーい、ベスー!


従業員からババアって言われてるぞぉー(笑)


ベスって慕われてるのか嫌われてるのかマジでよく分からんけど、本人もババアって呼ばれる事を全く気にしてないから案外良い関係なのかもしれん。



「ありがとうございますレイチェルさん。出来るだけ早く魚の安定供給を実現させますから!」


「他の人達にはその時にお願いしますね。」


「頑張ります!話は変わって、ニックとレイチェルさんは何か面白い物は見付けました?」


「サウスビーチは野菜なんかもキャラバンシティとは全然違うんですね。今日はとにかく見て回るのを優先して、気になった物は明日買う予定にしてます。」


「でもコレだけは売り切れそうだから買ったんだけど、アニキはコレが何か分かるか?」



むむむっ


ニックが紙に包まれた黒色のような焦げ茶色のような、『土』にも見える謎の塊を見せて来た。


ひと欠片摘まんでみると、少し力を入れただけでボロボロに崩れてしまった。


しかも手の熱で溶けたのかベタベタするし、なんだこりゃ?


スンスン、スンスン、、こっ、この匂いはまさか!


ペロッと、、なるほど♪



「ニックはコレが何か分かって買ったのか?」


「売ってたお店に行列が出来てたから並んでた人に聞いて買ったけど、、、アニキはコレが何か知ってんのか?」


「まぁ現物を見たのは初めてだけどな。」


「はぁ~、アニキは知らない事が無いのかよ(悲)」



おぅふ(汗)


ニックが凄く落ち込んでしまった。知らないと言った方が良かったか?


でも後で知ってるとバレると嫌われそうだからなぁ



「えっと、政治とか世界情勢はよく知らないぞ、アハハ」


「アニキなら王都ベルチカに行っても、役人を従えて普通に王城で働いてそうだけどな」



ニックよ、俺が王城で働いてそうなどと恐ろしい事は言わないで欲しい


王城なんてのは遠くから眺めて酒の肴にするくらいで充分だよ。



「とっ、とにかくだニック!この黒糖を使って新しい甘味を頑張って考えろよ」


「黒糖って独特の味と香りだから難しそうなんだよな、先ずはドーナツで試すとして他はどうするかなぁ」



ニックが新しい甘味について真剣に考え始めて、ぶつぶつ独り言を言っている。


しかしサウスビーチに黒糖が売ってるとは思わなかったな。今まで全く見なかったから、たぶん何処かで少量作られていたのを行商人か誰かが見付けたんだろう。


珍しい物や使い道がよく分からない物も、工夫次第で儲けに繋がるって考え方はかなり浸透して来たっぽいからな


ただこの考えが広く浸透しちゃうと、今まで捨てるだけだった物を利用した領地の発展と儲け、この2つを取り引き材料にした貴族と仲良くなる方法が使えなくなるかもしれない。


まぁその時はひと手間加えたグレードアップバージョンを提案すれば良いか♪



「さてと、俺とニィナはこれからゲオルグ様の所に行ってそのまま泊まるけど、ニックとレイチェルさんはどうします?領主邸に泊まるのも記念になって良いと思うけど」


「「無い無い!!」」



わぁお!


ニックとレイチェルさん同時に否定されてしまった。



「気軽に領主邸に泊まるのはアニキくらいだからな!」


「領主邸なんかに泊まったら食事が喉を通る気がしません(汗)」


「まぁ無理は言わないよ。2人がそう言うだろうと思ってミリーさんに頼んで商業ギルドで宿を紹介して貰えるようにしてあるから。そうそう、宿代は商会の経費で出るから高級な宿に泊まって良いからな」


「やったぁー!」


「ふふっ、ニック君、こういう時は高級宿に泊まると見せかけて、宿のランクを下げて宿代の差額を懐に入れるのが常套手段よ♪勿論手に入れたお金はサウスビーチにあるお店で使って還元するのがマナーね♪」


「へぇ~、宿に泊まるのも色々あるんだな。じゃあアニキまた明日な!」


「シンさん、ニィナさんまた明日。」


「はい、また明日」



うーむ


経費を懐に入れる方法とか雇い主の前で堂々と言わないで欲しい。


ちょっと待てよ


もしかしてこれは、『レイチェルさんの思った事が直ぐ口に出てしまう』という、ベスも言っていた悪い癖か?!


確かにあのレベルの事を雇い主の前でぶっちゃけてたら、そりゃあ仕事もクビになるだろうな。


まぁ元の世界でも新幹線で出張する所を、夜行バスに乗って差額を懐に入れるくらいは普通だったし(犯罪になる可能性があるから絶対に真似しないように!)


命の値段が安いこの世界なら賢く生きる事は必須だろうから、ここは聞かなかった事にしておこう。



「あっ!」


「旦那様どうしたの?」


「いや、金が無いって言ってニックとレイチェルさんを同じ部屋に泊まらせた方が良かったかなと思って」


「あらあら(笑)そこまでしなくてもあの2人なら大丈夫。こっちが気を使いすぎても上手く行かないわよ」


「俺は若者の恋愛はさっぱり分からんから、ニィナがそう言うなら良いんだけど」


「旦那様もまだまだ若いでしょ?」


「え?、、ああ、そうだね(笑)ニィナってそういうの詳し」「無いから!」


「ん?」


「旦那様が初めてだから(照)」



へぇー


ここに来て知る意外な事実。


ダークエルフは長命って聞いてたから、ニィナが経験豊富でも個人的には全然アリだったんだけど


ニィナには初めての相手が俺でがっかりされないように、これからも頑張らなくっちゃな!






つづく。

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