第429話 アルテミス・ピスケス伯爵令嬢 その3
アルテミスさんの使える魔法『温かい風』と『冷たい風』を見せて貰ったら、冷たい風の方は痛いくらいの冷気を出す事が判明した。
アルテミスさんは風魔法と呼べない威力の弱い『風』と言ってるけど、実際には手から冷気を出す魔法?
いや、手のひらで温度を下げる魔法?もしくは熱を奪う魔法?
よく分からんこんな時にはスキルの「店」になにか良い物は、、、これだ!
「アルテミスさん、この器を持って冷たい風魔法を全力で発動して下さい。」
「それは構いませんけど、全力を出してもあまり威力は変わりませんよ?」
「ただの確認なのでお気になさらず全力でお願いします。」
「では行きます。はぁっ!」
どれどれ、、、冷たっ!
やはり俺の予想は当たっていたな♪
アルテミスさんの魔法は『風』を出すんじゃ無くて、手を温かくしたり冷たくする魔法だ。
『風』のように感じたのは熱気と冷気が漏れていただけだろう。
その証拠に俺がスキルの「店」で購入して渡した、熱伝導率が高いアルミ製のトレーは
キンキンに冷やされて表面に霜のような物が出来始めている。
ここまで冷えるなら試してみたい事を思い付いた♪
「アルテミスさん、そのまま魔法を発動させといて下さいね。」
「えっ、ええ」
キンキンに冷やされたアルミ製のトレーにオレンジジュースを少量入れてスプーンでかき混ぜる、、、おっ?、、、おおっ!
あっという間にオレンジジュースがシャーベットになったよ♪ここまで冷えるならアイスクリームも簡単に作れるかもしれない
他にも
パイ生地と一緒に折り込むバターを冷やしたりとか、お弁当箱に入れる料理を急速に冷やせば食中毒予防にも使えそうだ。
俺からしたらめちゃめちゃ便利な魔法だし使う場面も沢山あるけど、貴族の娘さんにとっては利用価値は低そうだよな
アルテミスさんが個人で屋台とか小さなお店を経営するなら話は違うだろうけど。
「アルテミスさんのお陰で『シャーベット』と言う氷菓子が出来ましたよ♪口開けて下さい、はい、あーん」
「あー、、、んっ?!こっ、これはいったい、、、いえ、氷のお菓子なのは分かるんですけど」
「まぁシャーベットについてはそういうお菓子です、としか言えませんけど。今見て頂いた通り、アルテミスさんの魔法は手を冷やす、もしくは手で触れてる物を冷やしたり温めたりする魔法なのかなと思います。」
「物を冷やす、ですか?」
「これから積極的に魔法を使っていけば、温める方ももっと高温になるかもしれません。最終的には鉄を溶かす事が出来る、、、かも?」
「鉄を溶かす?!」
「所詮私は魔法の基礎も知らない素人ですからただの推測でしかありません。魔法については専門家に聞いた方が良いと思います。」
「今まで私は魔法が苦手だとばかり思っていたのですが、まさか手で直接物を冷やしたり温めたりする魔法だったなんて、、、」
「私の勝手な想像ですけど、アルテミスさんは魔法が苦手だからと諦めずに、今までずっと鍛練を続けて来たのではないですか?」
「、、、え?」
「温める方はそれほどでもありませんでしたけど、冷やす方の魔法の威力はかなりの物だと思います。魔法の発動もとてもスムーズに感じましたし、苦手だからと諦めている人には出来ない事なのではないですか?」
「たっ、確かに私は今まで魔法の鍛練を怠った事はありません。今まで聞いた事の無い魔法を使える事が判明したのも喜ばしいです。しかし、だからと言って、広域殲滅魔法を使える父、レヴァティ・フォン・ピスケスの血を受け継ぎながら、この程度の魔法では、、、」
「アルテミスさんは、しっかりレヴァティ様の血を受け継いでいるのだと思いますよ。だって、使い方が分からない魔法なのにあれほどの威力があったんですから。
個人的には10秒も経たないうちにオレンジジュースが凍るのは、とんでもない威力だと思いますよ。使い方が分かった上で鍛練を続ければ今の5倍とか10倍の威力になるかもしれませんし」
「ですが、所詮は手の平にしか魔法が発動しないのでは意味が、、、」
「広域殲滅魔法と比べると真逆の性質ですから比べる意味は無いでしょう。アルテミスさんは魔法を何に使いたいのですか?」
「何に?」
「戦争で敵を殺す為ですか?」
「そんな事はしません!戦争の無い平和な国にして、領民に安心して暮らして貰うのが我々貴族の責務なのですから!」
「ならそれで良いじゃないですか。広域殲滅魔法が必要な時もあるのかもしれません、ですが平和な世の中にはシャーベットを作れる魔法の方が必要とされるんじゃないですか?少なくとも私は広域殲滅魔法より、お風呂上がりにシャーベットが食べたいですけどね♪」
「え?!、、、あの、それは、毎日食べたい、という事ですか?」
「夏は毎日食べたいですね♪オレンジ以外にもレモンとかメロンも好きです。アルテミスさんの魔法があれば果肉入りのシャーベットを作るのも有りですね、あっという間に作れるから試作も簡単そうです♪」
「そっ、そうですね(照)」
ん?
なんだかアルテミスさんの様子が、、、変?
まぁ途中から暗い雰囲気になってスゲェー焦ったけど(汗)
アルテミスさんに笑顔が戻って良かった。
やっぱり女性には笑顔が1番だよ♪
つづく。
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