第398話 2人目

「ふぅー、緊張する(汗)」


「ふふっ、旦那様はシンさんがどういう人かある程度理解されているから、普段通り商会に来たお客さんを相手にするくらいに思って良いわよ」


「そう言われましても、王国十二家のピスケス伯爵なんですから緊張しますって!」


「そこは慣れて貰うしか無いわね(笑)」



はぁ~


アストレア様と話をしたお陰で少しだけ緊張もほぐれたけど、今日はついにアストレア様の旦那様


レヴァティ・フォン・ピスケス伯爵が来られるから池田屋商会の応接室で待っている。


アストレア様の旦那様だから無茶な事は言われないだろうし、馬鹿な貴族の排除にも積極的らしいから俺との利害も一致するって事で


いつものように料理とお酒で仲良くなり、王国十二家からステフ様に続いて2人目の仲間になって貰わないと困る!



バルゴ王国は王都を中心に色々とややこしい事になってるらしいから、万が一の時には直ぐに助けてくれるように


王国十二家から六家以上を仲間にしておかないと安心して旅に行けないんだよ。


六家仲間に出来たらちょうど半数になるから、何が起きても『負け』は無いと思うんだよな。




『コンコン、ガチャ』


「失礼します。レヴァティ・フォン・ピスケス伯爵をお連れしました。」


「失礼する」



応接室に入って来たのは身長180センチくらいの精悍な顔付きの男性で、服を着ているから断言は出来ないけど、おそらく細マッチョだろうと予想する。


アイルランド系イギリス人っぽい見た目も相まって、もしジェントルマンの教科書が存在すれば1ページ目の見開きにドーンと、紳士のお手本として写真が載りそうな雰囲気がある♪


しかし


レヴァティ様の年齢は36歳って聞いてるけど、重鎮オーラが凄くて直視出来ん(汗)



思い出したけど、ゲオルグ様も初対面の時は圧が凄くて怖かった


今ではお酒好きな気の良い親戚のおっちゃんみたいだけどな(笑)


さてと、大事な初対面の挨拶をしますか!



「初めまして、私が池田屋商会会長のシン・ナガクラと申します。レヴァティ伯爵の御尊顔を拝し恐悦至極に存じます!」


「シン殿、初対面で気軽に接する事が難しいのは理解するが、あまり形式に拘らずとも良いぞ。今回はこちらが招待して頂いた立場なのだからな」



正確に言うと俺より先にアストレア様がレヴァティ様を結婚式に招待しちゃったから、俺が招待した訳では無いんだけど細かい事は気にしないでおこう。



「うふふ、シンさんと気軽に話せる仲になるにはそれなり以上の努力が必要なのよ旦那様♪」


「それは当然の事と理解しているが、サダルスウド侯爵やアリエス辺境伯と親交があると聞いていたから、伯爵の私なら問題無いと思っていたのだがなぁ(悲)」



あれれ?


レヴァティ様が落ち込んでしまった(汗)


俺もよく「自分の立場を理解して下さい!」って商会の従業員に怒られるけど


レヴァティ様も御自分の立場を理解してよぉー


とは言え、このままではよろしく無い!



「レヴァティ様、なんか御期待に添えなくてすんません!王国十二家なら王族でも簡単には手が出せないって聞いたんで、初対面の印象を良くして『友』みたいな仲になれれば良いなぁって思惑だったんですけど、裏目に出てしまいましたかね?」


「ん?」「あらあらあら♪」


「くくっ、、ふははっ、あはははははははははははははは♪」



レヴァティ様が爆笑してるけど、アストレア様も笑ってるから問題は無いだろう。



「あぁー、腹が痛い♪これほど笑ったのは久し振りだよ。まさかここまでの本音をブチ撒けられるとは思わなかった(笑)だが、悪くないぞシン殿!」


「大切な人達を守る為にはピスケス伯爵の協力が必要不可欠ですので」


「うむ、既にピスケス伯爵家は池田屋商会を守る立場にあるが、貴族でも何でもないただのレヴァティとしても、シン殿の力になると約束しよう!」


「こちらこそ、私に出来る事であれば何時でも力になります!」


『ガシッ!』



俺とレヴァティ様はガッチリと固い握手を交わした。



「シン殿、さっそくで悪いが浮島に居るドラゴンというのは会話が可能なのだろうか?」



ん?


また突然の質問だな。


浮島に居るドラゴンさんの事は報告書には写真だけ載せて、詳しい事は一切書いて無かったはず。


レヴァティ様の質問の意図がよく分からな、、、


ちょっと待てよ


アストレア様って馬鹿な貴族を排除するのに、ドラゴンブレスを使いたいとか言ってたよな(汗)


俺はレヴァティ様に目線だけで


『ドラゴンが来ると不味いですか?』


と問うと


『来るのは構わないが、可能ならドラゴンブレスだけは止めて欲しい!』


とレヴァティ様から返答が来た。


『了解です!』


『ガシッ!』



この瞬間、俺とレヴァティ様はお互いの心と心でガッチリと固い握手を交わした。



「あら、殿方同士で見つめ合って何か楽しい事でも考えているのかしら?」


「いっ、いや、、、そう!シン殿とはこれから仲良くやっていけそうだなと、そう思っただけだぞ!なぁ、シン殿?」


「えっ?!、ええ、そうなんですよアストレア様!レヴァティ様とは気が合いそうだなと思いまして、せっかくですから商会を案内しますよレヴァティ様」


「おおっ!それは良いな、これからの為にも色々と知っておくのは必要だろうからな!さぁ、行こうかシン殿!」


「喜んで!」


「少し気になる所もあるけれど、旦那様とシンさんが仲良くなれて嬉しいわ♪」



部屋を出てレヴァティ様と目が合うと、お互い静かに頷く事で確信する


レヴァティ・フォン・ピスケス伯爵


王国十二家から


俺に2人目の仲間が誕生した瞬間だった。






つづく。

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