第454話 鰤を入手せよ!(実践篇)

ご機嫌なニィナと手を繋いで、エモンズ商会が設置した『簀立て』のある浜辺にやって来た。


タイミング良く引き潮の時間だったようで、簀立ての中に居る魚がたまにバシャバシャしているのがよく見える。


という事は


エモンズ商会の人達が簀立てに入っている魚を捕まえに来る頃だと思うんだけど、、、



「おーい、シンさーん!」



来た来た♪


相変わらずナイスなタイミングでエモンズ商会のタコヤーさんが従業員を引き連れてやって来た。



「タコヤーさん久しぶり、、でもないか(笑)」


「あははははは、シンさんとは同じ街に住んでいるのか?と錯覚するくらい頻繁に会ってますからね。今日も魚を買いに来られたんですか?」


「そうなんです。鰤と言う魚が欲しいんですけど見た事ありますか?」



俺はあらかじめ鰤の姿を印刷しておいた紙をタコヤーさんに見せる。



「ふむふむ、似たような小さい魚が2度ほど簀立てに入っていたと記憶してますが、浅瀬で泳いでいるような魚ではないと思います。」



うーむ


鰤は出世魚で小さい時は沿岸に居て、鰤(約80センチ)になると沖に行くんだったかな?



「そうですか、となると釣るしかないかぁ」


「ほぉほぉ、シンさんがそこまで欲しているという事は相当美味しいんですね?」


「サウスビーチだと分からないんですけど、俺の育った所だとブリは冬になると脂が乗って美味しくなるので、『寒ブリ』と呼ばれて人気でしたね」


「なるほど冬が旬の魚ですか。サウスビーチは冬も温かいとはいえ水温はそれなりに下がりますから、冬に簀立ては使わなかったのですが、今年は使って試してみる必要がありますね!」



タコヤーさんがヤル気になってる所申し訳無いけど、ウェットスーツやドライスーツが無いのに冬の海に入るとかは止めて欲しい


とりあえずここは話題を変えよう!



「サウスビーチで人気の魚ってやっぱり『サバ』ですか?」


「そうですね、『サバサンド』のお陰で大人気ですよ♪他にも『アジサンド』や領主様の所の料理人がレシピ登録した『ブルスケッタ』も美味しいので、白身の魚はどれも人気なんです。それもこれもシンさんのお陰ですよ♪」



おおっ!


以前サダルスウド侯爵邸で食べさせて貰った、ガーリックトーストにトマトと白身魚のマリネを乗せた料理はまだ名前が無かったけれど


俺がお勧めした『ブルスケッタ』でレシピ登録してくれたのか


確かにあれはマジで美味しかったし、乗せる具材を変えれば無限の可能性があるから、どんどん人気が出て欲しい料理だ。



「タコヤーさん、赤身の魚はどうですか?」


「赤身ですか、、、不味くは無いんですけどサバやアジと比べるとちょっと。サケは美味しくて人気なんですけどね、いや、あれは赤身というよりオレンジでしょうか?」



へぇ~


鮭の分類は白身魚だけど、わざわざ訂正する必要も無いか。


それにしても赤身の魚は人気薄っぽい


生食はほとんど普及して無いから焼くか煮て食べてるんだろうけど、マグロやカツオを焼いてもパサパサして美味しく無いもんな


それに


海が近いとは言っても捕ってから食べるまでそれなりの時間がかかるだろう。


冷蔵や冷凍技術が未熟だと赤身の魚は臭みが出るからそれで美味しく無いのかもしれない。日本でも冷凍技術が発達する昭和まで、マグロ(特にトロ)は不人気だったらしいしな



「とにかく今日はブリを釣りましょう!赤身の魚も釣れたら俺が何か作りますよ」


「本当ですか!我々も色々と試作してはいるのですが、『焼く』と『煮る』だけでは限界がありまして(汗)」


「凄く簡単な料理ですけどね(笑)」







という事でニィナとタコヤーさんと一緒に釣り竿を持って岬の先端にやって来た。


ブリを釣る方法は事前に勉強済みだ!


『メタルジグ』と呼ばれるキラキラした金属製のルアーを使って釣るらしい。俺は元世界だとアジくらいしか釣った事無いけど


こっちの世界の魚は、創造神様が簡単に捕れるようにしたとかなんとかって以前言ってたと思う。


だからイージーモードで釣れるはず。


釣り竿にルアーを取り付けたら


レッツフィッシング♪






つづく。

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