第268話 目指せ最初の町!

「丘を越え行こうよ~、口笛ふきつ~つ~


フフ~フフ~フ フフ~フフ♪


ララ ララ スミレ」


「わんわん♪」


「ララ ララ カスミ」


「ぴょんぴょん♪」


「ラララ 歌声あわせよ


旅は楽しい~♪」




ゲオルグ・サダルスウド侯爵と、ステファニー・フォン・アリエス辺境伯に会うために


トゥクトゥク風に改造した電動アシスト付き自転車で旅に出た俺達は、ご機嫌に歌を歌いながら移動中♪


前回の旅は小学生の遠足って感じだったけど、あれからもうすぐ1年


みんなも成長して中高生の修学旅行って感じにはなったかなと思う。



カッポ、カッポと馬の歩く音には癒されるけど、他の馬車に合わせてノロノロと移動するのは精神的に疲れる


前回の旅の時もキャラバンシティの近くは人も馬車も多くてスピードが出せなかったけど


最近はキャラバンシティにやって来る商人や、一攫千金を狙ってやって来る冒険者、観光目的の人達が凄く増えたせいで街に入る為の列が凄くて、街道はさながら元世界の行楽シーズンの渋滞みたいになっている。


更には列にならんでる人達を狙って街道沿いには屋台が建ち並び、これはもうちょっとした祭りだな♪


街の皆さんにはこういうチャンスは逃さずドンドン稼いで貰い、生活の質を向上させて栄養状態の改善をしてくれないと困る!


俺はもう流行り病(熱中症)の対応をするのは大変過ぎて嫌なんだよ(泣)


金を渡してウチの商会以外の何処かに丸投げするっていう手もあるけど、報酬を前払いしたら着服するし、後払いにしたら仕事をしないとか普通だもんなぁ


キャラバンシティに帰ったらミリーさんと相談だな。



さてさて、相変わらずノロノロスピードでなかなか進まんな。運転してるケイトも凄く暇そうだ


街に来る人が多いなら街から出る人も多くなるのは当然の成り行き、だからこの進みの遅さも予定通りだし、今日中にはアリエス辺境伯領には着かない。



本日の目的地はアリエス辺境伯領の手前にある『宿場町ケバルライ』だ。


以前はオフューカス子爵領だったけど、現在はサダルスウド侯爵領になっており、騎士爵だったか男爵だったかが代官をして治めているはず。


サウスビーチからなかなか離れられないゲオルグ様の代わりに、ケバルライの町の様子を見て来るのも今回の旅の目的のひとつになる。



「ねぇおにいちゃん」


「どうしたのメリル、お腹空いた?」


「少し、、、ってそうじゃないよ!」


「ははは、メリル今の『ツッコミ』はなかなか良かったよ♪」


「もう!そんな事よりケバルライに行くなら街道を行くより山を越えた方が早いよね?」


「山を迂回するより山を越える方が距離は圧倒的に短いけど、山道って狭いし整備もされて無いと思うからこのまま街道を行く方が良いと思うけど」


「それなら山頂からアレで行けない?」



アレって何?


メリルが何故かジェスチャーでアレを教えようとしてくれているけれど、、、なるほどアレの事か(笑)



「勿論アレは山頂から問題無く行けるけどケイトがなぁ、ちょっと可哀相じゃない?」


「旅は移動時間を短縮した方が安全なんでしょ?だったら仕方ない犠牲だと思うけど」


「主様、私もお嬢様の意見に賛成です。」


「となると、カスミとスミレはどっちが、、、って聞くまでも無いか、賛成多数により決定だな」


「ねぇダンナァ、みんなで何話してるの~?」


「えっと、、、ルートの確認だよ(汗)ケイト、そろそろ人も少なくなって来たからスピード上げて良いぞ」


「あいよ~」


「あそこの山の山頂でお昼ご飯にしよう、お母さんがお弁当作ってくれたんだ♪」


「お弁当?!よっしゃー、みんな掴まっててね、ウォーーーーーー!!」


『シャーーーーーーーーー!!』



「ひぃっ(汗)ケイト速い!スピードが速すぎるからーー!!」


「あははは、お嬢大丈夫だよぉ~安全第一で行くから~♪」


「「「「「わぁーーーー(泣)」」」」」





ぜぇーはぁー、ぜぇーはぁー(汗)


自転車の荷台に乗っていただけなのに、どうしてこんなに息切れしているのだろうか?


「みんな大丈夫か?」


「「「なんとか」」」



どうやら全員無事だな、何故かスミレだけは楽しかったみたいで俺達をみてキョトンとした表情をしている


ケイトの超パワーにより山道も恐ろしいほどのスピードで走り、あっという間に山頂に到着したけれど、片側が崖の所も全速力で走るんだもの生きた心地がしなかったぜ


これがAランク冒険者の実力というやつか、、、



「ダンナ大丈夫?」


「おっ、おぅ、、、すまんがテーブルと椅子の準備は任せた、少し休憩したらお弁当食べよう」


「は~い♪」



ふぅ~


山頂から見える赤や黄色に色付いた木々を眺めてぼぅーっとしていたら、やっと落ち着いて来た


俺は本日の目的地であるケバルライの町を双眼鏡で確認しているニィナに声をかける



「ニィナそっちはどう?」


「はっ!ケバルライの町を確認しました、ここからなら問題無く行けます!」


「了解」



「ダンナァ、そろそろお弁当食べようよぉ~」


「そうだな」



お母さんから渡されたお弁当は大きい重箱が3つと鍋に入った味噌汁、それらを収納から取り出してテーブルに並べていく


出来立てを直ぐに収納に入れたからまだ熱々だ♪



「よし、俺もお弁当の中身は知らないからいっせいにフタ開けようぜ、、、せーの、パカッ」


「「「「「「おおっ!!」」」」」」



やったぁー♪


お弁当はサウスエビを使った天むすと芋の天ぷらと、トウモロコシの天ぷらまであるよ


好きなんだよトウモロコシの天ぷら♪



「それじゃあ、いただきます」


「「「「「いただきます♪」」」」」



良いねぇ


綺麗な景色に気の合う仲間と旨い飯


それさえあればすべて世はこともなしってな♪



だがしかし


今日はここでほっこりしてる訳には行かないんだ!


テーブル、椅子、自転車等々の荷物は全部俺の収納に入れてと、全員に自動回復の魔法をかける


この魔法を使うのも浮島に行った以来か。



「みんな準備は良いか?」


「「「「「は~い♪」」」」」



「ケイト殿、背中に落ち葉が付いています、取るのでじっとしていて下さい」


「うん、ありがとうニィナ」


「主様、今です!」


「よし!」


「え?」



ケイトとニィナに俺の収納に入っているハーネスを身体に直接装着


続いてパラシュートも装着っと



「行っけぇー、全力風魔法!」


『ブワッ』


「ちょっ、、ダンナァ~そりゃないよぉ~(泣)」


「許せケイト、山はこれで降りるのが1番なんだ」


「ケイトォ~じっとしてないと危ないからねぇー!」


「お嬢のヰ*ΣБヰ∬Мーーー!」



ケイトが何か言ってたけど、まあ聞こえなかった事にしといてやろう(笑)



「俺達も行きますか」


「「「はーい」」」



俺、メリル、カスミ、スミレにハーネス装着、パラシュートも付けてと


風魔法発動!


『ブワッ』



季節は秋


天気は快晴


俺達の旅はまだ始まったばかり。






つづく。

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