第369話 しゅわしゅわしか勝たん♪

商会でドーナツの試食を終えた後も、皆と色々話し合っていたらすっかり日が暮れてしまった


我が家に帰って晩ご飯を食べたいところだけど、今日はオリビエさん達を製麺所の地下室に招待しているからご飯もそっちで食べる予定だ



我が家のみんなと一緒に居られないのは少し寂しいけれど、ニィナが一緒だからまあ良いか♪



そんな感じでニィナと一緒に製麺所の前でオリビエさん達が来るのを仲良く待っているんだけど、、、


なんだか最近ニィナとの物理的な距離が近くなっているのは、俺の気のせいではないと思う


今も俺の左腕をガッチリ掴んで離してくれないし(汗)



「なぁニィナ、すこーしだけ距離が近い気がするんだけど」


「嫌なのでしょうか?」


「えっと、嫌とかそういうのは全然無いから!」


「ではこのままで♪」




瞳をウルウルさせながら見つめられたら何も言えませんやん


メリルとの結婚を決めた事が関係してるとは思うんだけど、恋愛レベルが中2のおっさんには解決策は何も思い付かんです(悲)




「おーい、シンさーん!」



あっ!


なんだか気まずい雰囲気になりそうなところでオリビエさん達が来てくれて助かった♪


それにしても、オリビエさん、ジャックさん、親方の3人とも仲良くウィスキーの瓶を大事そうに抱えて歩く姿はなかなかにシュールだよ(笑)



「皆さんこんばんは、わざわざウィスキー持って来たんですね」


「勿論よ!シンさんにはお酒を美味しく飲む方法を沢山教えて貰ったお陰で、この『ジャック』と『ジョニー』のウィスキーはじっくりと味わって飲むのが最高に美味しいと判断したの♪」


「まあ何を美味しいと思うかはそれぞれで違うでしょうから、色々試して下さい。


それじゃあ行きましょうか」




『ガチャッ』



製麺所内にある入口の扉を開けて地下室に向かう



「ほぉ~、地下室にはワインを運び込む時に入ったが、こちら側から入るのは初めてじゃな」


「ねぇシンさん、私は未だに旦那とクソジジイを地下室に入れるのは反対なのだけど」


「誰がクソジジイだ小娘!シン殿が良いと言うんじゃから問題無いじゃろ」




また始まっちゃったよ、父娘喧嘩はほどほどにして欲しい




「ジャックさんの言う通り問題はありませんよ、それに隠すほどの物も無いですから」


「そう言われても、シンさんは自分の価値を理解してない所があるから心配なのよ」


「そこはご自分の目で確かめて下さい、ではどうぞ」



『ガチャ』



地下室の隅に作られたドアを開けると中は8畳ほどの広さの空間があり


熟成中の梅酒、ウィスキー、塩辛、生ハム、レンネット培養装置、等々が置いてありほぼ俺の趣味部屋みたいになってる


レンネットの培養は断念したけど、将来的には自家製レンネットでチーズを作りたいから


日本語で求人広告を出したら、菌に詳しい転生者が来てくれたりするんじゃないかと考えてみたりしている(笑)




「こっ、ここが池田屋商会の秘密が詰まっとる部屋か!」


「親方よく見て下さいよ、生ハムも梅酒も出した事ありますよね?塩辛はまだだったかもですけど、まぁどれも秘密にするほどの物では無いですよ。


俺が趣味でやってるだけですから、その証拠に商会では取り扱ってませんし」



「生ハムはピザに乗ってたな!売らんのか?」


「売るほどありませんよ、趣味で作ってるだけなんですから」


「勿体無いのう、生ハムは最高に酒に合うというのに」



ふふっ


良い歳の大人が揃って、天井から吊るされた生ハムを悲しげに見上げる光景というのはシュールだねぇ(笑)



「そんな事より今日はオリビエさんのお祝いですからね、新しいウィスキーの飲み方を試して貰おうと招待したんですよ♪」


「「「なっ?!」」」


「まっ、まだウィスキーに飲み方があるの?」


「ドワーフにはちょっと物足りない飲み方になるかもしれませんけどね。ニィナ悪いけどつまみ用に生ハムをスライスしてくれる?」


「お任せを!」



今回の飲み方はズバリ『ハイボール』だ!


グラスに氷と炭酸水とウィスキーを入れて混ぜるだけのお手軽な飲み方になる


つまみは生ハムだけだと寂しいから『ハイボール』に合う料理だと


スモークチーズとスモークサーモンと


お藤お母さんが作ってくれた唐揚げが良いな





「皆さんお待たせしました『ハイボール』です♪」


「ビールみたいにしゅわしゅわしとるな」


「炭酸水って言う水を入れてるんですよ、炭酸水は自然に湧き出す所もあるんですけど魔法でも作れないか検討中ですね


ウィスキーを薄めてるんで少し勿体無い気もしますけど、安物のウィスキーならこういう飲み方が良いかなと思うのと


1杯目は何も考えずグビグビ飲みたいじゃないですか♪」



「確かにウィスキーを薄めるのはちと勿体無いが、ウィスキーに氷を入れて飲むのが旨い事はお前さんのお陰で知っておるからな、後は炭酸水とやらがどうなるか」


「さっそく飲みますか、それじゃあ」


「「「「「かんぱい♪」」」」」



さてさて皆さんの反応はどうかな?


オリビエさん達が『ハイボール』をいっきに飲み干すのは分かるけど


ニィナも当たり前のようにジョッキを空にするんだもんなぁ、何気にドワーフ並に酒好きだったりするのかな?




「ふふっ」「くくっ」「ぶっ」


「あははははは♪」「ふははははは♪」「ぶわぁっはっはっはっはっはっ♪」



ありゃりゃ?


『ハイボール』を飲み干したオリビエさん、ジャックさん、親方が何故か大爆笑しているのだが、、、



「しゅわしゅわするだけでこうも味わいが変わるとは思わんかったぞ!」


「これは炭酸水の作り方も確立させんといかんのう」



「シンさん大好きよぉー♪」


『ぎゅうぅぅ♪』



はーい、俺もオリビエさんが好きですよぉー♪


今は秋だからなのかいつもの花畑じゃなくて、綺麗に紅葉した山の景色が見える気がするぅー♪






つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る