第304話 タコヤー・K・エモンズ
屋台で売ってた『焼きハマグリ』や『サザエのつぼ焼き』の誘惑に負けそうになったり
美味しそうな匂いのする屋台の前を通る度に、ウルウルした目で俺を見て来るケイトとスミレを時間が無いからと心を鬼にしてスルーしたり
俺が金持ちだと見抜いて色仕掛けをして来る客引きのお姉さんに少しだけ
本当に少しだけ足を止めてしまいそうになったけれど
そんな時は
メリルには手を引かれ、カスミには背中を押され、ニィナには素敵な笑顔で見つめられ(汗)
なんやかんやとあったけど、みんなでワイワイ歩きながら浜辺に到着した。
浜辺に到着してまず目に入ったのはとても大きくて立派な簀立(すだ)て、それが10個もある
今は干潮の時間だから浜辺から1キロくらい先まで水深約1メートルの遠浅の海が続いている
そこに等間隔で簀立てが作られていてなかなかの見応えだ♪
「くしゅんっ!」
ありゃ?
スミレがくしゃみしてるよ
「スミレ大丈夫か?」
「うん、でも、、、変な匂い?」
変な匂いか(笑)1年前に来た時はそれほどでも無かったけど、あの時よりかなり磯の香りが強いんだよなぁ
気温が高いせいかな?
「ねぇダンナァ、エビフライの海老ってサウスエビで良いの?」
「それでも良いけど、出来れば別の海老が欲しいんだよな」
「別の海老かぁ、じゃあ天ぷらの海老はエビフライに出来る?」
「天ぷらに使う海老が居るなら最高だけど、海老の捕り方は知らないんだよなぁ」
「分かった!あたし今から探して来るよ」
「ちょっと待てケイト!さすがにここで勝手に海老捕るのは駄目じゃね?」
「以前来た時は自由に捕って良かったんだし大丈夫じゃない?」
「でもなぁ」
「ご主人さま、エビフライ食べられないの?」
ぐはぁっ!
もう何回目だよスミレのウルウルした目を見るのは
「スミレ、あまり主様を困らせてはいけません」
「、、、はい」
あぁ~、スミレの耳がぺしょんとしちゃったよ、確かにどうやって海老を捕るのか分からないから困ってはいるんだけど
いざとなれば、車海老だろうとブラックタイガーだろうとスキルの「店」で買って、たくさんエビフライ作るから落ち込まんでええねんで
伊勢海老みたいなサウスエビでエビフライを作っても美味しいとは思う、ただ皮肉な事にエビフライにするにはサウスエビは大き過ぎるんだよな
わざわざ食べやすいサイズにカットしてエビフライにするのも何か違う気がするし、多様性のある食文化の為には色々な種類の海老が欲しい!
「スミレ、俺は全然困ってへんから大丈夫やでぇ」
「うん♪」
「おい!お前達そこで何をしている」
耳がぺしょんとしてしまったスミレを元気付ける為に、スミレの頭をワシャワシャしていたら冒険者風の男に声をかけられた
「えぇーと、何をしてるでも無いですけど、もうすぐ簀立て漁が始まる頃かと思って見てるだけですよ」
「そうか、簀立て漁の事を知ってるなら分かっているとは思うが、ここは侯爵様が管理されている場所だ、見るのは構わんが簀立てには触る事も近付く事も禁止されている、許可無く魚貝を捕る事も禁止されているから気を付けろよ」
おおっ!
ゲオルグ様は俺のアドバイスを聞いてちゃんと管理してくれていたか。
魚貝類は限りある資源だから、捕り過ぎないように管理して対策しておかないと取り返しのつかない事になってしまうからな
「おーい、シンさーん!」
おや?
街の方から浜辺にやって来る、よく日に焼けた筋肉ムキムキな男達の中の1人が俺の名前を呼んでいるけれど
俺にマッチョマンの知り合いは居ないから無視して良いかな?
「ねぇ、おにいちゃんの事呼んでるけど良いの?」
「メリル静かに!知らない人に声をかけられたら返事しちゃいけません」
「やっぱりシンさんじゃないですか、今日サウスビーチに到着されたのですか?」
むむっ?
俺達の所に来たマッチョ集団の親玉らしき奴が親しげに話かけて来るんだが、1度見たら忘れないような見た目をしているのに全く心当たりが無、、、
「もしかして、タコヤーさん?!」
「そうですけど、、、あっ!もしかして以前会った時より日に焼けて分かりませんでしたか?」
「えぇ、夏の間に随分と日に焼けて、更にマッチョになったんですね」
何故かマッチョ集団の親玉になっていたのはエモンズ商会の後継ぎ
タコヤー・K・エモンズさん
現会長は親父さんのマスヤー・K・エモンズさんで
マスヤーさんと初めて会った時は色々とハプニングもあり、俺はマスヤーさんの事を
『ますやー・き・えもんず』から『桝屋喜右衛門(ますやきえもん)』だと思って
これは絶対に俺と浅からぬ因縁の相手になるに違い無い!と勝手に考えていたのは今では良い思い出だよ(笑)
結果として息子さんのタコヤーさんと仲良くなって、エモンズ商会とも良い関係を築けているんだから人生何がきっかけになるか分からんもんだな。
タコヤーさんは数ヵ月おきに魚貝類をキャラバンシティに持って来てくれていて、以前俺がタコヤーさんに会ったのも雨期が終わった直後だから約2ヶ月前だ
その時も少し日に焼けてはいたけど中肉中背で、普通の青年という感じだったはずなのに夏の間にいったい何が、、、
つづく。
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