第436話 趣味部屋の相談

「という事で、シンさん達の新居は旧領主邸の敷地に作る事で決定ね。ついでに旧領主邸も解体しちゃって、池田屋商会の男性従業員用の住居の材料にすれば経費も削減出来るわ♪」


「オリビエさん、手続きはこちらで全てやっておくので新居優先でお願いします!」


「はいはい、分かってるわよミリアリア、私達の家でもあるんだから最優先でやるに決まってるでしょ」



あぁ~


俺の目の前で色んな事が流れるようにどんどん決まって行く


とは言え、俺に意見を求められても『お任せで』か『みんなと相談する』以外の意見は無いけどな。


元世界に居た時も結婚式や新居を建てる時に、打ち合わせや手続き等を全部奥さんに丸投げして離婚された奴がいたっけ


こういうの全部自分で決めたい人なら良いけど、そうじゃなければストレスが溜まるだけだからな


俺の場合は油断してると知らぬ間に新居が完成してしまう、、、っていうか新しく作るって言うなら趣味部屋は是非欲しい!


今の趣味部屋は製麺所の地下だからちょっと不便だったんだよ



「オリビエさん、地下室って作れますか?」


「ええ、勿論作れるわよ。」


「俺が個人的に使う部屋が幾つか欲しいのと、お酒の保管用の場所も欲しいですね。」


「もしかしてお酒の研究に使う部屋なのかしら?」


「お酒の研究にも使いますけど、他にも色々試したい事があるのでそれぞれ専用の部屋があれば良いなと。そして今回俺が1番作って欲しいのがお酒を飲む為の施設です。」


「お酒を飲む為の施設?酒場では無いの?」



「今後もお酒造りを続けていくなら、生産者の特権として出来たてのお酒を直ぐに飲みたいじゃないですか♪知り合いだけが入れるプライベートな酒場と考えて貰っても良いですけど、そういう施設が自宅の地下にあるって最高だと思いませんか?」


「なっ?!ちょっと待ってちょうだい、とても楽しそうな施設だと思うけれどそれだとシンさんは儲からないでしょ?」


「目的はあくまでも完成したお酒を部外者に知られずに飲む為の場所ですから儲けは考えてません。地下室に居る時限定で『ジャック』や『ジョニー』のウィスキーを販売するのも」「是非作りましょう!」



おぅふ(汗)


お酒に関係する事なら喜んで貰えるとは思っていたけれど、気合いの入ったオリビエさんの顔が少しだけ恐いです。



「えっと、詳しい事は後で参考資料を見て貰うとして、絶対に設置して欲しい道具があるんでココに出しますね、よいしょっと」


「「「んー?」」」



オリビエさん、ミリーさん、アルテミスさんが揃って首をかしげてしまったけれど、それも致し方無い


俺が収納から取り出したのは、創造神様から貰った『ビールサーバー』だ。


業務用の本格的な物だから我が家に設置するには大きくて邪魔になるから、ガゼル親方に酒場を作って貰ってそこに設置しようと考えてたんだけど


結婚式とか色々あってずっと放置したままですっかり忘れてたのは内緒だけどな(笑)



「皆さんこれ実はビールを注ぐ為の専用の道具なんですよ。実演しますね、まずグラスを斜めにして注ぎ口の下に持って行き、レバーをグイッと手前にすると、『シューーー』っとっと、グラスの七割程度まで来たら一旦止めて、次にレバーを奥にすると『シューー』おわっ?!ちょっと溢れちゃいましたけど滑らかな泡が出来てるでしょ?これが美味しさの秘密なんですよ、はいどうぞオリビエさん」


「ありがとうシンさん、、、確かに瓶ビールからでは絶対に出来ないほどに滑らかな泡ね。いただきます、んぐんぐんぐ、ふぅー、、、これがビールサーバー、素晴らしいわ♪」



ふふっ


珍しくオリビエさんが周囲に聞こえないほどの小声で感想を漏らしていた事からも分かるように、ビールサーバーの威力には気付いて貰えたらしい


元世界だとボタンを押すだけで、自動でビールを注いでくれるビールサーバーもあるけど


本当に美味しいビールを注ぐには相当な技術が必要らしく、何処かの国ではビールマスターの称号を得る為に、ビールサーバーを使ってビールを注ぐ試験もあるとか無いとか、、、


記憶が曖昧だけど、まぁそれくらい技術が必要だって事だ。


とは言え、素人の俺でも瓶から直接注ぐよりは美味しくなるんだから


創造神様、改めて素晴らしい物をありがとう!



「オリビエさん味はどうですか?俺はまだビールサーバーの使い方に慣れて無いんで、プロが入れたビールと比べたら全然駄目なんですけど」


「えっ?!今のでも充分過ぎるほどに美味しかったのに、まだ美味しくなるの?」


「そうですね、ある種の職人技みたいな物なんで、おっと!ビールサーバーのマニュアル渡しておきますね。どうせならビールを注ぐ専門家を育てるのも面白いかもしれませんね♪」


「まさか注ぎ方で味がこれほど変わるなんて、、、」



あぁ~


オリビエさんが頭を抱えて俯いてしまったけれど、俺は知っている


ドワーフにとって酒の事で悩めるというのは至上の喜びだという事を


その証拠に


頭を抱えて悩んでいるオリビエさんの表情は、とってもキラキラしているんだもの



毎日素敵な女性に会える今の人生は控えめに言って


最高やな♪






つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る