第443話 魔道具

「ぶつぶつぶつぶつ、ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ、ぶつぶつぶつぶつ」


「おーい、ミリーさーんお菓子食べますよぉ~、今日は『マロンバターサンド』と『マロンチーズタルト』です。芋バージョンもあるので好きな方をどうぞ♪」


「、、、ばたーさんど?」


「そうです。疲れた時は甘いものを食べましょうね」


「いただきます。あーん、、、んふふ♪いつもより甘さは少ないけど、栗の味が濃くて美味しぃ~♪」



ほっ


ミリーさんの機嫌も治って良かったけれど、実はお菓子を食べたいだけだったんじゃ、、、


お菓子は美味しく食べて貰う為に作ってるから良いけどね



「秋の新作を気に入って貰えた所で質問なんですけど、ミリーさんって魔道具持ってませんか?」


「持ってるけど凄く性能の低い物よ、シン君は凄い魔道具いっぱい持ってるんだから必要無いでしょ?」


「俺だけの事なら必要無いですけど、結婚しましたし自分の子供や孫達が出来た時に備えて、快適な生活の為に手頃な値段で買える便利な魔道具の開発は必要かなと思いまして。」


「シン君って魔道具まで作れるの?!」


「作れるかどうかの確認の為にも魔道具が欲しいんですよね。キャラバンシティじゃ売ってる人を見た事無いんで、かなり希少な物なんですか?」


「希少なのは確かね。部屋で仕事をしようと思ってちょうど今ライトの魔道具を持ってるから、実際に見て貰いながら説明するわね」


ゴトッ


ミリーさんが取り出してテーブルに置いたのは、台座の上に直径1センチ高さ10センチ程の金属の棒が立ててあって、棒の先端には直径2センチ程のガラスの玉が付いた物だった。


ライトの魔道具って事はガラスの玉が光るのかな?



「へぇー、意外と小さい物なんですね。光らせて貰って良いですか?」


「えっと、この後部屋で仕事をする時に使いたいから今光らせるのはちょっと」


「そんなに短時間しか光らないんですか?」


「食パンを焼く時間くらいかな。光が消えたら魔力を補充してまた使えるけど、私だと3回が限界だから節約したいなぁって」



食パンの焼き時間は確か25~30分だったはず、性能が低いと言っても短過ぎやろ(驚)



「じゃあ代わりのライトをミリーさんにあげるんで今光らせて下さい。はい、代わりのライトです。」


「あぁ~、シン君はやっぱり持ってるんだね」



俺が取り出したのは単3電池3本で約6時間光るデスクライト。


充電池も使えて持ち運びも出来るコンパクトな物だから、商業ギルドや他の所で仕事をする時にも便利だろう。



「一応言っておくと、ミリーさんの部屋の天井にもリビングに付いてるのと同じ大きいライトが取り付けてあるんで、手元を照らすライトは不要だと思いますよ。」


「天井?、、、あっ!、、そっ、そうよねシン君と一緒に住むってこういう事よね(悲)」



あらら


天井のライトを見てミリーさんが落ち込んじゃったけど、今さらライトくらいで落ち込まないで欲しい



「とにかく早くライト付けて下さいよ、っていうかスイッチあるんで付けますね『カチッ』」



おっ!


ライトの魔道具のスイッチを押すとガラス玉がオレンジ色に光って徐々に光が大きく、、、ならないな


光はロウソクくらいの大きさで止まってしまった。


この光で夜に書類仕事をするのはちょっと辛いかもしれないけれど、電気が無い世界だと凄く便利な道具なんだろう。



「ミリーさん、このライトの魔道具は幾らで買ったんですか?」


「金貨1枚よ。シン君は高いと思うかもしれないけど、火事の心配は無いしロウソクとかランタンの油代を考えると魔道具を買う方が安いのよ」



まぁ手作りのロウソクって作るのに凄く手間が掛かるらしいから、高級品とまでは行かなくても安い物では無いはず。


ランニングコストを考えると金貨1枚で買っても、毎日2~3時間使うなら60日程度で元は取れるだろう


だがしかし


魔道具に魔力を補充したり代金の金貨1枚を用意出来るのは貴族か高ランクの冒険者くらいだから、街で魔道具を売ってる奴が居ないのも納得だな



「ねぇミリーさん、この魔道具の光を強くするにはやっぱりガラス玉を大きくするんですか?」


「光を強くするにはガラス玉に送る魔力を最適な魔力圧に制御する必要があって、、、えっと(汗)」


「ミリーさん大丈夫です。専門外の事を聞いてすいません」


「謝る必要は無いんだけど、もしかして光を強く出来るの?」



確信は無いけどミリーさんの説明を聞くに、電気で電球を光らせる事と同じじゃないかな?


この世界だと電気の代わりに魔力を使うんだろうけど、となるとこのライトの魔道具はコードレスだから、電気を貯めておく電池に相当する何かがあるはず、、、


あった!


台座の裏に付いてる蓋をパカッと開けると、そこには黄色の石が1個入っていた。


この石は以前オークキングを倒した時に見た青色の魔石と酷似しているから、オークとは別の魔物から取った魔石なんだろう。


魔石が電池の代わりをしているなら、ライトの魔道具に付いている気泡だらけの曇ったガラスの玉は、、、






つづく。

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