第423話 妊婦さん その3

女将さんと一緒に我が家にやって来た妊婦のサーシャさんが産気付いたので、急遽我が家で出産をする事になった。


この展開は予想していたけれど、俺の目の前で産気付いてる妊婦さんを見てると、、、


パニック!


いやもう、パニックなんですけどぉー(汗)


今から教会に行って創造神様に安産祈願をするべきか?


それよりも俺の製薬スキルで『安産薬』を作れば、、、っていうか『安産薬』ってなんやねん!


意味が分からんわ!



むにっ


ん?


むにむに、むにむに


俺の右手に何か柔らかい感触があるんだがこれはいったい、、、



「少し落ち着いてちょうだい。」


「ニッ、ニニニニィナ?!」



何故かニィナが俺の右手を自身の胸に押し付けているんだけど、ラッキースケベな現状の説明を求む。



「これから産まれて来る子供と母親に何かあったら、頼れるのはあなただけなの。だから少し落ち着いて」


「あっ、はい。えっと、左手も良かですか?」


「うーん、、仕方ないわね」



むにっ


むにむに、むにむに


ニィナの胸は俺の腕に押し付けられる事はよくあるけど、こうやって揉むのは初めてだからなんとも感慨深いなぁ


そして


こんな状況でニィナの胸の柔らかさを堪能している場合では無い!と考えられるくらいには冷静さを取り戻せた。



「ありがとうございました。落ち着きました。それで俺に出来る事はあるでしょうか?」


「そうね、先ずは清潔なタオルとお湯を用意して、、、万が一出血が多い場合に供えて『増血薬』は作れるかしら?」


「実際に作った事は無いけど問題無いと思う。ついでに『止血薬』と『栄養薬』と他に必要そうな物は作っておくよ。」


「それだけあれば充分ね。製薬スキルはとても便利だけど、それを使いこなすには旦那様の知識が必要不可欠なの。だから何が起きても旦那様はどっしりと構えて居れば良いの。サポートは私に任せて!」


「ふふっ」


「どうしたの?」


「『旦那様』って呼ばれるのは良いもんだなと思っただけだよ」


「いっ、今は緊急事態なのに奴隷の立場では主様に意見とか言えないから、つっ、つつつつ妻としての役割を果たしただけだから(照)」



もっ、もしかしてこれが噂に聞くツンデレか?!


いや、単純に俺が可愛い妻の顔を見てデレデレしているだけだな(笑)



「ニィナと結婚して本当に良かったよ♪」


「そっ、それにお嬢様と、わたわたわた私の時に慌てられるのも困るから、、、」



まぁメリルとニィナが子供を産む時には、事前に創造神様とちーちゃんさんに全力でお願いするから


『安産』は確定だけどな♪



「おーいそこの新婚さん、話し合いが終わったのならこっちを手伝って欲しいんだけどねぇ」



おっと!


ニィナとの新婚生活を堪能している場合では無かった。



「女将さん、妊婦さんを診ていた医者を呼んで来るので場所を教えて下さい。」


「あんたの言う医者がどんなのかは知らないけど、妊婦を専門に診るような奴は王都くらいにしか居ないよ。今はサーシャを寝かせる為のベッドを急ぎで欲しいね」


「了解です!」



うーむ


冷静に考えたら街に居るのは『薬師』と『治癒師』であって、怪我と病気にしか対応していない。


そして女将さんが他に誰も呼ぼうとして無いという事は、『産婆』のような職業の人も居ないのだろう


すると一般人が経験だけを頼りに自宅出産するのが普通なのかよ?!


とっ、とにかくここは女将さんを信じるしか無い!



「よっこいせっと、ベッドはこれで良いですか?」


「大き過ぎる気もするけど、まぁ良いよ。今さらあんたのする事に驚いてちゃいられないからね、さあさあ男は出て行っておくれ」



大は小を兼ねるって事でキングサイズのベッドを出したんだけど、さすがにそこまでの大きさは要らんかったか


女将さんにリビングから追い出されてしまったので、『増血薬』を作りながらヨウコさんに念話で話しかける



(あー、あー、ヨウコさん聞こえる?)


(はーい、聞こえますよ。何か御用ですか?)


(実は商会の従業員が我が家で産気付いちゃって、今から出産する事になったからヨウコさんにもサポートして貰おうかと思って)


(なるほど、でも私は出産についての知識はありませんよ)


(そこは俺が専門書を用意するから、それでなんとかならない?)


(ナガクラ様からのお願いとあらば、不肖ヨウコ、全力で頑張らせて頂きます!)


(はい、よろしくお願いします。)



サーシャさんには無事に出産して欲しいから、ヨウコさんにも頑張って貰いたいのは事実だけど


気合いの入り方がちょっと恐いです(汗)


出産について俺が出来る事も無くなってしまったし、ヨウコさんへの報酬として


今からお藤お母さんに油揚げ料理を作ってくれるように頼みに行きますか♪






つづく。

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