第421話 妊婦さん
メリルとニィナと俺の結婚式から3日ほど経った今日この頃、結婚前とそれほど変わらない日常を過ごしている。
メリルとカスミはお藤お母さんと一緒に貴族から注文されたドレス作りで忙しそうだし
コニーとフラニーは我が家の朝食用にパン作りを頑張っていて、最近では食パン以外にもハード系のパンが朝食に出るようになった。
その日の気分でバターもしくはマーガリンを塗って食べられるし、コーヒーとも合うので俺はとても満足している♪
スミレ、ケイト、ヨウコさんの腹ぺこトリオは、まだ見ぬ新たな美味しい食材を探す為に連日街に繰り出していて
昨日なんて、『ドジョウ』とも『ムツゴロウ』とも言えるような言えないような、よく分からない生物を買って来て美味しい料理を作って欲しいと言われたけど
我が家のみんなに言いたい
俺はそれほど料理を作るのが好きでも無いし料理上手でも無い
元世界で独り暮らしをしていた時に必要に迫られて色んな料理を作れるようになっただけで、謎の生物を調理するなんて無理だからね!
ドジョウに似てたからとりあえず『柳川鍋』っぽい料理を作ったら、とても美味しかったから良いけどさ。
10センチくらいの大きさになって我が家にやって来たゴレさん達は、『池田屋商会本店』『宿屋』『教会』『こども園』等々の、池田屋商会の関係施設でそれぞれが門番として活動している。まぁ基本的には石に擬態して見付からないように隠密行動をしているから、我が家のみんな以外で存在を知ってる人は居ないけれど
たまに商業ギルドにも行って貰って、ミリーさんが倒れるくらいの無茶をしていないか確認もして貰っている。
そうそう!
忘れるところだったけど、ドラゴンのシエーネさんは基本的に食っちゃ寝を繰り返すだけの生活をしている
元々神獣というのはする事が無ければ100年くらい寝てるのも普通らしいから、食事の時間にはちゃんと起きて来るだけで凄いのかもしれない
とは言え、浮島の畑で栽培している野菜や果物や森にあるキノコを、我が家に運んで来るという仕事はしてくれているので
多少寝てる時間が多いくらいなら、圧倒的に俺の方が得をしているので全く問題無い。
俺も久しぶりに池田屋商会会長として商会に『顔を出す』だけの仕事を毎日頑張っている。
池田屋商会には未だに未登録のレシピを『売れ』『寄越せ』『献上しろ』と、威圧的な態度のお馬鹿さん達がやって来るから
そんな時には俺とニィナが素敵な笑顔で出迎えてあげるんだ♪
だけど大抵は俺とニィナの笑顔を見たら直ぐに帰ってしまうんだよなぁ、俺としては情報収集も兼ねてお茶を飲みながらゆっくり話をしたいのに
まったく世の中ってのは上手く行かないもんだな。
今日もそんなお馬鹿さん達が全力で走って帰るのをニィナと見送り、我が家に帰って来てニィナとおやつのカステラを食べながらまったりしている。
「主様、今日のカステラは至高の味だと御報告します!」
今日のおやつのカステラは『抹茶カステラ』にしてみた。
見た目は鮮やかな緑色をしているから、初見だとけっこうびっくりするんだけどお茶好きなニィナはそうとう気に入ったらしい
「気に入って貰えて良かったけど、結婚して夫婦になったのに、その『主様』って言うのはちょっとなぁ、2人で居る時くらいは呼び方変えても良いんじゃない?」
「・・・」
あっ?!
ニィナがぷいっと横を向いてしまった、しかも耳を真っ赤にしながらだ!
俺の呼び方なんて何でも良いし、そこまで分かりやすく照れるのであれば無理に呼び方を変える必要は無いけれど
ニィナって結婚前はもっと積極的だったのに、結婚したら何故か恋愛レベルが中2の俺と同じレベルになってやしませんか?
そりゃあニィナとは恋愛らしい恋愛をせずに結婚したから、いきなり夫婦として接するのは難しいのかもしれんけど
とは言え、俺がニィナの手を繋ごうとするだけで恥じらうニィナはとても可愛いから、見ているだけでめっちゃテンションが上がるけどな♪
『コンコンコン』
「おーい会長、ヘレンだよ~開けとくれ~」
むむっ
宿の女将さんがこの時間に我が家にくるのは珍しい、いつもは夕食か風呂の時間にしか来ないんだけど
「今開けますよ~っと、、、ガチャ、女将さんいらっしゃい」
「おやつの時間には家に居るだろうとは思ってたけど、ちゃんと居てくれて良かったよ」
「何かトラブルでもあったんですか?」
「トラブルと言えばそうなのかもしれないねぇ、とりあえず中でゆっくり話せるかい?他の所じゃちょっとね」
女将さんがそう言うと後ろからもう1人、ものすごぉーく申し訳なさそうな表情をした女性が出て来て、俺に深々と頭を下げた。
「ちょちょちょ、ちょっと待った(汗)頭を上げて!何があったのかは知らないけど、そんなに頭を下げたら駄目だって!」
俺がこんなに慌てているのは、頭を下げた目の前の女性のお腹が大きく膨らんでいたからだ
これは誰がどう見ても妊婦さんだろう。
そして俺が妊婦さんについて知ってる事なんて、『つわり』と『陣痛』くらいしかない
だがしかし
そんなに大きなお腹で深々と頭を下げるのは駄目でしょ!
本当に駄目なのかは知らんけどさ、身体に負担をかける姿勢は妊婦で無くとも止めて欲しい。
それに妊婦さんのお腹の大きさとか表情から、近々出産予定だと言われても俺は全く驚かない
妊婦さんが俺に何の用かは分からないけど、早急に紙オムツや哺乳瓶等々を用意しておいた方が良いのかもしれない
だってここは『テンプレな異世界』なんだもの
今この瞬間に陣痛が始まったとしても俺は全く驚か、、、いや、普通に驚くけどね
まぁそういう展開は充分に予想されるから準備だけはしておこう。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。