第279話 ステファニー・フォン・アリエス その3

さあ来い


アリエス辺境伯!



「・・・」


「・・・」


『タン、タン、タンッ!』



うぉっ?!


アリエス辺境伯が軽く足踏みしたと思ったら、3メートルの距離を一気に縮めて来た。


ひぃぃぃ(汗)


しかも結構本気の突きを繰り出して来たやん、きっちり俺の額を狙っての突き、あれは


片手平突き?!


辺境伯、あんたは新選組で突きが得意な三番隊のアイツか!


だがしかし


スピードはケイトやニィナより断然遅い、これならギリギリ避けられる!


そっちが突きなら、こっちは下段の奥義『龍飛剣』だ!


下段から擦り上げるように木剣を振ると俺は木剣を放り投げる


アリエス辺境伯のアゴに向かって飛んで行く木剣、それを見た辺境伯はなんだか残念そうな表情をしたような気がするけれど、飛んで来た木剣を難なく避ける


しかし、木剣が辺境伯の顔の前を通過したせいで一瞬だけ視界が遮られた


今だ!


アリエス辺境伯が繰り出した突きをギリギリで、、、ちょっとかすったけど(汗)突きは避けた!


俺は自分の右手を、突きを繰り出して伸びきった辺境伯の右腕目掛けて伸ばす、、、


掴んだ!


その瞬間身体を反転させて前転するように背中を丸める、これが日本のお家芸、柔道の背負い投げだ!



「うぉりぁーーーー!!」


『ドシンッ!』


「げはぁっ」



地面に落ちた瞬間に辺境伯の腹に肘を喰らわすのも忘れない


そのまま寝技に移行して辺境伯の顔に俺の腹を押し付け視界を奪う。


これぞ高校の体育の授業で1度だけ見た事がある


見よう見真似、上四方固(かみしほうがため)もどき!


口と鼻も塞がり呼吸がしずらい状態で何秒耐えられるかな?



「む゛ぅ!ん゛ぅぅぅ!」


『ダンダン、ボフッ、ボフッ』



足をジタバタさせてもがきながらも俺を殴って来るけど、踏ん張りが利かないから威力は無い、これなら充分耐えられる


ここからは我慢比べだ!



20秒ほど経った時、それまで懸命にもがいていたアリエス辺境伯が急に動かなくなった


やべぇー、気を失ったか?!



「そっ、そこまで!!勝者ナガクラ様!ステファニー様、お気を確かに(汗)」


「ぷはぁっ、ぜぇーはー、ぜぇーはー、、」



ほっ


アリエス辺境伯も無事みたいだ。直ぐに執事のケーニッヒさんが俺の勝ちを宣言してくれて良かったよ



「おにいちゃん!」


『ぎゅぅぅぅ』



ぐぇっ


メリルさん、心配だったのは分かるし抱きしめてくれるのも凄く嬉しいんだけど、首がね


首が絞まってます。



「お嬢様、そのままでは首が!」


「えっ?、あっ、ごめんおにいちゃん、大丈夫?」


「げほっ、げほっ、、大丈夫だよ。メリルの可愛い顔を近くで見れたからね♪」


「っ?!、、、もっ、もう(照)」



あらら、もう少しメリルの顔を近くで見ていたかったんだけど、照れて?横を向いてしまった



「カスミとスミレもこっちおいで」


「ご主人様!」「ご主人さま~♪」


『ぎゅぅぅ』『むにっ』


ん?


この背中に感じる柔らかい感触はニィナだな、となると残る1人はどうしよう(汗)


俺は視線だけでニィナに背中を半分空けるように訴える、、、よし!



「ケイトも来いよ」


「うん♪ダンナァ」


『むにゅ』



おぉっ、ケイトも意外と柔らかいお胸をしていたんだね♪っていうか今はこんな事をしている場合じゃない気がする


アリエス辺境伯をブン投げて寝技までかけちゃって、俺は今から庭に集まって見学していた兵士達にボコられるんじゃ(汗)



「ねぇねぇねぇねぇ、ナガクラ君!さっきの何だったの?気付いたら空が見えたんだけど♪びっくりしたなぁ、まさかナガクラ君が徒手空拳の使い手だったなんて、姉様の手紙に書いてあったけどナガクラ君は外国の生まれだったよね、あれって投げ技?外国では普通にある武術なの?それともナガクラ君のような達人だけが使えるのかな?魔法と組み合わせたら面白そうだよね♪それから、、、、」



えっ、ちょっ、何?


目をキラキラさせてテンション爆上がりしたアリエス辺境伯がスゲェー喋って来るんだが


一応周りを見てみると俺とアリエス辺境伯の勝負を見ていた兵士の皆さんは


「お前凄いな!」「構えが駄目だ!」「次は俺と勝負しろ!」「美女に囲まれて羨ましい!」とか色々言っている


1人だけポイントがズレてる奴が居るけど、概ね好意的な意見が多くて俺がボコられる事は無さそうだ



執事のケーニッヒさんとメイドの皆さんは、『またですか、やれやれ』って顔をしてるからよくある事なのだろう。



「ステファニー様、お話の続きは汗を流してからにして下さい。」


「おっと!ごめんねナガクラ君、さっきの勝負が楽しくてつい1人で盛り上がっちゃった、続きはお風呂で話すよ


お連れの皆さんには客人用のお風呂でゆっくりして貰って、夕食まで自由時間って事で、それじゃあナガクラ君、行こうか♪」


「ナガクラ様、失礼します。ふんっ」


「おわっ?!ケーニッヒさん?」


「そのまま歩かれると邸内が汚れてしまいますので」



いやいやいや、今の俺は砂まみれやけども、だからって客人を執事が担いで移動はおかしいやろ


せめてそこに居る可愛いメイドさんにしてくれよぉ、ってそんな問題とちゃうねん



我が家のみんなに助けを、、、


求めるのは無駄だって俺が1番知ってるぅー


みんな笑顔でこちらに手を振ってくれているけれど、独りにされたら寂しくて心の汗が噴き出しても知らないんだからね!






つづく。

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