第264話 とある秋の日のアストレア様とおっさんとなんやかんや その3

「アストレア様、結婚について私は何も聞いていません、確認の為にもペトルーシュカ様と会いたいので、お手数をおかけしますが連絡をとって頂けますでしょうか?」


「それなら大丈夫よ、アレサンドロ公爵の手紙には結婚の準備の為に、年内にはペトルーシュカ様がこちらに来られるそうだから」


「分かりました、ペトルーシュカ様と話をするまで結婚については何も決まってません、したがって結婚しない可能性も充分ありますので、アストレア様もそのつもりでお願いします。」


「それじゃあ、婚約祝いを用意して待ってるわね♪」



おーい、アストレア様!それって結局は結婚するって事ですやん(泣)



「はぁ、とりあえず結婚の話はそれで良いです。


秋は色々とやる事が多いんですよ、まずはゲオルグ様に会いにサウスビーチに行こうと思っているので、アストレア様の許可を頂きたいのです。」


「う~ん、しばらくの間シンさんに会えなくなるのは嫌だけど、ゲオルグ様に会いに行くのなら嫌とは言えないわね。


それにステフちゃんからもシンさんに会いに来て欲しいってお手紙貰ってるのよ」



「ステフちゃん?」


「ステフちゃんの事はシンさんにはまだ話した事無かったかしら?


ステファニー・フォン・アリエス辺境伯


子供の頃は私の妹とよく一緒に遊んでいたから、3人でお出掛けする事も多かったの♪」


「アリエス辺境伯は王国十二家の中立派でしたね、会いに行くのは構いませんけど同じく中立派のライブラ公爵とタウラス子爵は宜しいのですか?」


「シンさんさえ良ければいつでも会いに行ってくれて良いのよ♪


でも、サウスビーチに行くのにライブラ公爵領、タウラス子爵領は方向が違うから無理に行かなくて良いわ、秋の社交シーズンで忙しいしね


そうと決まれば早速ステフちゃんにお手紙書かなくっちゃ♪」


「王国十二家同士でもやり取りは手紙なんですね、通信の魔道具を使ってると思っていたので少し意外でした」


「通信の魔道具は必要な魔力が多くて連続で2~3回しか使えないし、魔力の補充も大変なのよ、だから緊急時と年1回の動作確認以外は使わないわね


でもシンさんなら魔力の補充も余裕かしら?」


「一般的な魔法使いより魔力は多いらしいので、緊急時には遠慮なく頼って頂いて構いません。あくまで緊急時だけですが」


「それで充分よ」


「では明後日にはさっそくアリエス辺境伯領に向けて出発します。アリエス辺境伯領とサウスビーチでそれぞれ3~4日滞在するとして


サウスビーチからは1日で帰って来られるので往復で10日くらいの予定ですね」


「普通なら行くだけで10日はかかるんだけどね(笑)」



「帰って来たら秋のお花見大会を開催しますので、ピスケス領で米と餅米がもし余ってるなら送って頂きたいです。」


「あら♪また何か新しいお菓子でも作るの?」


「いえ、今回はおはぎと団子を作るだけですけど、サウスビーチで何か良い食材が手に入れば新しい料理に挑戦するかもですが」


「どちらにしても米と餅米はたくさん送るわね、保管用の倉庫もたくさん用意しておいてちょうだい」


「倉庫は酒用の地下室に空きがあるんで大丈夫ですけど、どんだけ送って来る気なんですか?!もしかして米って不人気ですか?」


「人気以前にまだ販売してないのよ、誰かに売るにしても調理法の説明をしなきゃいけないんだけど


上手く煮れなくて、、、確か米は煮るじゃなくて『炊く』だったかしらね、上手く炊ける時もあるんだけど難しいのよねぇ」


「そういえば以前もレシピを見ただけでは上手く料理を作れないって言ってましたもんね


米については薪ではなく、火の大きさを一定に保てる魔道具等を使えば比較的簡単に炊けると思いますけど、これは本格的に料理の講習をするべきですね」


「そうしたいんだけど貴族に仕える料理人って無駄にプライドが高くて、素直に教えを請うとか出来そうになくて困ってるのよ」


「なるほど、、、それでしたら料理勝負でもしてプライドをへし折りましょう。


そしたら少しは素直になるんじゃないですか?」


「ふふっ、それ良いわね♪シンさんが留守にしている間に段取りを整えておくわ」



「分かりました。えぇーと、秋の予定はこんなところだったかな、、、あっ!


忘れるとこでしたよ、秋と言えばまた浮島に行く予定なのでその時はトリュフをたくさん採って来ますから、楽しみにしてて下さいね♪」


「浮島ってだいたい10年に1度しか来ないはずなんだけど」


「神様の気まぐれか何かですかね、あははは」


「色々と気になるけれど神の御意思なら疑問を持つのは止めておきましょ。それより私も浮島に行けないかしら?」



アハハ(汗)


相変わらずアストレア様は空気を読んでくれて助かる、恩返しのつもりで浮島に連れて行くのは構わないんだけど



「行けなくもないですけど1度に行けるのが4人までなんですよ、空に行く道具を使えるのが私とニィナなので残りは2人


アストレア様ともう1人しか行けませんけどそれでも行きます?」


「勿論よ♪もう1人はシンシアで良いわよ」


「かしこまりました。」



うーむ、突然浮島に行く事になったシンシアさんは凄く驚いてるけど、危険は無いから安心して欲しい



「さてと、すっかり話し込んじゃってもうすぐお昼ね、そろそろ失礼しようかしら」


「アストレア様さえ良ければもう少しゆっくりして行って欲しいんですけど」


「あらあら♪嬉しい提案だけど何か訳アリって顔をしているわよ」


「バレましたか(笑)そこの窓から裏庭を見て下さい」


「裏庭に何があるのかしら、、、まあ?!あの子達ったら、シンさんごめんなさいね」


「お気になさらず、という事でお昼ご飯もご一緒にいかがですか?」


「喜んで♪」



今日は秋の爽やかな陽気で気持ち良いから、裏庭で朝食を食べ終えたアストレア様の護衛やメイドさん達が寝ちゃってたんだよ


お疲れのところを起こすのも可哀想だから、おやつの時間まではこのまま寝かせといてあげて


それまで俺はアストレア様と、とりとめのない世間話でもするか


たまにはこんな日も楽しいな♪






つづく。

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