第438話 お引っ越し その2

「皆さん行きますよぉー、せーのっ」


『ピッ、、、ピッ、、、ピッ、、、ピッ、、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、カシャッ』




シャッター音が鳴ったのを確認してから、三脚にセットされたデジタルカメラのモニターを確認すると


新居の前に並んだ我が家のみんなやオリビエさん達、ミーナ、スージィー、アンさんをはじめとした池田屋商会の女性従業員達が、とても良い笑顔でデジタルカメラのモニターに表示されている♪


最高の記念写真にはなったけど、写真を見て思う


これは新居に引っ越した記念の写真撮影で良かったんだよな?と



オリビエさん達が俺とメリルとニィナの結婚祝いに建ててくれた新居を、俺は記念撮影の直前に初めて間近で見た。


新居にはオリビエさん達が住む場所、池田屋商会の女性従業員(主に幹部)が住む場所、そして俺と我が家のみんなが住む場所があり


それに加えて食堂や寛ぎスペースといった共用部分が合わさった、2階建ての大きくて立派な建物なのは図面の段階で分かってはいたけれど


実際にこの目で見た我が家の入り口が立派過ぎる


というか完全に旅館の入り口やん!



玄関には大きな下駄箱が設置されていてスリッパもあり土足厳禁になってるしさ。この辺は、お藤さんかヨウコさんの意見が反映されているんだと思うけど


そんな旅館のような立派な新居の前で、数十人が並んで記念撮影をしたらこれはもう


旅館開業の記念写真にしか見えん!



「あう゛ぁ、あう゛ぁ、、、う゛ぅ゛~(怒)」



むむっ!


デジタルカメラのモニターに表示された旅館開業の記念写真、、、じゃなくって


新居に引っ越した記念の写真を見ていたら、サーシャさんに抱っこされたリコちゃんが不機嫌そうに俺を見ている(汗)



「ふふふっ、リコはナガクラ様を父親と思っているのかもしれませんね、良ければ抱いてあげて下さい」


「出来れば親戚の叔父さんくらいで良いんですけどね(笑)おいでリコちゃん」


「ぶぁ~、ぶぁ~♪」



サーシャさんからリコちゃんを受け取ると、さっきまで不機嫌だったリコちゃんの機嫌が良くなった


リコちゃんが生まれてから毎日世話をして来たから、なついてくれないと泣いちゃうところだよ


それに世話をする男が俺しか居ないのもあって、将来リコちゃんが俺の事を父親のような存在だと言ってくれても何も問題は無い!


サーシャさんとリコちゃんは新居でミーナやスージィー達と一緒に住む事になったから、これからも俺が面倒を見る事が多々あるだろうしな


ちなみに


リコちゃんの本当の父親は先日無事に帰って来たのだが、当然と言って良いのかどうなのか


娼婦が好んで使う香水の匂いをプンプンさせていたせいで、娼館通いがサーシャさんにバレて見事に離婚されてしまっている


そのまま放置しても良かったんだけど、元とはいえ父親が路頭に迷うのはリコちゃんが可哀想だから、配送夫見習いとして雇ったけどな


もし再婚を望んでいるのなら、頑張って働いてサーシャさんに許しを貰って欲しい。




「アニキィー!ねぇねぇ、あの家は本当に僕と兄ちゃんが住んで良いの?」



リコちゃんを抱っこしながら複雑な気持ちになっていると、珍しくテンションの高いスナックがニックと一緒に走って来る。


ニックとスナックも一緒に引っ越すから、この2人には『プレハブ仮設住宅』を毎月大銀貨2枚で貸したんだ。


居間と6畳の部屋しか無いけど、予想してたより立派な家で驚いたのかな?



「2人の為に用意した新居は気に入ってくれたか?」


「いやアニキ、あの部屋?家?どっちでも良いけど、あれは気に入るとかの前に大銀貨2枚で貸しちゃ駄目なやつだろ」



ふむふむ


ニックとスナックの表情を見る限り、2人はプレハブ仮設住宅の価値を正しく理解しているようで安心した。


何も考えずに喜んではしゃいでいたら将来がちょっと不安になる所だったよ。



「2人がちゃんと価値を分かってくれて嬉しいよ。家賃に関しては俺の持ち物を誰に幾らで貸そうが俺の自由だから何も問題無い。そうそう!結婚した時はちゃんとファミリータイプに拡張するから忘れず言えよ♪」


「はぁ、そうだった、アニキっていつもこんな感じだったよな」


「だぁ、だぁ♪」



あれれ?


何故かニックに失礼な事を言われている気がするのだが、、、


なんとも言えない表情をしたニックを見て、リコちゃんがご機嫌に笑っているから良いか♪



「ふふっ、アニキは結婚してもやっぱりアニキだね♪兄ちゃん、僕らもそろそろ真剣にお嫁さんを探さないとね」


「いや、俺は結婚って面倒くさそうだからあんまり興味無いなぁ。」



ほぉほぉ


スナックは結婚に前向きで、ニックは相変わらず興味が無いのか


ニックにはもう少し色んなタイプの女性と関わる機会を作ってやるべきなのかもしれない


うーむ、となると、、、


あっ!


ちょうど良さそうな人が居てるやん♪






つづく。

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