第272話 商業ギルド・ケバルライ出張所 その2
『商業ギルド・ケバルライ出張所』のギルドマスター、ヴォルネツィオさんに案内されて応接室にやって来た俺とニィナ。
いつもの事だけど護衛の時のニィナは、俺の背後に影の如くピッタリ貼り付くようにして付いて来る
普通なら鬱陶しいと思う距離だろうけど、護衛の時のニィナはほどよく気配を消しているので、仕事で誰かと会って話してる時も邪魔に思った事は1度も無い
だけど、たまにニィナの存在を忘れて振り返ってしまいビックリした事は何度かある(笑)
ただなぁ、最近俺はけじめを付けると決心してからニィナの事も変に意識してしまって、背後にニィナが居ると思うと落ち着かないんだよ
あんまり近くに来られるとどうして良いか分からず困るし
だけどヴォルネツィオさんに案内された部屋では2人分のお茶とお菓子が既に用意されていて、ニィナとほどよく距離を置いてソファに座る事が出来た。
これはキャラバンシティに帰ったら1度お母さんに相談してみようかな
「さぁさぁナガクラ様、旅でお疲れでしょうしまずはお茶を飲んで喉を潤して下さい。」
「それじゃあ、いただきまーす。ズズッ」
ふむふむ
出されたお茶はいわゆるミルクティー、少し砂糖を入れ過ぎな感じはするけど充分美味しい♪
砂糖の生産地ならではの贅沢なお茶と考えれば普通は凄く喜ばれるんだろうな
「ナガクラ様、お茶のお味はいかがでしょうか?」
「美味しいですよ、旅で疲れた身体にこの甘さは染みますね」
「お気に召して頂けたようで何よりです♪砂糖が市場に出回るようになったとはいえまだまだ高級品、お茶に砂糖を入れて飲むなど生産地ならではの贅沢ですからね、よければお菓子も食べて下さい。」
お茶と共に出されたのは皿に山盛りされたクッキー・・・
俺はこういう所で出されるクッキーに良い思い出が無い
ギルマス時代のアルに、貴族が食べる高級なお菓子としてクッキーを出された事があるけど
堅焼き煎餅みたいなカッチカチのクッキーだったのは今では良い思い出だよ(笑)
ただ、目の前のクッキーは少なくとも煎餅よりは柔らかそうではある
「ちょうど小腹も空いてますし遠慮なく、いただきまーす。あーん、ボリボリ・・・」
あまぁーーーーーーーい!
なんだよこの砂糖の塊みたいなクッキーは、砂糖を直接舐めるより甘くね?
虫歯じゃ無いのに歯が痛いよぉ~(泣)
隣に座ってるニィナを見ると、見事なまでのポーカーフェイスでボリボリとクッキーを食べてるけど、俺は知っている
髪の毛に隠れた耳がピクピク動いている事をな!
あの耳の動きは何かを我慢してる時の動きなんだ、我が家の甘さ控えめのお菓子に慣れてるなら、このクッキーは辛いだろう
「クッキーのお味はいかがでしょうか?砂糖をたっぷり使った高級なお菓子として、この町の名物にしようと思い作ったのですが」
「そうですか、ならば客の立場で感想を言わせて貰いますと私には甘過ぎますね。お茶とクッキー両方甘いので相乗効果で甘さ倍増です。」
「甘過ぎる?、、、しかしながら菓子というのは甘い物ですし」
「あくまで私の個人的な好みの話ですからお気になさらず。それより話があるんですよね?」
「えっ、えぇ、、、町を見て頂けると分かると思いますが、ここ宿場町ケバルライは砂糖の生産と販売によってかつて無い程の好景気を迎えております。
今の好景気はオフューカス子爵が亡くなった事と、トラサンダー氏によって砂糖の製法が無償公開された事で、子爵領の秘匿事項だった砂糖に関する一切合切を隠す必要が無くなり
平民や領外の者にも自由に砂糖の販売が可能になったからなのです。
しかし、これらの事は他の地域でも自由に砂糖の生産、販売が出来る事を意味します。
既に砂糖の生産量が右肩上がりで増えている現状では、近いうちに砂糖の値段も下がるでしょう。そうなればケバルライの好景気も長くて1年程で終わると私は考えています。」
ぐはぁっ!
結局のところ良くも悪くも原因はほぼ俺ですやーん(泣)
色々バレる前にさっさと話を終わらそう。
「ようするに新たな名物が欲しいって話ですね?」
「ッ?!、、、はぁ、さすがミリアリア様が信頼されているだけあって、全てお見通しという訳ですね
仰る通り、名物が砂糖だけではケバルライは中途半端な発展をしてしまい、長い目で見ればいずれ衰退してしまう可能性があります。
それを阻止する為にも新たな名物が絶対に必要なのです!ケバルライに住む全ての者達を代表して、砂糖を使ったレシピの登録をして頂けるよう、伏してお頼み申しあげます。」
「そういう事なら喜んでレシピ登録させて貰いますよ♪」
「おおっ!ありがとうございます。」
やっと本題に入れたよ♪
旅の間はお母さんが居ないから食事の準備やらなんやらで俺は忙しいんだ
さくっとレシピ登録を終わらせるぜ!
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。