第344話 日本刀
第九の試練を担当している『狐』さんに案内されて、山の頂上にある屋敷にやって来た。
頂上が見えないくらい長かった石階段も、狐さんのチカラで短距離転移?みたいな感じで10段ほどに短縮されたからあっという間だったよ♪
ちなみに
狐さんが階段を下りて来た時に階段を短縮しなかったのは、俺が帰るって言ったから焦ってそれどころではなかったらしい
どんだけ俺に会いたいねん!
こういう時はだいたい面倒事が待ってるっていうのがテンプレだよ(悲)
今さら帰れないし気を取り直して
案内された屋敷はお察しの通り、立派な日本家屋ではあったけど玄関から見える景色は完全に旅館やな!
揃いの着物を着た狐耳の仲居さん達に出迎えられるし
広いロビーに受付カウンターもあって、寛ぎスペースとしてソファとテーブルが置いてあるし
屋敷の奥に見える壁はガラス張りになっていて、綺麗に手入れされた中庭が見える。
浮島のドラゴンさんの所とは比べ物にならないくらいの快適空間♪
まあドラゴンさんは人の姿になれなくて人化の魔法を練習してる最中だから、人用の屋敷では快適に暮らせなかったのかもしれん
「さあさあ皆さん、ここで靴を脱いでスリッパに履き替えて下さいねぇ」
我が家のみんなは和式の玄関も土足禁止もスリッパも初体験だから説明が要るかなと思ったけど
凄く自然に靴を脱いでスリッパに履き替えている
良くも悪くも俺と一緒に暮らしてる影響でこの程度は直ぐに順応するようになったか
いちいち説明しなくても良いのは楽だけど、少しだけ寂しい気持ちになるのは何故なんだろうな
「ねぇおにいちゃん、これって氷で出来てる訳じゃ無いよね?」
『コンコン』
「お嬢、これ全然冷たくないよ!ガラスかな?」
狐さんを先頭に中庭の見える廊下を歩いていたら、ガラスの壁にみんなが驚いている
ニィナもカスミもそっとガラスを触って確かめてるし
スミレは息で曇るガラスを不思議そうに見ているし
ガラスにはみんな驚くのね(笑)
瓶以外のガラスを使った品を見る機会はほぼ無いし、こんなに大きくて透明な板状のガラスがあるなんて想像も出来ないのかもしれんけど
旅館のように立派な屋敷とか狐耳の仲居さん達とか、他にも驚く所は色々あると思うのだが
俺にはみんなの驚く基準がイマイチ分からんです。
「それでは皆さん、この部屋で少々お待ち下さいね。私はお茶を持って来ますから。」
「「「「「「はーい」」」」」」
狐さんに案内されたのは枯山水の石庭が見える10畳ほどの部屋で畳の良い匂いがする♪
座椅子に座って寛いでいたら床の間に掛け軸が飾られているのに気付いた
『我求油揚』と書かれているけど座右の銘だろうか?
「皆様お待たせ致しましたぁ~。お茶請けが桃しか無いんですけど宜しいですか?」
「ええ、構いませんよ。それじゃあみんな、頂こうか」
「「「「「いただきまーす」」」」」
「頂きます。ズズッ、、、旨い♪」
お茶に詳しく無いけど凄く良いお茶のような気がする、煎茶かな?
玉露じゃ無い事は分かるんだけどなぁ(笑)
「お茶のお味はいかがですか?茶葉はドラゴンさんから貰って来た物ですから、美味しいと思うんですけど」
「凄く美味しいですよ、ちなみにドラゴンさんって言うと浮島のドラゴンさんですか?」
「そうそう♪皆さんが浮島から帰らはった後にお茶の栽培を始めたらしいですよ」
そう言えば、ゴーレムのゴレさんが無線機の定期連絡でお茶の栽培を始めたって言ってたなぁ
秋にはまた浮島でキャラバンシティの近くに来てくれる事になってるから、今から会うのが楽しみだよ♪
「ところでケイトさん!」
「えっ?!あっ、はい、なんですか(汗)」
ふふっ、ケイトが焦ってる姿は珍しい♪
「改めまして、ケイトさん先程は大変失礼致しました。」
「本当に大した怪我じゃなかったからもう良いよ」
「そういう訳にはまいりません。ケイトさんは剣士とお見受けしましたので、喜んで頂けそうな品をお持ちしました。どうぞお好きなのを選んで下さい」
「スゲェー!」
ケイトが驚くのも当然だろう
狐さんが取り出したのは大小様々な日本刀だったからだ
良いなぁ~、俺も1本欲しい!
おそらく実在の名刀をそのまんま模した物だろうから、元世界では失われてしまった刀もあるのかもしれん
俺が知ってるのは超有名な『三日月宗近』『童子切安綱』『長曽祢虎鉄』『和泉守兼定』くらいだ
ケイトの戦闘スタイルだと日本刀は合わないと思うけど剣士なら興味はあるだろ
ケイトが刀を選んだら、料理を対価にして俺も1本貰えないか聞いてみようっと♪
つづく。
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