第265話 おでんとお酒と世間話と
現在おでんの仕込み中。
今日はキャラバンシティの南門付近に置いてある、門兵達の物置き小屋に隠れるようにテントを設営して、おでん屋の開店準備の最中だ。
俺が趣味で不定期営業しているおでん屋で、たいていは護衛兼看板娘のニィナと2人でやっている。
もうひとつウチの従業員達がやってるおでん屋があるんだけど、そっちは女性客限定にしているからか、俺のおでん屋にはほぼおっさんの客しか来ない
そういえば『お食事処リリー』も女性客限定だったし『甘味屋リリー』は、、、どうだったっけ?
どちらにしても、池田屋商会がやってる店はいつの間にやら女性客限定が当たり前になってしまっている
俺のおでん屋は男女問わず大歓迎なんだけどなぁ(悲)
そんな俺のおでん屋にちょっとした変化があった。今まで客といえばおっさんばかりだったけど、最近は女性も客として来るようになったんだ♪
まあ俺が支援してる娼婦の皆さんなんだけどな(笑)
相変わらず俺に気に入られれば池田屋商会で雇って貰えると思っておでん屋に来る人も居るんだけど
最近は俺がたまに作るお菓子が目当てだったりする。
試作品だから色んな人から味の感想が聞きたくて、おでん屋のカウンターに『ご自由にお食べください(無料)』って書いて試作のお菓子を置いてたら
それを目当てに娼婦の皆さんが客として来るようになった。
娼婦の皆さんには色々と思うところはあるけれど、嬉しそうにお菓子を食べている皆さんを見たら
俺に出来るのは美味しいお菓子と料理を作る事くらいなんだと改めて実感したよ
だから俺は今日も頑張っておでん屋の準備をする。
味の染み込み具合を確認する為にニィナと一緒におでんをつまみ食い、、、じゃなくて味見をしていると
おでん屋の入り口に誰かが立っている気配がしたから、口に入れた大根をはふはふしつつ視線を移すと入り口に居た人物とガッツリ目が合った
だがしかし今は大根の味見で忙しいんだ!
「ちょいと邪魔するよ」
「邪魔するんやったら帰ってや」
「邪魔されたくないならこんな所でおでん屋なんてやるんじゃないよ、邪魔者扱いしたお詫びの品は酒で良いよ♪」
う~む、関西人なら知ってる人も多い定番の『ネタ』だったんだが、おでん屋にやって来たベスには通用しないか(笑)
「まぁ酒ぐらいは良いけど『シュポッ、トクトクトクトク』ほら、お詫びのビール」
「へへっ、幻と言われてる酒が無料で飲めるのは嬉しいねぇ♪」
「ベスは無料酒飲みに来たのか?」
「失礼な事を言うんじゃないよ酒代くらい持ってるさ、今日はあんたが提案してくれた酒場の報告に来たんだよ」
ベスの言ってる酒場ってのは娼婦の皆さんを稼がせる為に俺が提案した、綺麗なお姉さんと楽しくお酒が飲める店、いわゆるキャバクラの事だ
スキルの「店」で2リットル500円程度で売ってる激安のワインと焼酎を使ったカクテルを高級酒として、グラス1杯銅貨7枚で提供して儲けの3割が俺の取り分だ
俺からしたら安いだけが取り柄の激安酒も、この国の市場に出せば幻の酒として高値で取引される高級酒になるんだから笑いが止まらんぜ(笑)
でも、そういう事情はベスには内緒にしていて、俺が赤字覚悟で頑張ってると思っているから、文句を言いながらも色々な事をこまめに報告に来てくれる
ベスって口は悪いけど良い人なんだよな。
「ベスが出してくれた酒場の収支報告書を見たけど、充分儲けも出てるしわざわざ報告するような事は無さそうだけど」
「金の流れを書いただけの紙を見て全てを分かった気になるんじゃないよ!これだから若い奴は、はぁ~、こんなのが大商会の会長だって言うんだから従業員は苦労してるんだろうね」
急にめっちゃ怒られてるんですけどー(汗)
「えっと、娼婦の皆さんはどうしてる?」
「ん?あぁ、予想以上に酒場の売り上げが良いから皆喜んでるよ、あと1日1個のお菓子が効いてるね(笑)
酒場の方はあんたから仕入れてる酒目当ての客が多いのもあるけど、あんたの言った通り仕切りを作って個室っぽくしたのが良かったよ。
世間体を気にして街の酒場に行けないような高貴な身分の奴が何人かお忍びで来てね、接待役の女に愚痴を聞いて貰えるのが嬉しいのか、鼻の下を伸ばして情けない顔をしてるけど
深酒はしないし礼儀正しいし金払いも良いから最高だよ♪」
「客にはそれなりに酒を飲ませて儲けを増やして欲しいんだけど、まあ良いか」
「そんな事より、さっから美味しそうな匂いがしてるんだけど、そこの鍋の中身はなんだい?」
「おでんっていう煮込み料理だな」
「へぇ~、それが噂のおでんかい、最近ウチの子達の間じゃおでんの話で持ちきりだよ。お詫びの品はまだまだ受付中なんだけどねぇ」
「はいはい、とりあえず大根と牛スジで良いか?」
「良いよ、順番に全種類食べるからね♪まだまだ話はあるんだけど、せっかくだから一緒に酒を飲みながらどうだい?」
「そうだな、ニィナもこっちに来て一緒に飲もうぜ」
「はい♪」
「それじゃあ」
「「「かんぱーい」」」
つづく。
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