閑話 王国十二家中立派・緊急通信集会

side:レヴァティ・フォン・ピスケス



「ピスケス伯爵からわざわざ通信の魔道具を使っての緊急の連絡とは珍しいな、しかもタウラス子爵にアリエス辺境伯も揃っているとは、やはりキャラバンシティ関連か?」


「はい、今回の事は皆様に早急にお知らせして情報の共有をすべきと判断致しました。」



私がわざわざ通信の魔道具を使い、ライブラ公爵とタウラス子爵に緊急の連絡をしたのは、ドワーフから興味深い情報を得たからだ。



現在私は池田屋商会会長であるシン殿の結婚式に出席する為に、キャラバンシティに滞在中なのだが


運の悪い事に結婚式当日である今日の昼間に、賊共が街を襲撃に来てしまった。


まぁ賊共はアリエス辺境伯と協力して難無く排除したので問題は無いのだが、問題はその後だった。


排除した賊共が持っていた武器や鎧を安く譲って欲しいとドワーフ達が言うので、賊の死体を片付ける事を条件に無料で譲る事にした。


戻って来たドワーフ達が言うには、賊共が持っていた武器と鎧のほとんどが、ハイドロス子爵領で作られた物だと言う


私では武器を見ただけでは何処で作られた物かは分からないが


使われている金属が同じ鉱山で採掘された物である事と、ハイドロス子爵領にあるドワーフの鍛冶工房で作られた武器が混ざっていた事で分かったらしい


キャラバンシティを襲撃に来た賊の数は約300人、それだけの人数が仲良く一緒に武器を調達したとは思えん


そこで私の部下に命じて、息のある賊を拷問して聞き出したところ


数日前にキャラバンシティの近くで襲った馬車に積まれていた武器だと言うではないか


武器商人の馬車を襲ったにしては廃棄寸前の使い古した武器ばかりか、見習いが練習で作ったような物もかなり混ざっていたらしい


何故そんな物をわざわざ馬車に積んでいた?


廃棄寸前で鉄屑同然の武器など鍛冶屋しか欲しがらんと言うのにだ


何処かの馬鹿が何かを企んでいるにしても決定的な証拠は無い、だがこのまま指をくわえて見ている訳にもいかん


賊の狙いは池田屋商会に保管されている金貨や銀貨が目当てだったらしいが、賊に扮した暗殺者がシン殿を亡き者にしようとした可能性はあるのだからな!



「皆の意見が聞きたい、先ずはタウラス子爵から」



考えを巡らせているとライブラ公爵が話を進めるようにタウラス子爵を促す。



「はっ!いかに池田屋商会が儲かっているとはいえ、常識的に考えて300人の賊で山分け出来るほどの金があると考えたとは思えません。他にも目的があったのでは?」


「うむ、アリエス辺境伯はどう思う?」


「はっ!賊の数を考えれば裏で糸を引いている人物が居るのは明白です。

そして現在のキャラバンシティは、ドワーフのお陰で街を囲む石壁や門の強度が跳ね上がっていますから、あの程度の賊など門を閉じて矢を射るだけで殲滅出来ます。


賊共を使い捨てにしてこちらの出方を探るにしてもお粗末過ぎる作戦と言えますし、裏で糸を引いているのはキャラバンシティの現状をよく知らない人物と思われます。


したがって、王都に駐在している文治派貴族辺りが怪しいかと。」



ふむふむ


アリエス辺境伯の言うように、今のキャラバンシティを賊に襲わせるなど愚策にも程がある


王都の騎士団を連れて来て、それでやっと池田屋商会の見廻組に対抗出来るかどうかだろう。


だがそんな事も知らないとなると、王都に引きこもっている馬鹿共しか考えられん。



「レヴァティ伯爵はどう思う?」


「はっ!アリエス辺境伯の言う通りかと思われます。しかし確たる証拠がありませんので、犯人の特定は難しいかと」


「それだけの情報があれば充分だ、あとは生きている賊を何人か寄越してくれればこちらで始末をつけよう。皆も忙しい時にご苦労だった。


おっと!忘れる所であった、アストレアに伝言を頼む。たまには王都にも顔を出すようにとな、では通信を終わる。」



プツン・・・



「ふぅー、久し振りにライブラ公爵と話して緊張したぁー(汗)今なら貴族の相手を嫌がるナガクラ君の気持ちも分かるよ(笑)」


「それはアリエス辺境伯が国境警備を理由に定期集会を欠席しておるからではないのか?」


「そっ、そそそそそんな事は無いよ!実際に国境警備は大事な役目だし(汗)それよりも、ライブラ公爵に任せて良いのかな?」


「問題は無かろう。ライブラ公爵のユニークスキルで全てが明らかになるはずだからな」


「ライブラ公爵のユニークスキルって、質問した相手の答えが真実かどうかが分かるってやつでしょ?法の番人に相応しいスキルだよね♪まぁ今回に限ればナガクラ君にお願いして、創造神様に聞いて貰えば早いと思うけど」


「それは悪手だな、王都が消えて無くなると困るのは我等なのだから」


「あぁ~、それは困るね。この事はナガクラ君に話すの?」


「いや、念の為にヨウコさんにだけは話すが、シン殿には余計な事を考えず心穏やかに過ごして貰うのが1番だろう。ヨウコさんを神獣だと紹介された時は、腰が抜けそうなほどに驚いたがな(笑)」


「あはははは、ナガクラ君ってそういう人だからねぇ♪さあ、早く戻らないと夕食に遅れちゃうよ。今日の料理はお藤さんが気合いを入れて作ったらしいから」


「ほぉほぉ、それは楽しみだ♪お藤殿の料理が毎日食べられるなら、爵位を返上して移住してくるのも有りかもしれん」


「えぇー?!ピスケス伯爵それは駄目だよ、私だって移住したいんだから!」


「冗談なのだからそんなに怒るな(笑)だが待てよ、他の十二家の者にお藤殿の料理を食べさせれば、十二家が集まる事も可能なのでは?」


「うーん、料理で派閥の壁を乗り越えられちゃったら、今までの私達の苦労っていったい、、、」


「サダルスウド侯爵もシン殿の酒を気に入ったからこそ、こちら側に協力的なのだから構わんさ」


「まっ、ナガクラ君と関わるといつもこんな感じだしね」


「ふふっ」


「くくっ」


「「あははははははは♪」」


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