第273話 商業ギルド・ケバルライ出張所 その3

さてさて、レシピ登録するお菓子は何にしようか


未だにレシピ登録してないお菓子は山ほどあるけど、手の込んだお菓子にすると俺が手本で2~3回作って見せないと誰も作れないだろうし


実際に作らせてみて細かいポイントも教えないといけなくてとても面倒な事になる、だから超簡単に作れる菓子がベストなんだけど


どうするか、、、




よし!


収納から『きなこ』を、、、駄目だな微妙な料理しかないこの国に『きなこ』が存在してるとは思えんから、ちゃんと大豆から作るか


収納から、すり鉢、すりこぎ、フライパン、カセットコンロ、大豆を取り出して



「ニィナ、フライパンで大豆を軽く煎ってからすり鉢で細かくしといて」


「かしこまりました」



本当は石臼で粉にしたいけどニィナのスピードとパワーならなんとかなるだろ



「あの、ナガクラ様、作業の途中申し訳無いのですが、これからレシピ登録する菓子を作って頂けるのですよね?」


「勿論そうですよ」


「今お連れの方が煎ってるのは大豆ですけど、家畜のエサが菓子になるのですか?」


「正確にはお菓子に必要な材料の1つ、ですけどね」


「そっ、そうですか」



戸惑うヴォルネツィオさんは放っておいて


次は砂糖だけど、ここでスキルの「店」で購入した真っ白な砂糖を出すと騒ぎになりそうだから



「ヴォルネツィオさん、砂糖が欲しいんですけど」


「砂糖ならお任せ下さい!、、、よっと、これでいかがでしょう?」



おおっ!


ヴォルネツィオさんが手に持った皿の上に突然砂糖が出現したから驚いたけど、収納のスキルって他人からはこんな感じに見えてたのか



「ヴォルネツィオさんも収納持ちだったんですね」


「ええ、背負い袋1つ分程度の小さな物ですけれど重宝しております。しかしナガクラ様の収納に比べれば足下にも及ばないかと。」


「お互い女神様に感謝ですね、アハハ(汗)」


「女神様に感謝を♪」




さあさあ、細かい事は気にせず作業再開!


ヴォルネツィオさんから貰った砂糖をすり鉢に入れて、既に『きなこ』となっている大豆に馴染むように混ぜる


本当なら油で揚げたパンに『きなこ』をまぶしたいけど面倒だから、ウチのこども園で作ってるコッペパンに溶かしバターを塗ってから『きなこ』をまぶしていく。


これはドーナツでやっても美味しそうだから、帰ったらニックとスナックに新作ドーナツとして提案してみよう♪



次に、砂糖と少量の水をフライパンに入れて火にかけて溶かす。その間に棒2本とリンゴを用意しておく


フライパンの砂糖が溶けてトロッとしてきたらホイッパーですくって2本の棒にかかるように、高速で左右に振りながら落とす!


そしたら糸状になった砂糖が棒に引っ掛かって固まるから、集めて出来あがり♪


本当は『綿あめ』を作りたかったんだけど、『糸あめ』も美味しいし見た目も楽しいから良しとしよう。


最後にフライパンに残った砂糖を適当にカットしたリンゴに絡めて表面をコーディングすれば、リンゴ飴の完成♪



元世界の祭りではリンゴ丸ごと1個使ったリンゴ飴が普通だったけれど、あれを完食する人なんてほぼ居ないと思うんだよな


だったらミニサイズのリンゴ飴を作って安く沢山売った方が儲かると思うんだけど、そういう事が出来ない暗黙のルールみたいな物があったのかもしれん



とにもかくにも、これなら誰でも簡単に作れるだろ


さあどうだ!



「なんと!家畜のエサの大豆からどうしてこれほどの旨味が?!砂糖が糸状になるのも初めて知りましたし、リンゴにかけた砂糖も何故かパリッとしていて、、、


ナッ、ナガクラ様!これらは本当にレシピ登録して頂けるのでしょうか?」


「勿論です。凄く簡単に作れる物ばかりで申し訳無いんですけどね。しかもパンは町の屋台で似たようなのがありましたから、それをヒントにアレンジしただけですし」


「なんですと?!という事は簡単ではない菓子なら、まだ作れるという事でしょうか?」


「材料と専用の道具があればですけど。」


「なっ、なんて事だ、、、クッキーでさえ砂糖組合の者達と幾度も話し合いアイデアを出しあって、やっと完成したというのに、、、」




うーむ


ヴォルネツィオさんが何やらぶつぶつ言いながら頭を抱えてしまった


ミリーさんも俺と仕事の話をする度に頭を抱えていたし、もしかすると俺は商業ギルドの人達からすると、疫病神とかトラブルメーカーとか思われているのだろうか?



だがしかし


俺は男に優しくする気は無い!



「それじゃあヴォルネツィオさん、その3つのレシピの登録お願いします。


どれも簡単に作れてアレンジもたくさん出来るんで頑張って下さい、それじゃあ俺はこれで」「ちょちょ、ちょっとお待ちを!!」


「えぇ~(悲)もうすぐ日暮れなんですけど」


「すっ、直ぐ終わりますので!最後に確認だけお願いします(泣)」



はぁ~、男の涙を見ても何も感じないわぁ



「それで何を確認するんですか?」


「はい、レシピは私が責任を持って登録させて頂きます。それとアレンジがたくさん出来るというのは、どういう意味なのかと思いまして」


「そのままの意味ですよ、果汁を加えるだけの簡単なアレンジなら果物の数だけ種類が増える、という事です。」


「・・・は?」



むむっ、


さっきまで頭を抱えていたヴォルネツィオさんは、次はフリーズしてしまったよ



「主様、お耳を」


「おっ、おう」


「ごにょごにょごにょごにょ、、、とすれば問題無いかと」


「なるほどね♪ヴォルネツィオさん、これ以上は池田屋商会の秘伝ですので答えられません!


どうしても知りたいという事であれば、ピスケス伯爵家の許可を取ってからお願いします。それじゃあこれで失礼しまーす。」


「えっ、あっ、はい!本日はありがとうございました。」




ふぃ~


ニィナのお陰で無事乗り切ったけど、普段からこういうアドバイスしてくれて良いんだぜ


でも助けられたのは事実だから感謝の気持ちは伝えたい



「ニィナのお陰で助かったよ、夕食は丼物の予定だからニィナの分は『かき揚げ丼』にしようと思」「主様、急ぎましょう!かき揚げ丼が待っています!」


「ちょっ、ニィナさん?かき揚げ丼は宿に着いてから作るから待っては居ないと、、、」



細かい事はどうでも良いか


今は俺の手を掴んで嬉しそうに歩くニィナの笑顔を楽しむとしよう♪






つづく。


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