第281話 3つの甕
3人のメイドさんに1本ずつ手荒れにも効果のある保湿クリームをプレゼントして、どうにか無事にお風呂から解放してもらえたので
現在は我が家のみんなと案内された客人用の部屋でまったり中。
気を使ってくれたのだろう1つの部屋に人数分のベッドを置いてくれたのはありがたいんだけど
せっかくの広い部屋もベッドに占領されてしまって落ち着かないから、ベッドは全部収納に入れて夜寝る時は布団を敷く予定だ
そして夕食までゆっくりして良いと言われたけど暇過ぎる
「という訳で俺は邸の中を探検して来る!」
「ちょっ、ダンナ?!それは流石に不味いよ、勝手に邸の中を歩き回ったら怒られるって」
「勝手に他の部屋に入る訳じゃ無いし大丈夫だろ、みんなはどうする?」
「スミレも行くー♪」
「では私もお供致します。」
「あたしはパス~」
ケイトはパスで、メリルとカスミも探検には興味無しか(悲)
デカい邸があったら探検したくなるのは男の性(さが)だから仕方あるまい
「よっしゃ、スミレ、ニィナ、お宝探しにれっつらごー♪」
「「おー!」」
アリエス辺境伯家のお宝を探しに、スミレとニィナと3人で仲良く邸内を探検している♪
当然だけど本当にお宝を探してる訳では無くて、俺が探してるのは食材の貯蔵室、もしくは厨房だ
辺境伯家なら領内外から様々な食材が集まるはず、それらの中には美味しい料理やお菓子になって、将来は莫大な利益をもたらす『金の卵』となる食材があるかもしれない
だからお宝と言っても間違いでは無いだろう。
最初は誰かに聞けば直ぐに行けると思ったんだけど、何故かメイドさんにも執事さんにも誰にも出会わないので仕方無く邸内を探検している
こういう時って普通は部屋の前に誰かしら控えているものじゃないのか?そりゃあ他人の家の普通なんてそれぞれで全然違うだろうけど
だがしかし、こういう時に頼りになるのがスミレなんだぜ♪
「なぁスミレ、美味しそうなええ匂いせぇへんかな?」
「くんくん、くんくん、、、あっち!」
わぁお!
流石スミレ、ええ鼻してるで♪
「よっしゃ!俺がスミレを肩車するから匂いのする方向教えてや」
「あい!」
「れっつらごー♪」
「あっち!」
「はいさ!」
「次はこっちー!」
「ほいさ!」
「ん~、左!」
「アイアイ、マム!」
「ストップー!」
「おっとっと、スミレここ?」
「うん♪」
スミレの指示で何回か角を曲がりたどり着いた部屋の前、どうやらここが良い匂いの発生元らしい
部屋のドアを見る限り厨房では無いっぽいから、ここは食材の貯蔵室かな?
この部屋のドアには草の絵が描かれた札がかかっているから野菜室なのかもしれない
とりあえずノックしてみよう
『コンコンコン』
「・・・」
返事が無い留守のようだ
そりゃあ野菜室に誰かが常駐してるはずは無いか、勝手に入る訳にはいかんからなぁ
「おーい君達、その部屋に面白い物は何も無いぞぉ~」
声のした方を見ると、黒髪で東南アジア系っぽい雰囲気でエキゾチックな見た目の白衣を着たお姉さんがこちらに歩いて来る
年齢は、、、雰囲気だけならステフ様より確実に上だろうけど、とても綺麗なお姉さんなのは間違い無い!
「こんにちは~、ここって何の部屋なんですか?」
「そこは薬草の保管室だけど、、、もっ、もしかしてあなた様方は、ききき貴族様で御座いましたでしょうか?(汗)」
急に白衣のお姉さんが分かりやすく動揺してしまったけど、俺とニィナは海上自衛隊の制服のままだし、スミレもよそ行きの服だから貴族に間違うのも致し方無いか
「いえ、私は平民で商人をしています。アリエス辺境伯に招待されて来たのですが、夕食までの時間潰しに邸内の見学をしているところです。」
「商人が辺境伯様に招待された?むむむ、それにしては着ている服が王都の騎士団のようにも見えるし、身分を隠しての極秘会談の可能性も、、、」
白衣のお姉さんがブツブツ言って考え込んでしまった、どうやら俺の発言はまったく信用されてないらしい
そりゃあ普通の平民は貴族の邸内を歩き回ったりしないよ(笑)
「お姉さん、この部屋に入って良いですか?」
「えっと、入るのは構わないけど、君達は本当に貴族ではないの?」
「本当ですって、私は池田屋商会会長のシン・ナガクラと申します。池田屋商会の名前は聞いた事ありませんか?」
「池田屋商会は有名だから勿論知ってるけど、君がそこの会長?それが本当だとしてもステファニー様が商人を招待するとは思えないなぁ」
ぐはぁっ
確かにあの脳筋辺境伯が個人的に商人を招待するとは思えん、腹の探りあいとか嫌そうだもんな
「その辺はアリエス辺境伯に直接確かめて下さい、他にも執事のケーニッヒさんかメイドさんの中にも私の事を知ってる人はいますから」
「ケーニッヒさん?!いやっ、あっ、うん大丈夫、君達の事は信用するから!この部屋を見たいんだよね、今鍵を開けるから、、、『ガチャ』」
「お姉さんがこの部屋を管理してるんですか?」
「そうだよ、ってまだ名乗って無かったね、私はステファニー様に仕えてる薬師のヤン、平民だから気軽に話してくれて良いよ
それと、ケーニッヒさんには君達を疑った事は内緒にしといて!部屋は自由に見て良いから」
執事のケーニッヒさんはお叱り役ってところなのかな?それにしても白衣のお姉さんは薬師だったのか
「心配しなくても気にしてませんから、それよりヤン先生、薬草の保管室って事はあそこの袋から少し見えているヨモギとケールも薬になるんですか?」
「先生?!そっ、そんな偉いアレでも無いんだけどね、ふふふふふふふ♪
それにしてもヨモギはともかくケールなんてよく知ってるね」
ヤン先生、まんざらでもなさそうやな(笑)
「商人なので見る機会が多いだけですけどね、アハハハ」
「ご主人さま、あれ!」
おっと、忘れてたけど俺は美味しい匂いの元を探してたんだよ!
スミレの指差した方向を見ると蓋の付いた3つの甕(かめ)が置いてある
「ヤン先生、この甕開けて良いですか?」
「ん?、、、あぁ、その甕なら良いよ、もう用済みだしね」
それじゃあ遠慮無く開けますか
パカッ、パカッ、パカッ
こっ、これは!
つづく。
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