第266話 おでんとお酒と世間話と その2
「んぐんぐんぐ、ぷはぁ~、、いっひっひっひっ♪このビールってのは最高だね、然るべき所に持って行ったら言い値で幾らでも売れるだろうに」
「ビールで暴利を貪る気は無いよ、そんな事をしたらドワーフを敵にまわすという恐ろしい事態になるからな!
酒場限定の土産として用意した菓子の詰め合わせで儲けるから良いんだ。客が帰る時にはちゃんと土産の菓子を買うように薦めてくれよ」
「心配しなくても、接待役の女が甘えた声でちょいとお願いすれば買わない奴なんて居ないよ。だけど、酒は安く提供してるのに菓子は1箱銀貨2枚で売るのは暴利とは言わないのかい?」
「言わないよ、土産用の菓子は特別に砂糖とバターをたっぷり使ったクッキーとパウンドケーキの詰め合わせだから高級品なんだ、銀貨2枚でも安いくらいだよ
それに、たとえ酔って家に帰っても奥さんや子供に土産の菓子を渡せば、誉められはしても怒られる事は無いだろ」
「くっくっくっ、そこまで考えてたとはね、どおりで昼間に菓子の詰め合わせを買いに来る奴が多いはずだよ
おおかた奥さん連中が珍しい菓子を手に入れたからって、茶会で出して自慢するんだろうね(笑)」
「へぇ~、茶会は想定外だったな。奥さんの機嫌が良ければまた店に来やすくなるだろうってのが狙いだったから」
「細かい事は良いんだよ、常連客が増えて菓子も売れればお互いに儲かるんだからね」
「違いねぇ、ふふっ」
「「ふはははははは♪」」
ベスと話をしてると悪代官と悪徳商人の悪企み感満載だけど
俺達にやましい事などありはしない、叩いてもホコリなんて全く出ない純度100パーセントの真っ当な商売の話をしているだけだ
チート能力は使いまくってるけどな(笑)
「酒場の話が出たついでだ、あんたレイチェル覚えてるかい?」
「レイチェルさんと言えば健康診断の時に号泣してたよな、性格的に娼婦に向いてないって言ってた」
「そのレイチェルなんだけど、酒場の客からの受けが良くてね、しばらく酒場だけで働かせようと思ってるんだけど良いかい?」
「人事に関してはそっちで自由にしてくれたら良いんだけど、レイチェルさんって接客に向いてるようには見えなかったけど大丈夫なのか?」
「普通の商売じゃ駄目だったろうね、レイチェルはお世辞は言わないし思った事を素直にそのまんま言っちゃう子だから。
今やってる酒場は高貴な身分を隠してお忍びで来る客も多いから、レイチェルが接待役の時は客に失礼な事を言うんじゃないかってそりゃあヒヤヒヤしたもんさ!
でも、高貴な身分の奴にとってお世辞抜きの話し方は新鮮だったらしくて、わざわざレイチェルを指名する奴もいるくらいだよ、あたしにゃ何が良いのかさっぱりだけどね」
うーむ
俺にもよく分からんけど、元世界でも社長とか身分の高い人の中には、怒られたいとか責められたい願望のある人が居るとかって聞いた事があるけどそんな感じだろうか?
他人に迷惑をかけないなら、どんな性癖を持っていようとどうぞ御自由にだ。
「なんにしても上手く行ってるなら良いじゃないか」
「問題が起きたらあんたに泣きつくだけだけどね」
「出来れば問題は起こさない方向でお願いします。」
「せっかくの稼げる仕事を失いたくはないから努力はしてやるよ♪それと、聞こうか迷ってたんだけど健康診断の時に薬渡してたろ?」
「渡したけど、仕入れ先は秘密だから聞かないでくれよ」
「そんな野暮な事はしないよ、良く効く薬だって皆喜んでたから気になってね」
「ベスは治癒士ギルドに所属してたんだから気になるのは当然か。俺は他の国の産まれでさ、故郷ではそういう研究が進んでたんだよ」
「ふ~ん、それなら良いけど」
むむっ?!
何故かベスが凄くニヤニヤして俺を見ている、やっぱ薬の研究をしてた専門家には薬と称したサプリだったとはいえ、見せたのはよろしくなかったか
ここは口止めの為の対価が必要だな
「もう酒が無いじゃないかベス!まだ飲むだろ、ビールか?それとも温かい出汁割り酒もお薦めだぞ」
「ん?なんだい急に愛想が良くなって気持ち悪いねぇ、、、とりあえずお勧めの出汁割り酒を貰おうか♪」
『トクトクトクトク』
「はい、どうぞ」
「んぐんぐ、、くぅ~、旨い酒を飲むと気持ちよく酔いがまわって独り言を言いたい気分だね」
「は?」
「ゴブリンがミカンをぶつけられたような顔をしてるんじゃあないよ、あんたはそこで黙ってババアの独り言をしっかり聞いてな!」
「はっ、はい!」
「良い返事だ♪気付いてるかもしれないけど、神殿は既にあんたと商会に目を付けてるだろうね」
「ッ?!」
「ふふっ、心配しなさんな、神殿は強大な組織だけど、ピスケス伯爵夫人と仲の良いあんたにちょっかい出して、王国十二家を敵にするほど馬鹿じゃないから
あんたが神殿とどう付き合うかは自由だけど、味方になってくれる十二家を増やしつつ神殿に献金でもして機嫌をとっとくのが良いだろうね
神殿の闇はあんたが考えるよりずっと深いんだよ、だから下手に知らない方が良い
『今はまだ』ね♪」
マジか~、あかん方のテンプレがほぼ予想してた通りに近付いて来とるがな(泣)
未だに神殿がどんな組織か分からんけど馬鹿じゃないってのは良い情報だな、何かあっても強硬手段に出る前に交渉の席くらいは設けてくれるだろう
神殿に深入りするつもりは無いけど基礎知識くらいは欲しい、運良く詳しそうなのが目の前に居るんだ、このチャンス逃がしてなるものか!
「さあさあ、次は何飲む?出汁で割らずに酒だけを温めたのも旨いぞ、酒は百薬の長って言うからな遠慮せず飲んでくれよ」
「勿論遠慮なんてしないけど、、、ふふっ、既にあんたとあたしは一蓮托生、お互いに居なくなると困るだろ?」
「めっちゃ困る!」
「だったらこれから時間をかけて色々教えてやるから末永くよろしく頼むよ、会長さん♪」
ふぃ~(汗)
なんだかベスに上手く乗せられた感じだけど、俺もそろそろ世界に目を向けるべき時なのかもしれない
とは言え
神殿がどういう風に動くか分かるまでは様子見だから、それまでに味方を増やしておくか
王国十二家1人目の仲間を作りに
いざ
アリエス辺境伯領へ!
つづく。
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