閑話 王都ベルチカ駐在貴族秘密集会 その2

side:???



「おい、誰だあんなに使えん奴等を集めたのは!」


「何を言うか、上手く行かなくてもゴミが減るだけで我等に損は無いと言ったのは貴様だろうが!」


「ゴミがどうなろうと構わんが、報告ではキャラバンシティの門にすら辿り着けずに全滅したと聞いている。これではわざわざ武器を用意した意味も無いではないか!」



「2人ともいったん落ち着かれよ。賊共が全滅したのは、ピスケスとアリエスが広域殲滅魔法を使ったからだとの報告もある。」


「ワシの調べでは王国の盾サダルスウド侯爵も居たらしい。まぁ今回は運が無かったな、王国の牙であるレオ男爵が居なかっただけマシであろう。」



「ちょっと待て!保守派の重鎮サダルスウド侯爵と鷹派筆頭のレオ男爵は旧知の仲、加えてアストレアの実兄は中立派筆頭のライブラ公爵なのだぞ!


キャラバンシティに限定しているかもしれんが、中立派、保守派、鷹派が実質手を組んだという事ではないのか?」


「「「「「ッ?!」」」」」



「こっ、ここは冷静になろう。鷹派貴族がそう簡単に他派と手を組むとは思えん、不干渉を約束するのがせいぜいのはず。保守派はどうだ?」


「サダルスウド侯爵以外に目立った動きは無い。中立派は相変わらず馬鹿な貴族共の排除に積極的なようだが」


「うーむ、ならばサダルスウド侯爵は個人的に動いているだけか?」



「いずれにしろ情報不足だ。やはりここはキャラバンシティに部下を定住させて、じっくり調べる他ないか」



『コンコンコン』



「ん?」


「誰か来たみたいだが、今日の集会の参加予定は他にも居たのか?」


「いや、今日の参加予定者はここに居る者で全部だ。」


「「「「「・・・」」」」」



『コンコンコン』


「ちわーっす。御注文のピザをお届けに参りましたー♪」


「「「「「ぴざ?」」」」」




◇ ◇ ◇



side:とある暗部のリーダー



まったく王都の馬鹿共は余計な事をしてくれる!


ライブラ公爵の調べによってキャラバンシティを襲おうとした賊共の中に、王都ベルチカに駐在している貴族の手下が紛れ込んでいた事が判明


そいつらは池田屋商会会長、アストレア様、オリビエ様の3人を亡き者にするように命令を受けていたんだ。


そのせいでせっかくリーダー権限で池田屋商会の配送夫になって池田屋商会会長の監視をする任務に着いたのに、雇い主から王都に行って即刻馬鹿共を捕まえろと命令が来やがった。


雇い主の命令には逆らえないので俺は渋々部下を連れて王都まで来ると、馬鹿共の居る場所に向かっている


お陰でおやつのピザは食いそびれるし、潜入任務も別の奴に引き継ぐ事になっちまった(悲)


だがしかし


俺はまだ希望を捨てちゃいねぇ!


池田屋商会の配送夫は大人気だからな、暗部のメンバー間で次に誰が行くかで常に揉めてるんだ。


配送夫は人数を増やす計画もあるし、俺が戻るまで後任が決まらない可能性は充分にある!


幸いにも今回は池田屋商会見廻組2番隊から、諜報活動が得意な隊員が2人も同行してくれている。


何故暗部の作戦に見廻組が協力してくれているのかって?


そりゃあ諜報活動が得意な2人だからな、俺達暗部が潜入している事も即バレたからだ!


まぁ任務の目的が、池田屋商会会長にちょっかいを出す馬鹿が居たら雇い主に報告するってだけだったから、配送夫の仕事を頑張る事を条件に見逃して貰っている。



「えっと、王都西地区4ー17にあるパン屋の地下に今回の黒幕が集まってるのは分かりましたけど、キャラバンシティに居る2人がどうやって調べたんですか?」


「「ホイップとクリームです。」」


「は?」


「今回は極秘任務と聞きましたので、私達2人のコードネームを考えました。私がホイップで」


「私がクリームです。」


「「2人合わせてホイップクリームです。どうぞよろしく!」」


「あっ、はい、よろしくお願いします。」



「今回の黒幕の居場所を調べた方法は教えられませんが、創造神様以外で祈りを捧げるなら狐様がお勧めです♪」



見廻組の2人がふざけてるのかどうか俺には分からないし、何処にでも居そうな街娘にしか見えんのに


俺達暗部のメンバーが束になっても敵わないってんだから、この2人の存在だけでも池田屋商会の恐ろしさが分かるってもんだ。


更に


王都の馬鹿共を捕まえるように命令を受けた直後、見廻組の2人から馬鹿共の居場所の情報提供があった。


いったいどうやって調べたのか謎ばかりだが、今回の任務が終われば狐様に祈りを捧げようと思う。


おっと


考え事をしながら歩いていたらパン屋の前に到着だ。


扉には『閉店中』と書かれた木札がかけられていて店内に人は居ないようなので、サクッと鍵を壊して地下室の扉の前まで行くと中から声が聞こえる


どうやら今回の企てが失敗した事で揉めているっぽい



「あの、突入前に質問なのですが、ピザの配送夫に成りすまして声をかける意味はあるのですか?」


「「おやつのピザを食べられませんでした!」」



怖い怖い怖い怖いっ


2人の目が怖過ぎる!


確かに俺もピザを食いそびれたから怒る気持ちも分かるけどさぁ、今からミノタウロスの巣に突入するような目をしないで欲しい(汗)


さっさと突入して任務を終わらせないと俺の精神が持たん!



『コンコンコン』


・・・


扉をノックすると中からの声がピタリと止んだが扉を開ける気配は無い


俺は目だけで見廻組の2人にどうするか問うと、もう一度ノックしろと指示が来た。



『コンコンコン』


「ちわーっす。御注文のピザをお届けに参りましたー♪」


「「「「「ぴざ?」」」」」



おっ?


まさか『ピザ』に反応するとは思わなかったが、声の感じから護衛は居ないと判断する。



「突入しますか?」


「その前に通気口から唐辛子スプレーを投げ入れます。せーのっ」



カコン、カランコロン、、プシューーーーーーーーーーー!



「「「「「ぐあぁーーー!!」」」」」


ドンドンドンッ!


「開けてくれぇー!」「げぼっ、ごほぉっ」「しっ、死ぬっ(汗)」「そこに誰か居るんだろぉー?だずげでぐれぇ~(泣)」



いつの間にか見廻組の2人が扉を押さえて開かないようにしている


華奢に見えて力も凄いんですね


これもう俺達必要無いよね?



その後


中からの声が聞こえなくなるまで見廻組の2人が扉を開ける事は無かった、、、


俺は誓う


見廻組の皆さんに声をかける時はおやつの時間は絶対に避けると!



◇ ◇ ◇



side:ヨウコ



ズッ、ズズー


はぁ~、緑茶が美味しい♪


先程


神獣仲間のフェ兄やんから、王都にて良からぬ事を企てて居た者達が捕まったと報告が来ました。


所詮は自らが動かずに楽をしようとしていたお馬鹿さんやから、心配はしてませんでしたけど


情報を教えた見廻組の2人に何かあると、ナガクラ様が悲しまれますからね


王都周辺はフェ兄やんの担当地域やから任せた方が早いんですけど、私達神獣が直接手を出すのは創造神様が嫌がるので仕方ありません。


お馬鹿さん達はまだまだ居るみたいやし、フェ兄やんには情報収集を頑張って貰わんとね!


さてと


私は緑茶を楽しみつつ、お母さん特製の水羊羹を食べようっと♪


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