第276話 本人確認の方法
「ナガクラ様、隊長が失礼致しました。」
「いえ、隊長さんは門兵としての仕事をしただけですから、謝られるような事ではありませんよ」
「わはははは!だからいつも言ってるだろうジュリア、俺は仕事をしてるだけなのだから謝る必要など無いとな」
「はぁ~、、、隊長がそんな事を言ってるからトラブルが絶えないんですよ。このあいだもプルート男爵の護衛を裸にしてまで調べるし、あそこまでやる必要があったのですか?」
「あれは護衛の男が素直に質問に答えなかったからだろう『疑わしきは罰せよ』という暗黙の了解がある所を、疑いを晴らす為に徹底的に調べてやったに過ぎん」
「たしかに、あの護衛にも問題はあったと思います。
だからといって裸にするのはやり過ぎでしょう、あの時はプルート男爵に穏便に済ませて頂けたから良かったものの、誰かさんと私の首が斬り飛ばされてもおかしくなかったんですからね」
「う゛っ・・・」
門兵君のように己の信念を曲げずに貫き通すというのは良いとは思うけど、ケースバイケースで柔軟に対応状しないと駄目だろう
隊長という立場なら尚更だな。
「あのう、カードの確認が出来たのならもう行っても良いですか?」
「最後に質問をさせて下さい、ナガクラ様が同名の別人という可能性もゼロではありませんから」
「分かりました、質問どうぞ」
「では、ピスケス伯爵夫人アストレア様の好きな料理は何ですか?」
「は?、、、アストレア様の好きな料理ですか?」
「はい、複数回答も可能です。」
いやいや、複数回答も可能って言われてもやな、全く質問の意図が分からんけど答えるしかないか
とはいえ、アストレア様の好きな料理って言われてもちゃんと聞いた事無かったよなぁ
どちらかと言えば甘い物が好きって事しか分からんけど
「えぇーと、アストレア様の好きな料理は、おでん、カツ丼、フレンチトースト、おはぎ、でしょうか」
「隊長、いかがですか?」
「あぁ、どれも聞いた事が無い料理だ」
「私も初耳の料理ばかりです。」
「うむ、ガーデンシティ守備隊隊長ケトゥス。シン・ナガクラ殿を本人と認める」
「同じく副隊長ジュリア。シン・ナガクラ様を本人と認めます。」
「「承認!」」
待て待て待てーー!!
料理名を聞いて本人確認するっておかしいやろ、フレンチトーストの何処に俺がシン・ナガクラやという根拠があんねん!
それと門兵君、守備隊の隊長っていう事はなかなか重要な役職の人やったんやな、勝手に出世出来ないキャラ扱いしてすまん!
「ではジュリア、後は頼んだぞ」
「はっ!お待たせしましたナガクラ様、これよりガーデンシティ守備隊副隊長ジュリアが領主邸に御案内致します。」
「よろしくお願いします。」
領主邸まで歩いて行くのかと思ったら、貴族が使うような箱形の馬車に乗せられ、、、もとい!
押し込められて馬に乗ったジュリアさんの先導で街を移動中です。
外から見てる分には箱形の馬車って中はもう少し広いと思ったんだけどなぁ、向かい合わせに大人4人が座れるようにはなってるけど
目の前の人と膝が当たるから実質2人乗りだよ
そもそも俺達は6人なんだ、カスミとスミレは2人で大人1人分と考えても定員オーバーなんですけどー!
座席も直角でリクライニングなんて無いし、サスペンションも無いから乗り心地は最悪だよ(泣)
しかも中は明かり取りの為の小さな穴が開いてるだけで窓が無いから景色も見れない。
なんにしてもこれからアリエス辺境伯の邸に行くなら着替えといた方が良いな、狭い馬車の中だけど着ている服をそのまま収納に回収してから、収納に入っている服を取り出せば一瞬で着替えが完了だ♪
着ている服を回収してから新しい服を取り出すまでのコンマ何秒かの間裸になるけれど、少なくとも俺の目には一瞬で着替えたように見えるから問題は無いだろう
そしてアリエス辺境伯と会う為に着用した服は、毎度お馴染み海上自衛隊第3種夏制服だ
俺、ニィナ、ケイトの3人はパンツスタイルの幹部用制服
メリル、カスミ、スミレの3人は余所行き用の白いワンピースにしてみた
「ナガクラ様、お疲れ様でした領主邸に到着しました。」
門から10分ほどして馬車が停車し外からジュリアさんに声をかけられたので、少しドキドキしながら馬車のドアを開ける
俺達の服を見たジュリアさんが一瞬驚いたような気もするけど、ほぼノーリアクションだったのはさすがだなと思う。
既に俺達が来ると連絡が届いているのだろう、立派な邸の前には兵士が綺麗に並んでいるし、執事っぽいおじさんも俺達を出迎えるように立っているので、ちゃんと客人として扱われるようで安心する
「ナガクラ様、ようこそおいで下さいました。執事のケーニッヒと申します。案内しますのでどうぞこちらへ」
「はっ、はい」
ふぅ~
緊張するなぁ、アストレア様の話だとアリエス辺境伯は気さくな人だから緊張しなくて良いって言われたけど
無理ー!
そもそも俺は人見知りだから貴族とか関係無く、初対面の人は緊張するんだよ
あれれ?
執事のケーニッヒさんに案内されて歩いてたら、邸の扉の手前で直角に右に曲がったんですけど
俺達はいったい何処へ連れて行かれるのだろうか
なんにしてもこの流れは嫌な予感しかしないぜ(汗)
つづく。
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