第430話 伝える事の難しさ

朝、目が覚めると


俺の右腕をメリルが、左腕をニィナがそれぞれ掴んで気持ち良さそうに寝ている。


なんやかんやあって2人と結婚してから初めて個室で一緒に寝る事が出来た、、、とは言っても


同じベッドで3人仲良く眠っただけだから、ここが俺専用の個室で他のみんなが居ない事以外は、結婚前と何も変わってないんだけどな(笑)



「だ、、、」


だ?


「だだ、、、」



うぉい!


ふと隣を見ると、いつの間にかニィナが目を覚ましていてこっちを見ているんだけど、何か俺に言おうとしてる?



「ニィナおはよう」


「はい、、、だっ、だだだだだ、旦、、那様、おはようございましゅ(照)」



あっ、噛んだ!


なんと言いますか


わざわざ口に出して言ったりはしないけど、そこまで照れるなら無理はしなくても良いと思うよ。


ただし、奥さんからの挨拶は全力で嬉しいけどな♪



「メリルもそろそろ起きろ~」


「、、、う~ん」



メリルの目覚めが悪いけどしょうがないか


昨夜はアルテミスさんと魔法を利用して作れる、冬に向けての料理やお菓子の話で凄く盛り上がったから、いつもより寝るのが遅くなってしまったんだよな。


アルテミスさんの温める魔法なら、蒸し器を使わずに『肉まん』も作れそうだし、『アップルパイ』を温め直したりするのにも使えそうだ♪


あまり知られていないのかもしれないけど、アップルパイ等のパイ生地を使った焼き菓子って、焼き立ては勿論美味しいんだけど


少し時間が経って冷めてからも、味が馴染んでまた違った美味しさになるんだ♪


ただし


カレーみたいに2日目の方が美味しくなるとか、そこまでの変化は無い!



さてと、昨夜は久し振りにリコちゃんのお世話をお母さんに代わって貰ったから、朝食は俺が作りますかね


既にヨウコさんかカスミ、もしくはコニーとフラニーが作ってるかもしれんけど、和食ならまだまだ我が家のみんなには負けん!




「シ~ン~さん♪」


「あっ!アストレア様おはようございます。」


「はい、おはよう♪じゃあ向こうで一緒に朝食を食べましょうねぇ~♪」


「はっ、はい」



おぅふ


部屋を出て1階の厨房に向かっている途中で、朝から超ご機嫌なアストレア様に捕まってしまった(汗)


アストレア様もアルテミスさんも、昨日は我が家に泊まったから遭遇する事自体は全く問題無いんだけど


朝からアストレア様が、はちきれんばかりの笑顔をしているという事は、はたして俺にとって良い事なのかは判断にとても迷う。




「さっそくだけど、シンさんはアルテミスの何処が気に入ったの?」



アストレア様にリビングに連れて来られて、まさにさっそく質問されているのだが、質問の意図がちょっと分からない(困)



「えーっと、控えめな所でしょうか」


「へぇ~、意外ね。シンさんはメリルさんみたいな積極的な女性が好きだと思ってたから」


「実際どちらが良いとかは無いですよ。積極的なのがメリルの魅力なのは間違い無いですけど、アルテミス様は控えめな所が魅力的ですよね。ただそれだけの事です。」


「あらあら、それだとシンさんはただの女好きに聞こえるのだけど」


「魅力的な女性は年齢や種族問わず好きなのは否定しませんけど、愛するかどうかは別ですから。そこはお間違い無きようお願いします。」


「ふふっ、確認したかっただけだから気を悪くしないでね」


「確認の目的が気になるんですけど、、、まぁ良いです。そろそろ朝食ですけどアルテミス様はまだ寝てるんですか?」


「あの子はとっくに起きてるんだけど、シンさんと会うのが恥ずかしいみたいね。まさか私もあの子が少女のような反応をするとは思わなかったわ♪」



何故だろう


嬉しそうに話すアストレア様を見てると、とっても違和感を感じてしまう。


昨夜はアルテミスさんと普通に話をしてた筈なのに、、、


あっ!


もしかして酔った姿を俺に見られたから?


そこまで酔っていたようには見えなかったけど、貴族の娘さんならあり得そうな理由ではある



「昨夜は私も少し酔っていたみたいなので、アルテミス様にはあまり気になさらないようにとお伝え下さい。」


「ええ、勿論伝えておくけど、まさかシンさんからアルテミスにプロポーズしてくれるなんて思わなかったわ♪アルテミスもシンさんの事を気に入ったみたいだし、結婚式は年末が良いかしら?それとも年始?年末年始で2日間でも良いわね♪」



あー、、、これは確実に何かをやっちゃった感じですね(汗)


アストレア様の言っている事にまったく覚えが無いんだけど


俺もこの世界に来て約1年だし、アストレア様との付き合いもそれなりにして来たから分かる


いまさら勘違いでは済まされないと。


たぶんだけど、こっちの世界でプロポーズと同じ意味の言葉を知らずに言ったんだろうなぁ


例えば


『あなたの作った味噌汁を毎朝飲みたい』とか


『同じお墓に入ろう』とか


どっちも昭和に流行った言葉だったんじゃないかな?


残念ながら平成や令和に流行ったプロポーズの言葉は知らないけど、まぁそういう言葉をアルテミスさんに言ったんだろう。


既にケイトとも結婚しちゃってるし、離婚歴のあるアルテミスさんが再婚するのは難しそうだから俺で良いなら歓迎するけど


国や文化や習慣の違いって難しいよね。



「アストレア様、結婚の話はもう一度アルテミス様とお互いの意思を確かめさせて貰ってからでよろしいですか?」


「勿論よ、邪魔はしないから何回でも何日でもじっくりゆっくり確かめて良いわよ♪」



うーむ


アストレア様の言ってる『確かめて』は何か違う意味に聞こえるけれど


まずは奥さん達に話をしなければ!


改めて思う


異世界って難しいよぉー(泣)






つづく。

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