第320話 お助け重箱シリーズ・大人のおつまみ重箱篇

「んぐんぐんぐ、ぷはぁっ♪豚カツとカレーとビールの組み合わせは最高だな、教えてくれてありがとうケイトさん!」


「えへへ~♪」



何故かゲオルグ様とケイトが意気投合して、ビールをグビグビ飲みながら豚カツにカレーをかけてバクバク食べている


楽しんでくれているなら良いんだけど、酔っぱらう前にゲオルグ様には色々と確認しなきゃいけないことがあるんだよ




「えぇーっと、ゲオルグ様、お楽しみ中の所申し訳無いんですが確認したい事があるので良いですか?」


「そう言えば酒を飲みに来ただけでは無かったな、何を確認するのだ?」


「サウスビーチでは塩作りが盛んですよね?」


「まぁ海沿いの街だからな、だが他と比べて特別な物では無いぞ」


「構いません、私が欲しいのは塩を作る時に出来る『にがり』と呼んでいる苦い液体ですから。


海水を煮て塩を作る方法だと出来ると思うんですけど、どうですか?」


「うーむ、ワシも作り方までは詳しくは知らんからなぁ


だが、良い塩を作るには薪が大量に必要だから薪を確保する為の人手が欲しい、という要望書は以前見た記憶がある。おそらく海水を煮る為だろう


それでどんな料理に使うんだ?」



「今回は『カマボコ』や『つみれ』のような加工食品ですので、様々な料理に使えると思います。


大豆とにがりで豆腐と言う物が作れるんですけど、大豆は安く手に入りますよね?」


「大豆は家畜のエサだから安く手に入るが、完成品の予想が全く出来んな」


「完成品は大豆と言われなければ分からない見た目ですからね。今回はたまたま酒のつまみ用に料理を持って来てたんで食べてみて下さい。よいしょっと」


「あっ!ダンナそれってお母さんの重箱だよね?」


「おう、だから期待して良いぞ♪」


「やったぁーーーー♪」



ふっふっふっ


ケイトのテンションが一瞬で爆上げしたのも当然だ


俺が収納から取り出したのは旅に出る前に、お藤お母さんが持たせてくれた物だからな



題して


『お母さんのお助け重箱シリーズ』から今回は


『大人のおつまみ重箱』をチョイス!



パカッと蓋を開けると、熱々の揚げ出し豆腐♪


そして別容器に入れられた熱々のあんかけ出汁もあるんだ


偶然ではあるけど、ゲオルグ様に豆腐の美味しさを知って貰うにはちょうど良い♪


勿論、冷や奴と厚揚げも食べて貰わないとな



「ゲオルグ様、これが大豆から作った『豆腐』に衣を付けて油で揚げた物です。1度すり潰した大豆を絞って『にがり』で固めました。」


「液体で固めるとは益々よく分からんが、スンスン♪旨そうなのは間違い無い!


ではひとくち、あーん、、あちちっ!、はふはふ、はふはふ、旨い!」



ふふっ、お母さんの料理は俺の作った料理より断然旨いからな、ゲオルグ様の胃袋もガッチリ掴んだぜ(笑)



「ダンナァ、豆腐には米の冷酒が合うと思うんだけど」


「熱燗じゃなくて冷酒で良いのか?」


「少し悩むけど今日は冷酒が良い♪」


「あいよ~、でも熱燗欲しくなったら言ってくれ、今日はケイトに喜んで貰う為の飲み会だからな」


「うん♪」



「ゲオルグ様も1杯どうぞ」


『トクトクトクトクトク』


「では頂こう、んぐんぐんぐ、ふぅ~♪


これは危険だ!すっと喉を通って行くから飲み過ぎてしまうぞ♪」



ゲオルグ様の感想はもっともだな、今日の日本酒はケイトの為に用意した、かなりお高いやつなんだ


俺も飲んでからあまりの美味しさに驚いてるくらいだよ(笑)



『コンコンコン』


おや?


誰か来たらしい



「入れ」


『ガチャ』


「失礼しますお父様、まだお仕事中ですか?、、、あら♪ナガクラ様もいらしたのですね、ナガクラ様の下着とっても着心地が良いんです♪ご覧になりますか?」


「マリーナ、そういう事はシン殿を自分の部屋に招いてしなさい」


「分かりましたわお父様、それではナガクラ様には日を改めてお部屋に招待しますね♪」



部屋にやって来たゲオルグ様の長女マリーナ様に、いきなりとんでもない事をサラッと言われたのだけど


おーいマリーナ様のお父さーん!


嫁入り前の娘におかしなアドバイスしないで、親なら止めなさいよ!



「それでマリーナはワシに何か用か?」


「用というほどではありませんけれど、部屋の明かりが見えましたからまだお仕事をされているならお手伝いをと思っただけです。


それで、とても美味しそうな料理を召し上がっているみたいですけど、お母様はご存知なのですか?」


「そっ、それは、、、(汗)」



あっ?!


これはアカンやつや、ゲオルグ様の顔色が分かりやすく悪くなっている


今すぐどうにかしなければ!



「えぇーっと、これはですねマリーナ様、、、」


「ねぇダンナ、せっかくだからマリーナ様にも味見して貰ったら?」



むむっ


ケイトが何やらウィンクで合図をしているけど


なるほど♪



「マリーナ様、これはソレイユ様に喜んで貰う為のお酒の試飲会なのですよ。せっかくなのでマリーナ様も一緒に試飲しませんか?」


「よろしいのですか?!」


「勿論です!是非ともマリーナ様の意見が聞きたいですから、その代わりソレイユ様には内緒で」


「かしこまりました。そういう事でしたら、是非お願いします!」



ほっ


とりあえずゲオルグ様の危機は回避出来たけど、、、


俺の隣に座ったマリーナ様がすっごいグイグイ距離を縮めて来るんだが(汗)


ゲオルグ様は危機を脱したからか、ケイトと改めて乾杯して飲み直してるし


これって、今度は俺がピンチなのでは?






つづく。

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