第280話 ハニートラップ?

「あははははは、そんなに落ち込まなくても大丈夫だよナガクラ君、お連れの皆さんには黙っておくから


それに健康な男なら普通の反応なんだからさ♪」



ぐすん


お婿に行けなくなったらどうするんだ(泣)





アリエス辺境伯に見事勝利した後、砂まみれだった俺は執事のケーニッヒさんに担がれ風呂に連行されてしまった


脱衣場に着くと、待ち構えていたメイドさん3人によって一瞬で服を脱がされ


何故か一緒に服を脱いで裸になったメイドさん達に浴室に連れて行かれ、身体の隅々まで洗われてしまった(照)


俺も男なので、若くて綺麗な裸のメイドさんが3人も居たらそりゃあ・・・ゲフンッゲフンッ!





アリエス辺境伯はアストレア様と仲が良いだけあって、風呂場には俺がスキルの「店」で購入してアストレア様に売った値段のお高いシャンプー、リンス、石鹸が置いてあったよ


色々な意味で心と身体がスッキリした俺は現在、アリエス辺境伯と一緒に入浴中です。



当然だけど俺もアリエス辺境伯もすっ裸なのだが、この国の貴族が他人に裸を見られる事に恥じらうどころか、むしろ『自慢の身体を見て貰いたい!』という考えなのには慣れたよ


江戸時代の風呂屋は混浴が普通だったとか聞いた事があるし、これは合法的なラッキースケベという事で気持ちを切り替えて行こう!




「ふふっ、どうやら元気が出てきたみたいだね♪それでねさっきの続きなんだけど、どんな技だったのか教えて欲しいんだよね、徒手空拳の奥義だったなら無理にとは言わないけど、どうかな?」


「教えるのは構いませんが、先程アリエス辺境伯に使った技は奥義などという大袈裟な物ではなくただの投げ技です、無手での格闘術という事にはなるのでしょうけど」


「えぇー?!あんなに一瞬で空が見えたのに奥義じゃないの?」


「ええ、残念ながら初心者が最初に習う技の1つです。ただし、アリエス辺境伯が繰り出した『突き』の勢いを利用させて頂きましたので、通常の投げ技よりスピードはありましたけど」


「という事は、本気の『突き』を出したから負けたって事?」


「今回はたまたまアリエス辺境伯が投げ技が来る事を予想されていませんでしたから、完全に不意を突く事が出来ました。


それより、剣の素人相手に本気出すとか何考えてるんですか!直撃してたら大怪我してましたからね!」


「無事だったんだからそんなに怒らないでよ、お詫びも兼ねてのお風呂なんだからさ♪」




くっ!


脳筋体質の無邪気さんだと油断していたが、意外と気遣いも出来る人だったか


お詫びのお風呂は、、、まあ色々な意味でありがとうございました。




「ステファニー様、そろそろお時間です。」


「もうそんな時間なんだ、悪いんだけどお先に失礼するよ。ナガクラ君はゆっくりしてて良いから、それとこれからはステフって呼んでよ、ナガクラ君とは辺境伯としてではなく、ただのステファニーとして仲良くしたいから


最初に名乗る時も爵位は言わないように気をつけたんだから、偉いでしょ!えっへん♪」



いやいやいや、色んな所が丸見えのまま「えっへん♪」て胸張られても反応に困るぅー(汗)


こんな人に国境の防衛を任せてこの国は大丈夫なのか?という不安はあるけれど、ペトルーシュカ様の話じゃ王国十二家の現当主達は稀代の英雄と呼ばれるような方ばかりらしいんだよな


ホンマかいな!


俺の目の前で裸のまま自信満々に胸を張るアリエス辺境伯を見てると、どう考えても仕事が出来るタイプには見えないんだが


優秀だからこそ仕事とプライベートはちゃんと切り替えるタイプなのかもしれない


そして今はプライベートな時間だと信じよう。



「それではこれからはステフ様、と呼ばせて頂きます。」


「うーん、もう少し気軽に話して欲しいんだけど、今日会ったばかりだししょうがないか。


夕食の時間までゆっくりしててよ、邸の中も自由に見て良いからさ、それじゃあまたあとでねぇ~♪」



ほっ


いきなり勝負する事になった時は焦ったけど、それなりに好感度は上げられたはず


あとは辺境伯領にある食材を使って、美味しい料理とお菓子が作れればミッションコプリートだ!



『ちゃぽん、ちゃぽん、ちゃぽん』



ん?


お湯に浸かりながら色々考えてたら、身体を隅々まで洗ってくれた3人のメイドさんが入って来た


当然だけど裸のままで、これはいったい



「ナガクラ様、お湯加減はいかがでしょうか?」


「ちょっ、ちょうど良いです。」


「それは良かったです、実はナガクラ様には直接お礼を言いたかったんです。ナガクラ様の商会が取り扱っておられるシャンプーとリンスのお陰でゴワゴワだった髪の毛が、サラサラのツヤツヤになり皆も大変喜んでおります。


メイドを代表して御礼申し上げます。」


「そうでしたか、喜んで頂けたなら良かったです。」



「特に石鹸は、今まで汗臭くて近寄るのも嫌だった兵士の皆さんも良い匂いに変わったんです♪


相変わらず訓練中の昼間は臭いんですけど(泣)」



あぁ~、たぶん兵士の皆さんが臭いのは革鎧やブーツのせいもあるんだろうなぁ、元世界のようなクリーニング屋は無さそうだから臭いんだろうな


元世界だと、銅イオンが臭いの元を分解するとかで10円硬貨をブーツに入れて消臭するのは当たり前だったけど、この国にはそういう知識は無いのか?


だとしたら良い感じに加工した銅板を『イケてる兵士の必須アイテム!』とか言えば売れそうやな、加工はガゼル親方に頼めば良いし、これはまたボロ儲けの予感がしまっせ


ふははははははは♪






「ところでナガクラ様」


「あっ、はい、何でしょうか」


「シャンプー以外にも珍しい商品はお持ちなのでしょうか?」


「えぇーと、それなら保湿クリームは、、、保湿効果のある植物油があるので珍しくは」『『『むにっ』』』


「「「私、凄く気になります!」」」



おおっ!


見事にシンクロしとる


しかも、右良し!左良し!正面良し!の三方良しやで♪


ってちがーう!!


三方を取り囲まれて逃げ場無しのこの状況、これは御伽噺(おとぎばなし)にしか存在しないと言われたハニートラップなのでは?



しかしですよ、冷静に考えてこのトラップに引っ掛かって俺に不利益はあるだろうか?、、、答えは否!


美容品なんてサンプルだと言えば無料で配る事に何の問題も無い。むしろ評判が広まれば貴族にアホみたいな高値で売れるからな♪



だがしかし、今の俺の状況は超絶よろしくない


言うなれば俺はライオンに囲まれたウサギなのではなかろうか?


3人のメイドさんの目が凄く恐いです・・・


誰か助けてーーーー(泣)






つづく。

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