第313話 少女の想いとおっさんの決断
静かに怒りの炎を燃やし走るニィナを追いかけてやって来たのは
『つくね串』を売っていたクレアという少女が住んでいるらしい街外れのスラム街
この場所を教えてくれた屋台のおっちゃんによると、ジロサブロウという名の父親と2人で暮らしているらしい
そして、借金取りが常に張り付いているから近寄らない方が良いと、走り去る俺達の背中に向かってアドバイスをくれた
親切にありがとうおっちゃん!
だがしかし
既に走り出したニィナを止める術は俺には無いし、止める気も無い!
ニィナが怒ってる理由は借金が原因で父親が奴隷墜ちした場合、連帯責任でクレアという少女も奴隷墜ちするかもしれないからだ
娘を奴隷墜ちにするような情けない父親が許せないんだろう。
連帯責任の適用範囲は残りの借金の額や今までの返済金額を元に判断され、最悪の場合一族郎党を含め全員が奴隷墜ちする事もありえる
忘れがちだけどニィナも奴隷だ、子供のうちに奴隷になるかもしれないクレアという少女を放っておけないのかもしれない。
クレアという少女がスラム街の海側に住んでいるのは教えて貰ったけど
俺の目の前には薄い板と板を釘で繋げて四方を囲っただけの壁に、屋根の代わりにボロボロの布をかけただけの簡素な家がズラッと並んでいて
もはや住宅街と呼んでも良いくらいの数がある。
気温の高いサウスビーチだから、たまに降る雨さえしのげればこれで充分なのかもしれないけど数が多過ぎる
さすがに1軒ずつ調べるのは時間がなぁ
「やめて、はなして!あんな人は父さんなんかじゃないもん!」
「誰が見てもお嬢ちゃんのパパだろう、困るんだよねぇお嬢ちゃんのパパが借金返してくれないと、おじさん達も生活出来ないんだよ」
「何も俺達は手荒な真似をしようってんじゃない、ただ借金を返して欲しいだけなんだよ。でも借金を返してくれるならお嬢ちゃんでも良いんだよ♪
今なら安心安全で信用出来る娼館で働けるよ?でも奴隷になったら誰に買われるんだろうねぇ♪」
「主様、あの2人を冥府に送っても良いですか?もしくは生きたまま地獄を見せて差し上げた方が良いでしょうか?」
「えぇーっと、それするとあの子に迷惑がかかるから止めとこうか(汗)」
「ぐぬぬぬ!」
ほっ
とりあえずここで血の雨が降るのは止められたようだ(汗)
借金取りと思われる2人組に絡まれているのは、昨日『つくね串』を売っていた少女に間違いない
そしてニィナが怒っているのも理解はする
理解はするけど
でもなぁ、あんな借金取りでも凄く紳士的な部類なんだよ
借金が返せず奴隷墜ちがほぼ確定している状況まで来ると、借金のカタに子供を連れ去って無理矢理働かせたり売ったりするのは、悲しい事に合法だ
むしろ借金を返さない事は立派な犯罪だから、今からあの2人組がクレアという子を連れ去ったとしても俺にはどうする事も出来ない
下手に手を出すと逆に俺が犯罪者になってしまう。
無償で他人を助けてやる優しさなんて俺には無い!
無いんだけど、ニィナの怒りを収める為であればこの場をどうにかするくらいは仕方あるまい
あくまでも『ニィナの為』だから仕方ないんだ!
「こんにちは~、お取り込み中の所すみません」
「ああん?取り込み中だって分かってるなら邪魔だから消えな」
「そういう訳にも行かないんですよ、私もその子に用がありまして順番譲って貰えませんか?」
「ああ良いぜ、あんたがこの子の借金を全部返してくれるんならなぁ♪どうせそんな気は無いんだろ?ならとっとと帰ってママのご飯でも食べてろよ」
「主様に向かってその口の聞き方、、、貴様らぁーー!!」
「ひぃぃぃ(汗)なっ、なんだよ俺達は何も違法な事はしてないぜ!文句があるなら領主様にでも言うんだな」
本当にゲオルグ様に文句を言ってここに来て貰う事も可能なんだけど、その間にニィナによって借金取りの男達がどうなるかは俺にも分からん(汗)
「ニィナ大丈夫だから。連れがすいませんねぇ、コレで許して下さい。」
俺は借金取りの2人に大銀貨を1枚ずつ無理矢理握らせる
「「なっ?!」」
「後で返せって言っても返さねぇぞ!」
「そんな事は言いませんよ、それと2人とも今日は疲れたでしょう?コレで酒場でも行って下さいよ♪」
俺は借金取りの2人にもう1枚ずつ大銀貨を握らせる
「てめぇ何を企んでやがる!」
「ニィナ、2人がお帰りだからお見送りしてあげて」
「はい♪」
「「ひっ!!」」
「きょっ、きょうのとととところは、俺達も忙しいから順番を譲ってやるよ(汗)」
ニィナの素敵な笑顔が見れて借金取りの2人はラッキーだなぁ♪
ニィナの笑顔が見れてよほど嬉しかったのか、2人で仲良く全力疾走して帰るんだもの(笑)
さてと
これからクレアという子と話をしなきゃいけないんだけど
今までのやり取りを見て完全にビビって腰を抜かしてしまっている
ちゃんと話を聞いてくれるだろうか?
つづく。
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