第368話 会長として

「それじゃあ次はニックとスナックの新作だな」


「待ってまたした!今回のはかなり自信あるんだ、さあアニキ食べてくれ!」



ニックのやつ今回は随分と張り切ってるなぁ♪


皆に配られたのはドーナツだけど明らかに今までのと色が違うな、匂いはどうかなっと


スンスン、、、へぇ~、なるほどこうきたか


今回は変化球攻めってところかな(笑)




「ほぉほぉ、このドーナツは生地に紅茶の葉を混ぜているのですね、良い匂いです♪」


「ゲッ!」「わあっ!」


「アニキには直ぐバレるかもって覚悟してたけど、アルさんにもバレるなんて」



あらら


ニックとスナックが凄い落ち込んでるけど、さすがに匂いで紅茶だってのは直ぐ分かる



「ニックとスナックも落ち込むなって、バレるかバレないかは問題じゃないんだからさ


それじゃあいただきます」


「「「「「いただきまーす」」」」」




あーんっ、、もぐもぐもぐもぐ


やはり生地に紅茶の葉が混ぜられてるだけあって香りは良い♪


ただ、申し訳無いが俺はそれほど紅茶が好きって訳じゃない


だから味も普通っていう感想しか出て来ないんだよなぁ(笑)



「アニキ味はどうかな?」


「旨いよ、でも好き嫌いは別れるかもな」


「そうなのか?」



ニックよ、捨てられた小犬のように悲しげな顔で俺を見るんじゃあないよ(汗)


評価は忖度無しできちんとしないとニックとスナックの為にならんからしょうがないんだ


とにかく他の皆の意見も聞かないとな



「アンさんはどうですか?」


「私は凄く好きです♪香りが良いですし甘過ぎないから何個も食べれそうです。」



「ミーナとスージィーはどう?」


「うーん、香りは良いですけど少し強いかもです」


「ミー姉さんの言う通り獣人には少し匂いが強過ぎかなって思う」



へぇ~、鼻が良い犬耳の獣人じゃなくても匂いには敏感なのか


まだまだ知らない事がいっぱいあるんだなぁ



「アルはどう思う?」


「とても美味しいですよ♪ですが、そもそも紅茶が苦手という方はけっこういますから、販売するなら紅茶の葉が入っている事は説明する必要があるでしょうね」



「はぁ~、今回のは自信あったのになぁ(悲)」


「残念だったね兄ちゃん」




「おいおい、ニックにスナック何をそんなに落ち込んでんだよ!」


「「っ?!」」


「でも紅茶の葉入りのドーナツは駄目なんだろ?」


「誰も駄目なんて言ってないでしょうが!そもそも100人中100人に美味しいって言ってもらえる甘味を作るなんて、俺でも至難の業だからな」


「アニキの作る甘味を美味しく無いって言ってるやつなんて居ないだろ」



「正直にそんな事を言うと俺に喧嘩を売るみないになるから言えないだけだよ、甘味が苦手なやつはそもそも食べないしな


ニックとスナックは何を考えてこのドーナツを作ったんだ?」


「「え?」」



「何をってそりゃあ紅茶の香りがしたら美味しいだろうなって考えてだけど」



「スナックはどうなんだ?」


「甘味は砂糖の甘い香りがするものばかりだから、紅茶の香りがする甘味は目立って沢山買って貰えるかなぁって」



「なるほど、2人のその考えはとても良いと思う。だがしかし、食べる相手の事を考えていないのは駄目だな


まあ自然と考えていたのかもしれんけど、紅茶の葉を入れたドーナツが紅茶好きに好評なのは当然の結果だ。


でも紅茶が苦手な人や匂いに敏感な獣人に微妙な反応をされるのもまた当然の結果なんじゃないか?


微妙な反応をされたからって理由も考えず落ち込むんじゃあないよ」




さすがにここまで言えば2人も理解したかな?


おっさんには若者の指導は難易度が高いんだよ(汗)



「しかしなんだね、あんたはニックとスナックにいやに厳しいじゃないか♪」



なんかよく分からんけど女将さんは謎に嬉しそうだな、それはまあ良いとして



「女将さん、それは当然ですよ。ニックとスナックには俺が仕事を教えてやるって偉そうに言って雇ったんですから


そんじょそこらの商人に負けないようにしてやんなきゃ、ニックとスナックに申し訳無いじゃないですか」


「「アニキ♪」」



ニックとスナックよ、無いはずの尻尾がブンブン振れてるのが見えるかのように嬉しそうな顔で俺を見つめるんじゃあ無い!



「とにかく、紅茶の葉入りドーナツは採用決定!後日新しいドーナツ教えてやるから、明日からも頑張れよ!」



「ヤベェー!やる気を出したご主人様めちゃ格好良いんだけど!」


「スージィー、ご主人様はいつでも格好良いです!」



ミーナにスージィー、恥ずかしいから皆が居る前でそういう事は言わないで欲しい




「ほぉほぉほぉほぉ♪ニック君とスナック君がシンさんにそれほどの期待をされていたとは、これは池田屋商会を1日でも早く王国で1番の商会にする為に、私もこれまで以上に励まねばなりませんね!」



「あのっ、会長!私達ももっと何かした方が良いでしょうか?」


「大丈夫だから!ライラとアリアは牛の調子を見ながらマイペースに今まで通り頑張ってくれれば良いから」



ふぅ~(汗)


やる気のある従業員ばかりなのはとても嬉しいけれど、俺の何気無い一言でとんでもない事になりそうだから


マジで気をつけないといかんな。






つづく。

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