第422話 妊婦さん その2
「どうぞ2人とも座って下さい」
「悪いね急に来て」
「失礼致します。ふぅー(汗)」
「直ぐに麦茶とお菓子を用意しますから。ニィナお願い」
「かしこまりました。」
急に我が家にやって来た女将さんと妊婦さんの話を聞く為にリビングに案内して来たんだけど、妊婦さんは歩くのもかなりしんどそうで椅子に座ると額の汗を拭っている
本来なら病院のベッドで安静にしてなきゃ駄目な状態なんじゃなかろうか?
俺の製薬スキルで回復薬は作れるけど、『妊娠』という怪我でも病気でも無い状態にどれくらいの効果があるかは不明だ。
まぁ俺の製薬スキルで作った薬は、普通の薬と違ってお腹の中の子供や妊婦さんに副作用や悪影響など全く出ない、超絶安心安全薬なので躊躇する事無く使えるのは良いけど
とりあえず妊婦さんの体力回復を優先させれば大丈夫かな?
「お待たせ致しました。麦茶と水羊羹です。」
「それじゃあいただきます。」
「「「いただきます」」」
「もぐもぐもぐもぐ、、、水羊羹ってのは初めて食べたけど旨いねぇ♪プリンとは違ったプルンとした食感が面白いよ」
「うんうん!」
水羊羹を気に入って貰えたのは嬉しいけれど、さっきから妊婦さんは「うんうん!」言いながら凄い勢いで水羊羹をバクバク食べているのだが、、、
まっ、まぁ食欲があるのは良い事だよな!
体調の悪い時に食べる物って果物くらいしか無いからなぁ
これは早急に『お粥』等々の体調の悪い時に食べる料理のレシピも登録しておこう。
「ふぅ~、ご馳走さまでした。」
「あっ、はい、お粗末様でした。」
妊婦さんは水羊羹を3個食べて満足したらしく、心なしか顔色も良くなった気がするよ(笑)
「えっと、それで話と言うのは?」
「話って言うのはここに居るサーシャの事で、見ての通りの妊婦だよ。今は池田屋商会の宿屋で清掃の仕事をして貰ってるんだけど、さすがにこのお腹で無理はさせられなくてね」
あぁ~
そう言われると半年とかもう少し前に新しく雇ったからって女将さんから紹介されたっけ
あの時はガリガリに痩せてたのに、今は程好くふっくらしてるから全然気付かんかった。
「もしかしてサーシャさんはもうすぐ出産予定ですか?」
「経験から言うと10日後って所だね。出産後はサーシャの面倒は私が責任を持って見るから、どうかサーシャを辞めさせないで欲しい!」
「一所懸命に働きますのでこれからも働かせて下さい!」
「理由も無いのに辞めさせたりしませんよ、今日は産休の申請に来たのでは?」
「「さんきゅう?」」
女将さんと妊婦のサーシャさんが揃って首をかしげてしまったのだが、俺はそんなに変な事を言ったのだろうか?
とりあえず隣に居るニィナを見る、、、
はい!
理解でーす。
ニィナの頭の上にも巨大な『?』マークが出現しているんだもの、少なくとも平民に『産休』という制度が無い事は理解しましたよ。
女将さんに一般的な妊婦の扱いについて聞いたところ
まぁ予想していた通り、出産の為に仕事を休むとそのまま辞めさせられてしまうのが普通らしい
仮に1ヶ月くらい産休が許されたとしても、その間の生活費は誰も援助してくれないから、シングルマザーの場合は無理でも無茶でも働くしか無いんだとか。
今回のサーシャさんの場合は、出稼ぎに行ってる旦那さんが出産に合わせて帰って来て、サーシャさんは仕事を辞めて出産と子育てに専念する予定だったのが
未だに旦那さんは帰らず連絡も無い事で女将さんに相談して、今に至る。
しかし出稼ぎに行ってる人からの連絡が無いのはそれほど珍しい事じゃないんだよな
道中で盗賊や魔物に襲われて命を落とす事もあるだろうし、出稼ぎ先で思うように稼げず日々の生活で精一杯になって帰れなくなったり
他に好きな人が出来たから、奥さんを捨ててそのまま逃げたりとかは何処の世界でも少なからずある事だろう。
あとは、自分の名前くらいしか書けない人は珍しく無いからそもそも手紙は書けないし、手紙を出すお金があるなら生活費に使うだろう。
一桁の簡単な計算も手の指を使わなければ出来ない人も珍しくないから、帰って来る日を間違えてる可能性も充分にある
出産予定日から逆算して何日前に出発すれば間に合うのか、手の指を数えて計算するにはちょっと難易度が高いかもしれない。
どんな事情があろうとも、妊婦さんには『産休』を取って貰って休んでる間の生活を支援する事は、池田屋商会の雇用条件に含まれている事だから何の問題も無い。
その辺の事は池田屋商会の人事責任者のアルから、サーシャさんに説明しているはずだけど
この世界じゃあり得ないほどの厚待遇過ぎて信じて貰えず、頭の中から何処かへ旅立ってしまって記憶に無いんだろうけどな(笑)
「と言う訳で、サーシャさんには『産休』を取って貰って、仕事が出来ない間の生活支援もしますよ」
「あぁ~、『産休』ってそういう意味だったのかい」
「他にどんな意味があるって言うんですか?女将さんにもちゃんと説明したでしょう。」
「いやぁ、あくまで急な出産でも遠慮せず休んで良いって意味なのかと思ってたんだよ」
「従業員には改めて説明の必要がある事は分かったんで良いですけどね。誤解も解けましたし、サーシャさんは明日から産休って事にしておくんで、早く帰って休んで下さい」
「はっ、はい!お騒がせして申し訳、、、あ゛っ、、、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
えっ?
ちょっ、待て待て待て!
急にサーシャさんの様子がおかしくなったんですけど、これはもしかして(汗)
「あれま?!これは読み違えちまったねぇ、悪いけど今からここで子供を産ませて貰うよ」
あぁ~
やっぱりこういう展開になるのね
大事な従業員を守る為、チート能力全開でサポートさせて頂きます!
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。