第286話 ステファニーの思惑
「ステフ様、お疲れ様でした。スカウトはどうでした?」
「ばっちりだよ♪3人というか3ヶ所というか、生産者の住んでる集落ごと召し抱えたいって言ったら皆喜んでたよ。
何処も村と呼べないくらいに小さな集落で、自分達で食べる為に小量作ってただけだから売り物では無かったんだけど
これからは辺境伯家で全部買い取るって言ったら、命をかけて生産量を増やすって張り切ってたけど本当に美味しい料理になるの?」
「勿論ですよ、簡単に作れる物から手の込んだ物まで色々あるんで後で選んで下さい」
俺は今、梅干し、豆板醤、ピクルスの生産者をスカウトに行って帰って来たステフ様と会っている
帰りは夜になるって聞いていたけどスカウトの話が予想以上にスムーズに進んで、予定より早く日暮れ前に帰って来れたらしい。
そして俺もこの時間までぼぅーっと1日を過ごしていた訳ではない
朝食を終えてセルジオのとっつぁんと別れたあとは、掘り出し物はないかと街を観光していたんだ
収穫は無かったけどな(悲)
鍛冶屋と武器防具を扱う店が多くてそこで働いてるドワーフも数人見かけたから、何か良い商品があるんじゃないかと思ってたんだけど
そもそも俺は武器も防具も必要として無かったよ、それでもナイフぐらい買おうかと思ったら
ガゼル親方の工房で働いてるドワーフと比べると、大分腕が落ちるってケイトが言ってたから益々買う意味が無くなってしまった。
食べ物に関しても、梅干しのような掘り出し物があるんじゃないかと探したら、凄く臭い発酵食品らしき謎の食べ物はあった
でも臭い食品は無理だぁー(泣)
申し訳ないが俺は納豆とかピータンとか、その他匂いのキツい食べ物はことごとく駄目なんだよ。
何処かの偉い人が報酬を出すから匂いのキツい発酵食品でレシピを考えてくれって言って来たら、スキルの「店」で購入しておいた
『世界の発酵食品レシピ特集』というタイトルの雑誌から似た物を提供するつもりだ、他に2~3個レシピを無料でプレゼントするからこれで勘弁して貰おう。
「それでさナガクラ君、さっき聞いたんだけどウチの料理長を引き抜くのは止めて欲しいなぁ」
「あぁ~、少し誤解がありますね、セルジオさんを引き抜いた訳ではなくて、池田屋商会で料理の講習会をする時は参加して良いですよって話ですから」
「どちらにしても料理長が長期間留守にするのは困るんだよね、セルジオも許可してくれないなら腹を斬るとか言ってるしさぁ」
「デスヨネー(汗)そう言われるだろうと思ってましたから、私が出発するまでに料理の基礎は教えるつもりです、少なくともレシピを見て再現出来るようにはしますから
あとは、私が送迎をしますので池田屋商会に料理の研修に来るってどうですか?2泊3日くらいなら留守にしても問題無いかなと思うんですけど」
「それくらいだったら構わないけど、キャラバンシティまでは早馬で頑張っても片道2日はかかるよね?」
「そこは早く移動出来る魔道具がありますから大丈夫です。」
「何それ?!気になるなぁ~、そんなに早く移動出来る魔道具って気になるなぁ~♪」
「今日はもう日が暮れてしまいますから明日にでも見せますよ」
「やったぁー♪約束だよナガクラ君!」
「はいはい」
まったくそんなに良い笑顔をされたら普通に好きになっちゃうよ。恋愛感情とは全然違うベクトルの好きだけどな(笑)
「おっと、忘れる所だったよ、メイド一同からナガクラ君を『総料理長』もしくは『甘味長』として辺境伯家で召し抱えて欲しいって嘆願書を貰ったよ♪」
「は?、、、ちょっと意味がわからないんですが」
「うーん、そのリアクションは私の所で働きたいからやった訳ではなかったんだね、残念(笑)」
「全然残念そうに見えないんですけどー!」
「あはははは、ごめんごめん、朝食の時に料理とお菓子作ったんでしょ?それを皆気に入ったみたいで毎日食べたいって事だと思うよ
でもナガクラ君は姉様と仲が良いしキャラバンシティが拠点だからね、召し抱えるのは難しいってちゃんと断っておいたから安心していいよ
その代わり、他家よりナガクラ君から贈り物をされる機会は多いからって説得したから、美味しい料理とお菓子を期待してるよ♪」
「えぇーと、それは命令でしょうか?」
「まさかぁ~、そんな事しないよ、私とナガクラ君の仲じゃん♪
池田屋商会とその関係者にちょっかいを出そうとする貴族のお馬鹿さん達はこれからも出来るだけこっちでなんとかするから、お互い友として助け合おうよ♪」
「馬鹿な貴族についてはとても感謝していますので、ありがとうございます。しかし、、、狙いは最初から私が扱う料理や菓子だったのですか?」
「えへへ♪流石にナガクラ君と友になれるかは分からなくて不安だったけど、これでも私はアリエス辺境伯家の当主だからね
優先すべきは領民であり領地なんだよ、それらを守る為には私が常に全力を出せる最高の環境が必要なんだけど
それには辺境伯家で働く人達の頑張りが無くては有り得ない、その働きに報いてはあげたいけど領民からの税で生活してる立場としては、安易に褒美を出したり賃金を増やす訳にも行かなくてさ
でもこれからは美味しい料理とお菓子で仕事のモチベーションも上がるだろうし、ついでにナガクラ君と仲良くなった私に対しての好感度も上がるしで
ナガクラ君には本当に感謝してるんだよ♪」
おおっ!
どうやら俺は最初からステフ様の掌で転がされていたようだ、伊達に王国十二家の一角を担っている訳ではないという事か
騙したりとかそういうのは無かったから全然良いけどな♪
でもちょっと待てよ
腹の探り合いとか苦手そうな武闘派のステフ様にさえ簡単に掌で転がされたっていうのに、貴族同士の騙し騙され腹の探り合いに慣れた奴が相手だと
俺はいいように使われて絞り尽くされるんじゃなかろうか?
中立派の貴族ならそこまで心配は無いと思うけど・・・
まっ、まあ今回の旅の目的だった王国十二家から1人目の仲間は作れたし
ステフ様とはなんとなく気が合いそうだから、これからは気軽に相談出来る仲になれそうだ
仲間を通り越して『友』になれたのは予想外だったけど結果オーライ!
それじゃ次
行ってみよう!
つづく。
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