第417話 温かいお酒と世間話となんやかんや
「ねぇねぇダンナァ~、その大根もう食べ頃じゃない?」
「良い感じに出汁が染みてはいるけど、俺達だけで先に食べるとかはしないからな」
「むぅ」
ケイトがほっぺを膨らまして俺に無言の抗議をしているけど、無視だ!
現在の時刻は日が沈んだ直後で辺りは薄暗くなり始めていて
キャラバンシティを囲む石壁の向こうに見える山の上の空は、まだ少し夕陽のオレンジ色が残ってとても良い感じでこれはまさに
おでん日和だ♪
今日は久し振りに俺の趣味でやってる『おでん屋』を開店して、看板娘のケイトと2人で仕込みの最中だ。
ケイトは意外にも俺のおでん屋に来た事が無くて、おでん屋の看板娘にもずっと憧れていたらしい
少し前までのケイトなら、ニィナに遠慮して何も言わずに我慢してたんだろうけど
『ケイト・ナガクラ』になった事で、ニィナに看板娘を代わってくれるようにお願いして今に至る。
そう!
ケイトは今日から『ケイト・ナガクラ』になったんだ。
ケイトが俺の嫁になる事をメリルとニィナに相談したら、あっさり許可が出てしまった。
メリルもニィナもケイトが仲間外れにされるのを本気で嫌がるのは知ってるし、今さら嫁が増えるなんてのは些細な事らしいです。
ちなみに結婚式は興味が無いからやらなくて良いらしい。
ケイトの場合は結婚式に興味が無いというよりも、結婚式をするとアストレア様とか貴族の方々を呼ばないといけなくなるから、それを嫌がった可能性の方が大きいけどな(笑)
ケイトとの結婚は、ケイトを仲間外れにしない為だけの事だから、我が家のみんなが知っていればそれで充分だけど
後日ウェディングドレスを着せて記念撮影だけはしておこう。
ただなぁ
ケイトが俺の嫁になった事を、カスミがキラキラした目をして凄く喜んでいたのがとても気になる。
まっ、まぁ、カスミは思春期真っ最中だし、おっさんには分からないなんやかんやがあるんだろう
きっとそうに違い無い(汗)
「邪魔するよぉ」「こんばんは」
おっと
考え事をしていたら予約の客が来たらしい
「いらっしゃい、ケイトお客だ!キュウリとナスのぬか漬け2人前よろしく!」
「うっ、うん(汗)キュウリとナス、キュウリとナス、、、」
ふふっ
ぎこちなくぬか漬けを用意するケイトは初々しくて良いねぇ♪
「おや?今日は銀髪の嬢ちゃんじゃないんだね」
「たまには雰囲気が変わるのも良いだろ?それに看板娘は何人居ても困らないからな。」
「あんたの店なら誰が居ても客は殺到するだろうけど、ムサい男が店主の店よりは看板娘の方が良いか(笑)」
「そういう事♪それで2人は飲み物は何が良い?俺のお勧めは温めた梅酒なんだけど」
「聞いた事無い酒だね、あたしゃそれで良いよ」
「そうだなぁ、私は果物のお酒が良いんだけど」
「じゃあ最近仕入れたシャインマスカットか、桃のチューハイはどうですか?」
「シャイン、、何?」
「高級なブドウか桃のシュワシュワしたお酒ですね」
「じゃあブドウにする」
「はーい、ケイトはビールで良いか?」
「良いよ~」
「そしたら俺もビールを、シュポッ、トクトクトクトク、、、かんぱい♪」
「「「かんぱーい♪」」」
「んぐんぐんぐ、、、いっひっひっひ、こいつぁ旨い酒だねぇ、最近夜は冷えて来たからババアには温かい酒ってのはありがたいよ。それとウチの酒場で出せば馬鹿な金持ち連中なら言い値で買うだろうね、いーっひっひっひっ(笑)」
馬鹿な金持ち相手にボロ儲けが出来る事を想像したのか、凄く怪しげな笑い声とニヤニヤが止まらないのは
娼館とキャバクラのような酒場の経営をしているベラドンナ・ステッツェンこと
通称ベス
「はぁ~、美味しい♪ブドウのお酒なのにワインとは全然違うのね」
シャインマスカット味の缶チューハイがよほど美味しかったのか、一気に1杯目を飲み干したのは
キャラバンシティの商業ギルドマスターでエルフの『ミリアリア・E・スリーピングフォレスト』こと
通称ミリーさん
今日のお客はベスとミリーさんの2人だ。
この2人をおでん屋に呼んだのは、かねてより気掛かりだった事を聞く為だ。
2人の話の内容次第では、俺も覚悟を決めなければならないのだけど
いったいどうなることやら
つづく。
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