第331話 オーク討伐作戦と帰って来たトラサンダー

夜明けまで1時間を切り、地平線がうっすら白み始めた頃


俺達3人はサウスビーチの近くにある山の中で準備を始める。



昨夜遅くにこっそり侯爵邸を抜け出し、パラシュートを使ってオークの集落がありそうな場所の上空を飛び回り


ニィナとケイトの気配察知のスキルを使ってようやくオークの集落を見つけた所だ。



オークの集落から風下に約1キロ離れた場所から双眼鏡を覗いて様子を見る



「白虎さん、集落の様子はどうだ?」


「はっ!見張りが1匹いますが動きはありません!」


「なぁダンナ」


「黒虎さん、私はダンナでは無い!さすらいの虎獣人、赤虎さんだ」


「赤虎さん、わざわざトラサンダーになる意味あるの?」


「勿論だよ黒虎さん、私の知り合いであるシン殿がオークを討伐している所を見られると騒ぎになってしまうからね


我々が彼に替わってオークを討伐せねばならない」




そう!


俺達3人はプロレスで使う虎マスクを被ってトラサンダーになっている


俺は赤虎


ニィナは白虎


ケイトは黒虎


サウスビーチの平和は私が守ってみせる!





「まあダンナの事情はよく分かんないけど、これからどうするの?奇襲するなら今だと思うけど」


「ちなみにキングとジェネラルは強いのか?」


「どれくらい知恵を付けているかによるかな、1対1なら問題無く倒せるけど罠を張ってたり、伏兵を用意してる可能性があるから


考え無しに突っ込むと騎士団でも一瞬で全滅する事も有り得るよ」


「マジで?!これは思ったより厄介だな(汗)」



とりあえず俺は双眼鏡を使ってオークの集落を見て考える事にした


オークの集落には木造の小屋が10個あり、白虎さんが言っていたように見張りと思われる1匹のオークが小屋の周りをウロウロ歩いているのが見える


他のオークは小屋の中で寝ているのか全く動きが無い


見張りのオークの大きさを考えると1個の小屋の中で寝れるのは3匹くらいが限界だろう、最大で30匹居ると考えた場合


俺達3人ではちょっとしんどいよなぁ



「赤虎殿、ここはキングかジェネラルだけを倒して即離脱するか、1匹ずつ倒して確実に数を減らすしか無いと愚考致します。」


「やっぱその2択になるよな。黒虎さん、あそこに拐われた女性が居る可能性は?」


「可能性だけならあるよ。街の外に出てそのまま帰らない奴なんて幾らでも居るし、1人暮らしの奴が突然居なくなっても誰も気にしないからね」



あぁ~、忘れがちだけどやっぱりここは厳しい世界なんだなぁ(汗)


そんな事よりも、居るかどうか分からない女性の為に危険は冒せ無い


ここは安全第一でキングかジェネラルだけを倒す作戦で行こう!



「白虎さん、黒虎さん、もう少し近付いてキングかジェネラルを誘き出すぞ!」


「はっ!」「あいよ!」




オークの集落まであと450メートルの地点までやって来た


俺は収納からオークを討伐する為の武器を取り出す



「出でよ、ゲパードM1対物ライフル!」


「わっ?!なっ、なんだよソレ?」


「ふっふっふっ、こんな時の為に用意しておいた遠距離攻撃用の魔道具だ!」



『ゲパードM1対物ライフル』は以前俺が試しに作った、魔法と科学の融合兵器だ!【第74話、魔法と科学。参照】


俺が魔法で作った氷の弾丸を撃ち出す為の物で最大射程は約500メートル


はっきり言ってこんなデカい銃である必要は全く無い


例えば


火縄銃でもデリンジャーでも威力はあまり変わらないと思うけど、雰囲気は大事!


この武器を作った時、一緒に居たニィナは試射も見て威力も知っているからなのか、凄く満足そうな顔をしている(笑)



「とにかくダンナのソレがあればここから攻撃出来るって事だよね?」


「おう、適当に撃ちまくっても良いけど、小屋の中に拐われた女性が居たら大変だからな、ケイトにはコレでオークを脅かして貰う」


「何コレ?」


「火を付けたら音を出して飛んでいく道具だな、脅かすのにはちょうど良いだろ。難点は飛距離が短いから更に近づかなきゃ行けない事だけど」


「それなら任せてよ!オークは動きが遅いから離れてさえ居れば危険は少ないから」



俺がケイトに渡したのはロケット花火だ、殺傷力は無いけどオークの知能が高いなら敵襲だと思って何かしら行動を起こすはず



「ケイト、無線機も持って行ってくれ、連絡取り合ってタイミングを合わせたいからな」


「あいよ~、それじゃあ行って来ま~す♪」



相変わらず近所を散歩しに行くみたいなノリなんだからなぁ


ケイトの準備が出来るまで、オークに狙撃ポイントを知られないように迷彩ネットでも張っておきますか





つづく。


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