第418話 温かいお酒と世間話となんやかんや その2
「おっ、お待たせしました、無料サービスのキュウリとナスのぬか漬けです。」
ふふっ
相変わらずケイトのぎこちない動きが見ていてとても微笑ましい♪
「ありがとうケイトさん」
「シャクシャクシャクシャク、んぐんぐんぐ、、、くぅー!あんたの出してくれる料理は何でも旨いし酒に合うね♪」
「ぬか漬けはニィナが作ってるから俺は関係無いけどな」
「客からすりゃあ誰が作ってるかなんてどうでも良いことさ。それにしても本当にこんな所で屋台を出してると思わなかったよ」
「どうせ荷物置きにしか使って無いんだから有効利用してるだけだよ。利用料金も要らないしな♪」
「はぁ、あんたは屋台だから良いけど、ウチらは家賃が必要なのを忘れてないかい?娼館なんて無理は言わないから、酒場くらいはここでやらせて欲しいねぇ」
キュウリとナスのぬか漬けをつまみに酒をグビグビ飲みながらベスが俺に愚痴を言ってくるけど
そんなん言われても知らんがな!
今日おでん屋の屋台を出してる場所は、キャラバンシティ旧領主邸の庭の片隅だ。
普段はアストレア様の寝室として使っているプレハブ仮設住宅とか、護衛の人達が乗る馬とか野営道具とかが置いてあるだけの物凄く無駄に広い土地なんだけど
セキュリティ面で一般開放するのは難しいんだよなぁ
たとえ一般開放したとしても、こんな場所でキャバクラみたいな酒場の営業許可は絶対に出ないけどな!
「家賃分の儲けは新しい菓子でなんとかして貰おうかね」
「分かってるって、冬に向けての菓子は既に用意してある、これだ!」
「パイだ♪」「ん?」「えっ?」
俺が収納から取り出したのは『アップルパイ』だ。
今回用意したアップルパイは、パイ生地でリンゴのフィリングを包んだ手の平サイズの四角いアップルパイになる
冷えてても美味しいけど温めても美味しいから、寒くなるこれからの季節には良いと思う。
それにトースターの無いこの世界でも、これならフライパンで温めて食べられるし
カスタードクリームパイやミートパイとか、キャラバンシティで入手可能な材料で作れる種類も色々あるから、ベスが経営しているキャバクラっぽい酒場でお土産として、馬鹿な金持ちに遠慮無く高値で売れる♪
ただし
『パイナン・テターベルモ・ンジャネー』というけったいな名前の魔物が居て、『パイ』という名前にすると魔物を使ってると思われてしまう
その証拠にケイトが「パイだ♪」と言ったら、ベスとミリーさんが怪訝な顔をしてしまった。
だからこの菓子の名前は『サクサク生地のリンゴ包み焼き』とでもしないといけないだろうな。
「パイの名前はいったん忘れて貰って、冬に向けて温かい菓子って良いと思うんだけど」
「確かに温かい菓子は良いね。それにこの大きさならわざわざ切り分けて出す必要も無いだろうから、高貴な身分の奥さん連中が茶会用に欲しがるだろうねぇ♪」
「ふっふっふっ、これは砂糖を使わなくても美味しいから平民向けに安く作る事も出来るけど、『砂糖・バター・シナモン』をたっぷり使った超リッチなお菓子にも出来るんだ!」
「あんた今シナモンって言ったかい?」
「あぁ、確かに言ったよベス。シナモンは薬に使うんだろ?だけどシナモンは菓子にも使えるんだよ、薬に使うシナモンをたっぷり使った菓子なら馬鹿な金持ちに言い値で売れるんじゃないか?」
「そりゃあもう天井知らずで売れるだろうね、ふふっ」
「ふっふっふっ」
「「ふわぁっはっはっはっはっ♪」」
良いねぇ、ベスと悪企み感満載の会話ってのは(笑)
俺達が話しているのはあくまでも『悪企み感』であって本当に悪企みをしている訳では無い
叩いてもホコリなんて出ない純度100パーセントの真っ当な商売だ♪
「はぁ、シン君とベスさんがどんな商売をしていてもこちらは文句は無いけれど、貴族と揉め事だけは起こさないでよ」
「分かってますってミリーさん。」
軽くため息をついたミリーさんは、仕事が忙しいのかお疲れの表情をしているけど、チューハイをグビグビ飲みながらおでんの大根をバクバク食べていて、機嫌は良いように見える。
ミリーさんは放っておくと仕事中心の不健康な生活をしちゃうから、定期的におでん屋に呼んで酒を飲ませないと駄目だな
酒を飲んだからって疲れは取れないけど、精神的な疲労の回復には多少なりとも効果はあるだろう
普通なら飲み過ぎると健康に問題が出て来るけど、俺には回復魔法も製薬スキルもあるから何の問題も無い
とまぁ
ここまでは前置きで2人と話したい本題はこれからなんだよ
あんまり深刻な感じにしたくないからベスとミリーさんがホロ酔いになるまで待ってたんだけど、マジで深刻な話にならない事を祈る!
つづく。
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