第428話 アルテミス・ピスケス伯爵令嬢 その2

『プシュッ、トクトクトクトク』


「アルテミスさんどうぞ、レモン味の『チューハイ』というお酒です。」


「ありがとうございます。ん?透明でシュワシュワ、、、エールの亜種でしょうか?」


「材料が違いますので完全に別のお酒ですね。シュワシュワは好き嫌いが分かれると思いますから、苦手なら別のお酒を出しますので遠慮無くどうぞ。では、かんぱい」


「いただきます。・・・んく、、、、、んぐ、んぐ、はぁ」



アルテミスさんはグラスに入った缶チューハイを少しの間じっと見つめてから、控えめにひと口目を飲んだ、、、と思ったら一気に飲み干してしまった。


しかもいつもの癖でうっかりストロングの方を渡しちゃってるし(汗)あれはビールよりアルコール度数が高いから、慣れてないと即酔ってしまう危険がある


アルテミスさんはあまり酒を飲み慣れてないらしいけど大丈夫か?



「アルテミスさん、チューハイはどうでした?」


「はい、レモンの苦味がアクセントになっていてとても美味しいです。」


「それは良かった♪」



アルテミスさんは酒を飲み慣れて無いだけで、実はけっこういける口なのかな?



「・・・」



うーむ


アルテミスさんが空になったグラスを悲しそうに見つめているけれど


なんだろうこのめちゃめちゃ既視感のある雰囲気は、、、


あっ?!


これって酒好きな気の良いおっちゃん、ゲオルグ様と同じ雰囲気だよ!


マジかぁー


お酒好きなのは何も問題無いけど、ゲオルグ様と同じ雰囲気出しちゃってるのはなぁ

、俺1人で相手をするのはちょっと荷が重い(汗)


今からでもケイトを呼んで来た方が、、、無理だな


ケイトは頻繁に会ってるアストレア様でさえ、出来るだけ話しかけられないように避けてるんだもの


そういう俺も、元世界で皇族とか高貴な身分の人に出会っても、畏れ多くて絶対に話しかけられないように物理的に距離を取っちゃうよ(笑)



「アルテミスさん、もう一杯どうですか?」


「え?、いえ、あの、、、これはとても貴重なお酒なのでは?」


「販売はしてませんけどそれほど貴重では無いですね。それにドワーフの皆さんがお酒の研究をしてるので、そう遠くないうちに似たような酒が出来ると思いますよ」


「王宮晩餐会で出されるお酒よりも美味しいのに貴重では無いのですか?」


「えっと、何を貴重とするかは人それぞれで違うでしょうからなんとも言えませんけど、まぁ難しく考えずお酒は楽しく飲むのが1番ですよ、『プシュッ、トクトクトクトク』さあどうぞ♪」


「あっ、はい、ありがとうございます。いただきます。んぐ、んぐ、んぐ、ふぅ~♪」



うん!


やっぱりアルテミスさんもただの酒好きやな(笑)


ここはつまみの定番フライドポテトと、北海道土産の定番お菓子、ホワイトチョコを挟んだラングドシャクッキーを出そう♪



「アルテミスさん、酒のつまみにフライドポテトとクッキーもどうぞ」


「はい、いただきます。サクサク、ぐびぐびぐ、サクサク、ぐびぐび、、サクサクサクサク、ぐびぐびぐびぐび♪」



わぉお!


フライドポテトとクッキーをよほど気に入ったのか、交互に食べながら酒をぐびぐびぐびぐび飲んでくれてる♪


ただなぁ


ゲオルグ様と違ってアルテミスさんはほぼノーリアクションなんだよ。


機嫌が良さそうなのは見てて分かるけど、こちらから話しかけないと会話をしてくれなさそうな雰囲気も見てて分かるからとても困る(汗)



貴族の若い女性は男性に自分から積極的に話をするのは、はしたないみたいなルールがあるんだろうか?


でもゲオルグ様の娘さん達は超積極的だったんだけどなぁ


どちらにしてもここは俺が頑張らねばならん!



「えっと、アルテミスさんは商売に興味はありませんか?」


「商売ですか?」


「そうです。実は新しい商売として『お弁当屋』『豆腐屋』『氷屋』を考えていまして、、、もしかしてアルテミスさんは何か魔法が使えたりしますか?」


「申し訳ありません、魔法は苦手でシンさんの商会で役立つような魔法は難しいかと。やはり池田屋商会ほどになると魔法が使えないと駄目なのでしょうね」



おぅふ(汗)


何気なく聞いただけなのにアルテミスさんを落ち込ませてしまったよ



「とっ、とんでもないです!幸いにも私は魔法が使えますけど、従業員で魔法を使える者はいません。」


「え?それではシンさんの負担が大き過ぎると思うのですけど」


「少し誤解があるようですね、基本的に商会で扱っている商品は魔法に頼っていません。まぁ多少外国の知識が入ってはいますけど」



嘘は言ってない!


世界が違うだけで外国の知識という事に嘘は無い(笑)



「ちなみにアルテミスさんはどの程度魔法が使えるんですか?」


「わっ、笑わないで下さいね。本当に魔法は苦手なので、温かい風と冷たい風が出せる程度です。」


「風魔法が使えるという事ですか?」


「いえ、風魔法と言えるほどの威力はありません。実際見て頂いた方が分かりやすいので、シンさん手を出して下さい。」


「はい、どうぞ」


「では行きます。はっ!」


「・・・おおっ?!」



言われた通りに手を出すと、俺の手の上にアルテミスさんが右手をかざした次の瞬間、確かに温かい風?が出て来た。


アルテミスさんが言うように『風』と呼べるほどの威力は無いから、冬にカイロの代わりになるかな?程度だけど



「では次は冷たい風を出しますね。はっ!」


「・・・おっ♪、、、っつぅ?!」



ちょちょちょ、ちょっと待て!


温かい風の時と違って、こっちは冷たい風とかそういうレベルを越えて痛いんですけど(泣)


だが待てよ


痛いくらいの冷気、、、だと?






つづく。

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