第439話 お引っ越し その3

「あぅ゛~、う゛ぅ~♪」


「そっかぁ、リコちゃんも良いと思うかぁ~♪」



リコちゃんにニックとスナックの嫁さん候補について相談したら、とても良い笑顔で賛成して貰えた(笑)


おっと!


そろそろ引っ越し祝いのケーキを食べる時間だ。元世界なら『引越し蕎麦』を食べるところ、、、でも無いか


引越し蕎麦の始まりは江戸時代に、引越し先の隣近所にご挨拶の手土産として比較的安価だった『蕎麦』を配ったのがきっかけらしいけど、俺が子供の頃には既に引越し蕎麦を食べる習慣は無くなりつつあったもんな


それに我が家の引越しなら蕎麦より甘味の方が似合ってるよ。



「ご主人様ぁー、みなさん待ってますよぉー!」


「あいよ~、そしたらサーシャさんリコちゃんを、、、あれ?サーシャさんが居ないな」


「サーシャさんにゃら向こうでケーキを切り分けてますよ」


「またか、信頼してリコちゃんを任せてくれるのは嬉しいけど、もう少しリコちゃんとの時間を増やしても良いと思うんだけどなぁ」


「それは仕方にゃいですねぇ、子供の為にも多少の怪我や病気程度では休まず働いて稼ぐのが普通ですから」



俺の普通を基準にするなら、リコちゃんを産んだサーシャさんはまだまだ家で休養しておくべきなんだけど


ミーナが言ったように、サーシャさんも倒れるくらいの体調不良で無い限り働こうとするんだもの


見てるこっちが不安になるから、俺の心の安心の為に製薬スキルで『体力回復薬』を作ってサーシャさんに飲んで貰ったら、元気になったサーシャさんはバリバリ働き出してしまった。



「すまんけどリコちゃん任せて良いかな?」


「お任せ下さい!」


「じゃあお願いな」


「はい、、んにゃっ?!」



あらら


俺を呼びに来た猫耳獣人のミーナにリコちゃんを渡そうとしたら、リコちゃんがミーナの尻尾をギュッと掴んでしまった。



「リコちゃん、そんにゃに強く尻尾は掴まにゃいで欲しいです(汗)」



ブラッシングをした時に俺も触った事があるけど、ミーナの尻尾は程よく太くてベルベットのような触り心地がとても気持ち良いんだ♪


リコちゃんが尻尾を掴んで離さない気持ちもよく分かる(笑)


とはいえ


ミーナの尻尾をおしゃぶりのように、あむあむ舐めるのは止めてあげて欲しいなぁ



「うーむ、困った。離してくれる気配が無いな」


「私に構わずご主人様は行って下さい、ご主人様が居にゃいと誰もケーキを食べられにゃいですから」


「それもそうか、アンさんかスージィーを助けに寄越すから、ミーナはしばらくそのまま頑張ってくれ!」


「はい、リコちゃんは可愛いので問題ありません。尻尾はもう少し優しく掴んで欲しいですけど(笑)」



さてと


アンさんかスージィーを見つけるか、ケーキを食べる為の挨拶をして早くミーナの所に戻らないと、ミーナの尻尾がリコちゃんのヨダレでベトベトになってしまう!



「あっ!会長ぉ~、早く挨拶して下さいよぉ~」



タイミング良くアンさんが声をかけてくれたのはラッキーだけど、手に持ってる皿には既にケーキが山盛りになっている



「ちょうど良かったよアンさん、向こうでミーナがリコちゃんと一緒に居るから、そのままケーキ持って行ってくれるかな?」


「お任せ下さい。あっ!バウムクーヘンっていう新作のお菓子はまだ食べた事無いんで、残しといて下さいね!」


「はいはい、心配しなくても量は充分にあるから」


「では行って来ます!」



引越しケーキを食べる為に、今日は朝から商会の従業員にバウムクーヘンを焼いて貰っていたんだ♪


創造神様から貰った『バウムクーヘンオーブン』があるから、生地さえ作れば自動で回転する金属の棒に生地を付けて焼いてくれるから、後は層になるように焼いては生地を付けてを繰り返すだけだ。


もし余っても俺の収納に入れておけば問題無い



「ダンナァ、早くしないと皆待ちきれないよ~」


「あいよ~、それではみなさん、いただきます」


「「「「「いただきまーす♪」」」」」



とりあえずこれで今日の俺の仕事も終わりっと



「おにいちゃんエクレア貰って来たよ♪」


「ありがとうメリル」


「主様、桃のロールケーキをどうぞ」


「ニィナもありがとうな」


「ご主人様、チーズケーキです。どうぞ」


「おっ、おう、カスミもわざわざありがとう」


「ご主人さま~、焼きたてのたい焼き~♪」


「えっと、、焼きたての熱々で嬉しいなぁ(汗)」



わざわざみんなが持って来てくれた物を断る選択肢など俺には無い!無いのだが


1度にこの量は無理が、、、



「あはははは、今日のダンナはモテモテだね(笑)」



おぅふ


ケイトに爆笑されてしまった(悲)


しかしちょいと待ちなさいよケイト



「おいケイト、その手に持ってるバウムクーヘンは切らずにそのままかぶりつく気じゃないだろうな?」


「えーっと、駄目なの?」


「駄目っていうかそれを1人で食う気なのかよ!」


「うーん、やっぱり無理かなぁ?」



本当に無理かどうかは俺は知らないけどさぁ、切り分ける前の1メートルの長さがあるバウムクーヘンを、食べきれるかどうかくらいは自分で把握しててくれよ


ケイトの場合は切り分ける前の巨大なバウムクーヘンにかぶりつきたいだけだろうけどな(笑)



「まったくケイト殿は何をしているのですか」


「ケイトはバウムクーヘンでお腹いっぱいにする気だから夕食は無しで良いよね?」


「え゛っ?!それは駄目だよお嬢ぉ~(汗)」


「そんなに焦るなよケイト、ちゃんと切り分けてみんなでシェアしてほどほどの量を食べような。そしたら夕食にはケイトの好きな料理を作ってやるから」


「ありがとう旦那ぁ~、あたしずっと旦那と一緒に居るがら゛ぁ゛~(泣)」


「わっ?!止めろケイト抱き付くな!結婚してまで泣いて俺に鼻水を付けるんじゃあ無いよ」



まったく


いつまでたってもケイトは変わらないんだから将来が心配になるよ


だがしかし


俺はそういうケイトが


大好きだけどな♪






つづく。

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