第424話 男は無力な生き物です。

現在俺は、ケイト、スミレ、コニー、フラニーと一緒に軽食のサンドイッチを作っている。


サーシャさんが産気付いてから約1時間が経過したけれど、まだまだ産まれる気配は無い


今はお藤お母さんとヨウコさんも手伝ってくれているから心配はしていないけど


出産ってどんなに早くても7~10時間はかかるイメージがあるから、とりあえず戦力外組で栄養補給の為の軽食作りを頑張っている最中だ。



タマゴサンド、ハムサンド、サラダサンド、ジャムサンド、フルーツサンド、いなり寿司、お茶漬け


他にもお湯を注ぐだけで出来るインスタントのスープ各種を用意して準備万端だ♪



サーシャさん用にゼリー飲料やプリンを用意してみたんだけど、妊婦さんって陣痛が始まってから栄養補給はするものなのか?


元世界なら栄養剤の点滴をしてそうなイメージだけど、実際にどうなのかは全然知らん!



とりあえず戦力外組の中では1番知識がありそうなケイトに聞いてみよう。



「なぁ、ケイトは出産について知ってる事はあるか?」


「ぜーんぜん分かんないよ。孤児院に居た時は、産まれて直ぐの子が教会や孤児院の前に捨てられてるなんて珍しく無かったから、おしめの交換は得意だよ♪」


「そっ、そうなんだ、よければ後で俺にもおしめのやり方を教えてくれ」


「うん♪」



おぅふ


気軽に聞いただけのに凄く重たい答えが返って来てしまった。



「シン殿ぉ、質問があります。」



おぉっ!


ナイスタイミングだフラニー♪



「俺に分かる事なら何でも答えるぞぉ♪」


「人族の出産ってこんなに時間がかかるのは普通なんですか?」


「人によって多少は違うだろうけど、半日以上かかる事も珍しく無いと思う。エルフの出産は違うのか?」


「眠れる森だと100~200年の間に1~2人が出産する程度なので詳しくは知らないんですけど、魔法を使って産まれやすくするらしいですよ」


「へぇ~」



出産にも魔法が使えるとは初耳だ。事前に知っていたらミリーさんに相談したんだけどなぁ


でも魔法に頼り過ぎて魔法無しではどうにも出来なくなるのは困るから、判断に迷うところではある。



『ガチャッ』



「はぁ~、お腹すいたぁ(悲)」



リビングのドアが開いて出産を手伝っていたメリルが出て来た。まだそれほど時間は経っていないのにかなりお疲れのようだ。



「お疲れ様、サンドイッチ作ったけど食べる?」


「うん、食べる!いただきます、もぐもぐもぐもぐもぐもぐ、もぐもぐもぐもぐ」




うーむ


モリモリ食べてくれるのは嬉しいけど、足りるかな?


食べやすいように小さめに作ったのが裏目に出てしまった。


軽食第2弾は『そうめん』とか『冷やし中華』とか、サッパリと食べられる麺類にしてみよう。



「ふぅー、ごちそうさま。ねぇおにいちゃん、いなり寿司とフルーツサンドは持って行っても良い?」


「勿論良いよ。サーシャさん用にゼリー飲料もあるんだけど、食べられそうかな?」


「ゼリー飲料なら食べられると思うよ。お母さんが言うにはまだまだ時間がかかりそうだから、飲み物と軽食はもっと必要だと思う。」


「オッケー!色々作っとくよ」


「ありがとう、おにいちゃん♪」


「戻る前にメリルに質問なんですけどね、俺達結婚して夫婦になったんだし『おにいちゃん』という呼び方は違和感があるような気がするんだけど」


「あぁ~、言われてみればそうだね。でも直ぐに変えるのはちょっと難しいかも」


「どうして?」


「言い慣れちゃったから」


「そっか、じゃあしょうがないね(笑)」


「うん、しょうがない(笑)」


「引き続き出産の手伝い頑張ってな」


「行ってきま~す♪」



いなり寿司とフルーツサンドを山盛り乗せた皿を持ってリビングに戻るメリルを見送ると


何故か俺の隣でケイトがニヤニヤしているのだが、、、



「ねぇ旦那、お嬢が慣れるまではあたしが呼んであげるから、早く軽食作ろうよ。次はカツサンドが良いと思うんだぁ」


「待て待て待て、ケイトが言う『旦那』は微妙に意味が違う気がするんだが、それとカツサンドはケイトが食べたいだけだろ」


「良いじゃんかぁ~、待ってるだけでもお腹が減るんだもん!」



どうやらスミレ、コニー、フラニーもお腹が減ってるみたいだし、しゃーないか


無事に子供が産まれて来るまでは、気になって他の事なんてやってられないしな


ついでに夕食の仕込みもして時間を潰しますか。






つづく。


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