第278話 ステファニー・フォン・アリエス その2

「主様、祝杯の用意をしてお待ちしております♪」


「ご主人様なら絶対勝てます!」


「ご主人さま強いもん!」


「おにいちゃんが本気を出せば、誰にも負けないんだから!」


「そっ、そうだね、みんなありがとう。頑張るよ」



みんなの応援は元気を貰えるし凄く嬉しいんだけど、プレッシャーも凄いです。



脳筋体質のアリエス辺境伯と勝負する事になってしまったので、執事のケーニッヒさんに案内された部屋で準備の最中だ。


案内された部屋には、革鎧や金属製の鎧、木剣、木槍、ムチ等々あらゆる物が用意されており、至れり尽くせりで泣けてくるよ



そして俺が選んだ武器は1番軽い短めの木剣、まあ軽いと言ってもそれなりに重量はあるから素人が簡単に扱える物ではない


鎧は着た事無いし身体が重くなるだけだから不要だ。


あとは動きやすいように海上自衛隊の陸上戦闘服に着替える。パッ、パッ、と着てる服を収納に入れてから戦闘服を出せば一瞬で着替え完了。



「ねぇダンナ」


「ちょっと待てケイト、負けたら死ぬみたいな深刻な顔をするんじゃあないよ!」



さっきからケイトが静かだと思ったら、戦地に行く恋人を見送る女性みたいな顔をしてるんだもの、今からやるのは木剣を使った勝負だっちゅーの!



「でっ、でもさぁ、今回はラウールの時とは違うんだよ、あの辺境伯はダンナの事をある程度知ったうえで勝負を持ち掛けたんだ!」


「心配してくれるのは嬉しいけど忘れたのか?俺はどんな状況だろうといつだって準備万端なんだぜ♪」


「え?」


「おにいちゃんにはアレがあるの忘れてるでしょケイト!」


「主様にアレがある限り負ける事などありません。」


「、、、あっ!!」


「ふふっ、やっと思い出したみたいだな、こんな時の為の準備と言えばアレしかない、せーの」



「「「「「「「プランB♪」」」」」」


「それなら絶対勝てるね♪ってそんなわけあるかぁーー!」


「わはははは、良いねケイト!今のノリツッコミは最高だったぞ(笑)」


「ダンナ、爆笑してる場合じゃないよ」


「まっ、勝負は時の運って言うしさ、俺のプランではアリエス辺境伯が良い人だったら8割の確率で勝てる!


もし負けても死ぬ訳じゃないんだから」



「主様、それはアリエス辺境伯が手加減するから、という意味でしょうか?」


「さて、どうかな。アリエス辺境伯は手加減はしても、わざと負ける事は絶対にしないタイプだと思う。」


「「「「「んー?」」」」」



脳筋体質の考えは常に全力投球ってのがテンプレだよな、ついでに小細工無しの真っ向勝負が大好きで、勝負の結果次第で劇的に好感度がアップするボーナスイベント付きだ♪


王国十二家のアリエス辺境伯はこの機会に絶体に好感度を上げておきたい


それらの事情を知らないみんなが揃って首をかしげてる姿はなかなか可愛い♪


写真に撮って保存しておきたいけれど、執事のケーニッヒさんが居るからカメラを使えないのが悔やまれる(悲)



さてと、そろそろ行きますか



「ケーニッヒさんお待たせしました、準備完了です。」


「かしこまりました、では参りましょう。」



最初に案内された庭に戻って来るとアリエス辺境伯は既に準備を終えて待っていた


動きやすい服に着替えていて、持ってる武器も俺と同様に木剣だけどあっちは細身の長剣だ


ここで槍かムチを選ばれてたら終わりだった、あぶねぇー(汗)



「お待たせしました、アリエス辺境伯」


「こっちは準備運動も終わって最高の状態だよ♪それより鎧は着ないのかい?」


「ええ、動きが悪くなるだけですから」


「ふふっ、剣の腕はからっきしと言いつつ鎧は要らないか、やはりナガクラ君は最高だよ!」


「そんな事で褒められても嬉しくはないですけどね。ルールの確認ですけど、魔法と故意の急所攻撃は禁止、それ以外は自由、で間違いありませんね?」


「その通りだよ」


「では始めましょうか」



3メートルほど離れてお互いに剣を構えて向かい合う


俺は下段の構え、と言ったら格好良いけど単純に木剣が重くて構えてられないだけだ、剣先も地面に付けて腕に負担をかけないようにしている



対するアリエス辺境伯は、フェンシングのような構えをしている


もし、アリエス辺境伯が俺の予想通り良い人なら小細工はしない。そして最初の一手は様子見の手加減された『突き』が来るはずなんだ、しかも額を狙って


万が一にも突き以外、例えば袈裟斬りが来たらお手上げだ、目で剣筋を追えても避けるだけの身体能力は俺には無い!


額を狙った突きならギリギリどうにかなる!剣の腕に自信があるならアリエス辺境伯もそこは承知のはず


だからこそ俺が狙うのは、アリエス辺境伯が額を狙って突きを繰り出したその一瞬のみ!



「ナガクラ君、来ないのかい?警戒しなくても先手は譲るよ」


「ご配慮感謝致します。ですが、選べるなら後手を所望します。」


「ナガクラ君がそう言うなら構わないけど、最初の攻撃はしっかり見て避けてくれよ、じゃないとがっかりしちゃうからさ」



ふぅ~、こっちはあんたと向かい合うだけで体力を消耗してるっていうのに、これだから脳筋体質は嫌になる


だけど俺も案外脳筋体質なのかもな、下手に腹の探り合いで言葉を交わすより分かり易くて良い♪



さあ来い


アリエス辺境伯!






つづく。

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