第412話 ほなまた明日

「アストレア様、お帰りなさいませ。浮島はいかがでした?」


「とーっても楽しかったわ♪」



「主様、お疲れ様でした。」


「特に疲れるような事は無かったけど、後でメリルとニィナに相談があるからよろしく」


「はい、かしこまりました。」



アストレア様との浮島ツアーも無事終わり


ドラゴンのシエーネさん、ヨウコさん、ニィナ、メイドのシンシアさんの4人がお茶をしている場所に戻って来た。



「2人も戻って来たし、試練のクリア報酬を渡すね。人の子アストレアよ、見事第一の試練をクリアした報酬を授ける。受け取るが良い」


「ありがたく頂戴致します。」



ドラゴンのシエーネさんからアストレア様に渡されたのは、手提げ金庫くらいの大きさの宝箱だ。


俺の時のクリア報酬は『ミキサー』と『オーブン』と『経験値』だったけど、アストレア様は何を貰えるんだろう?



「アストレア様、中身が気になるので早く箱を開けて見て下さいよ」


「はいはい、慌てなくても開けるわよ(笑)パカッと、、、あら?」



アストレア様が宝箱を開けると、淡い青色の光が箱の中から出て来てアストレア様を包んで行き、ほどなくして何事も無く消えていった。


あの光で経験値を貰えたって事なんだろうか?



「通常のクリア報酬は経験値を与えて魔力を上昇させるんだけど、その子には魔法の素養があまり無くて経験値を与えても報酬としてはイマイチだったから、代わりにボクの加護を授けといたよ。一瞬で灰にでもならない限りは、致命傷を受けても死なないから」



へぇ~、だから俺の時もMPがめちゃめちゃ増えたのか


アストレア様にドラゴンの加護を与えて、アストレア様の安全が確保されるのであれば、それはとても嬉しい♪


とても嬉しいのだが


アストレア様とドラゴンの加護の組み合わせは、なんだかとっても危険な匂いがするのは俺の気のせいか?



「シエーネさん、素敵な報酬をありがとうございます。さてと、浮島も堪能した事だし、そろそろ帰りましょうか。遅くなるとスミレちゃんが寂しがりそうだわ」


「そうですね、直ぐに帰りましょう!」


「ふふっ、相変わらずシンさんはスミレちゃんの事になると過保護なんだから(笑)」



アストレア様には軽く笑われてしまったけれど、スミレに寂しい思いなど、俺がさせん!




「ねぇねぇ、ナガクラくん。ボクも一緒に行っちゃ駄目かな?ナガクラくんの家族にも挨拶したいしさ」


「そういう事なら歓迎しますよ。我が家のみんなも喜ぶと思います。」


「それとこれからはボクもナガクラくんの家を拠点にしたいなぁ、ヨウコさんはナガクラくん達と一緒に住んでるんだよね?ボクも一緒に住めば、ヨウコさんと役割分担も出来て色々と役立つと思うよ」



「シエーネさんだけなら良いですけど、他の神獣の皆さんも私の家に住むとか言われると流石に困るのですが(汗)」


「うーん、ナガクラくんに興味を持ってる神獣も居るけど、人には興味無くて数百年眠りっぱなしの神獣も居るから、、、 まぁボク達以外でナガクラくんと住みたいって言いそうなのは、麒麟くらいじゃないかな?」


「確かに麒麟さんなら言いそうですね。ただし麒麟さんの居る第五の試練はここから遠いので、ナガクラ様と会う機会は当分無いかと」



ここに来て新たに知る新事実、第五の試練を担当しているのは麒麟さんなのか


神獣に関してはヨウコさんに聞けば教えてくれるだろうけど、俺は神獣と会う必要性を感じて無いから知る必要も無いだろう。



「神獣の事は一応解決という事で、そろそろ帰りましょう。シエーネさんは人の姿のままで飛んで行けますか?」


「流石に人の姿のままでは飛べないけど、落下スピードを遅くする事は出来るから心配しないで良いよ」


「了解です。じゃあ皆さんにハーネスとパラシュートを装着するので、それぞれ近くに寄って下さいね、、、はい、装着。」



収納からそのまま直で装着出来るこの技はいつやっても便利だねぇ♪



「そしたら、しゅっぱー」『トントン』



ん?


誰かに肩をトントンされたから振り向くと、、、



「ゴレさん?!」



ゴレさん達ゴーレムは言葉を話せないから意思疏通が難しいんだけど、流石に今は別れの挨拶をしたいって事なのかな?



「、、、ん?もしかしてゴレさん達も一緒に来るつもり?」



ゴレさんは言葉を発してはいないけど、なんとなくゴレさんの言いたい事が分かってしまった。


そしてゴレさん以外のゴーレム達も全員が嬉しそうに顔を縦に振ってるから正解なのだろう。



「うーん、ゴーレムが街に来るのは色々と問題が、、、え?、、おおっ!」



俺が困った顔をするとゴレさん達の体が急に小さくなって、あっという間に10センチくらいの大きさのフィギュアのようになってしまった。



「ふふふっ、ゴレさん達も頑張って練習してたからねぇ。その大きさなら石に擬態して門番が出来るから問題無いと思うんだけどなぁ」



おぅふ


シエーネさんが我が子を心配するような表情をして俺を見ている


くっ!


さっきから俺の足下でちょこまか動いているゴレさん達を見たら、可愛過ぎて断れる訳ねぇーよ!!



「メリルもゴレさんに会いたがってたし、一緒に行こう♪あっ、浮島が留守になるのは良いんですか?」


「転移で直ぐに戻れるから問題は無いけど、ゴレさん達がローテーションを組むらしいよ」



どうやら『ベーやん』と『ゼタ丸』の2体が最初の留守番らしい


元の大きさに戻った2体が少し寂しそうな表情で俺に手を振っている。


くっ!


たぶん明日にはまた会えるとはいえ、別れというのは毎回寂しいなぁ(泣)


とりあえずゴレさん達には背負い袋に入って貰って



「ベーやん、ゼタ丸、我が家に来たら一緒にリバーシで勝負しような!それじゃあ、改めてしゅっぱーつ!」



風を受けて浮き上がり浮島から離れて行くパラシュート


振り向くと、ベーやんとゼタ丸が元気に手を振ってくれている。



「ベーやーん!ゼタ丸ー!ほなまた明日ぁ~♪」






つづく。

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